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第2話:前世の旅【後編】

           ***

匠海、元気にしてるかい?私がいなくなって途方にくれたりしてないでしょうね。

会社でしっかり働いてる?私がいなくなってしまったから愚痴を聞いてやれなくてごめんね。

私の財産は本当は1億もなかったのよ。けどね匠海のお母さんとお父さんが残してくれたものが大きかったのよ。

当時の匠海には難しかったでしょうね。なんせ全財産3億を匠海の物になろうとしていたの。それを私が匠海の育児をする約束の上に受け取ったの。

だから私は匠海の両親が残したものをどうしてもあなたが立派な大人になるまで残したかったの。

だから学費は全部私の財産で払うつもりだったのに、匠海ってば高校卒業後、すぐに大手企業に就職しちゃったもの。びっくりよ。でも私も匠海の両親とは比べ物にならないほどこれっぽちのお金を残すことができてよかったわ。

匠海の事だからお金より私とかいってそうね。でもね私は遅かれ早かれ、来るべき時が来たのよ。仕方がない。私だってできれば匠海の近くにずっといたかったわ。

匠海の成長を見ていたかった。けれど私はすでに幸せだったのよ。匠海と過ごす時間が幸せだったのよ。匠海が残してくれた思い出は、本当に幸せだった。

だけど、そんな匠海が悲しんでいたら私も悲しいわ。

だから私からアドバイス。

『途方に暮れるなら旅に出なさい!』

日本でも世界でも旅しなさい。それで財産を使っても匠海の両親は起こったりしないよ。むしろ笑って見守ってくれるわ。

だから幸せになって生きなさい。それが何よりも私《《たち》》が望んでいる事よ。

                        恵

             ***


それが封筒の中に入っていた紙に書かれた物だった。

翌日、俺は退職届を提出した。


上司には何度も止められた。


「途方に暮れるなら旅に出なさい!それがばあちゃんからのアドバイスなんで」


と、言ったら上司は笑って

「いつでも戻って来いよ」


上司はそう言って送り出してくれた。


そして俺は北海道から4年の月日が経ち、沖縄県までの全47都道府県を旅したのだ。


そして今に至る。久しぶりの実家の匂いは懐かしく、今でもばあちゃんの幻覚が現れる。


俺は数日後、世界一周に挑戦しようと思っている。いや、世界一周するのだ。他の文化を見に行くために、自分の世界を広げるために、俺は世界を一周するのだ。


そんな報告をばあちゃんにする。合わせた手を直す。


何年も掃除をしていないせいでホコリくさい。


ばあちゃんの供え物は腐り、花は枯れはてている。日はそこまで急いでないので、いつ帰ってくるか分からない家の掃除をする事にした。



黄色い花と赤い花が入った袋、ばあちゃんが大好きな豆大福を持ってスーパーを出た午後。


今でもばあちゃんが喜んでいる絵が浮かぶ。


        ************


2028年 ニューヨーク行きの飛行機が墜落。運転手2名を含む乗員126人が死亡。15人が重症。そのうち2人が意識を取り戻せず。


そう、俺はこの後、飛行機の墜落事故によって死んだ。

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