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4.学校に通っていれば、全てがわかるわけではない

 昨日とは打って変わり、青空が広がる5月2週目の火曜日。早くも夏さながらの暑さに襲われながら、俺は1人で校門をくぐる。

 ヒロはようやく今日から朝練が開始したらしく、朝から俺の元に1通のLINEが飛んできていた。ヒロがいない以上、榛名がわざわざ俺を待つわけもなく、さっさとクラスの友人たちで集まって学校に向かったようだ。

 というわけで、高校に入って初めて最初から最後まで1人で登校したわけなのだが、とくにこれといって特筆すべきことはなかった。1人で黙々と歩く分、いつもより教室に到着するのが早かったくらいか。


 汗で少しインナーが肌にまとわりついているのを気持ち悪く感じながら1-Aに向かうと、そこには相変わらずの喧騒が待ち受けていた。

 その中でも目立っているのは、先日同様、教室の入り口で集団になっているトップカースト軍団。普段は男女でバラバラなのに今日は混合グループとなっているため、一際騒がしい集団になっている。朝っぱらから元気なことで。

 さっさと横を通り過ぎてしまえば、俺の席は入り口からそれなりに遠いし少しは静かになる。意を決して急ぎ足で入室した俺は、うまく左のほうで盛り上がっている集団を躱すことに成功した。これでまっすぐに俺の席へと向かえば、作戦成功だ。

 これで勝ちは確定。あとはこの暑さから逃れるために、家で沸かして持ってきた麦茶を喉元に流し込めば、万事OK。半ばフライング気味にカバンの中に手を突っ込もうとしていたその時だった。

 「あ、おはよう、栗生君!」

 華麗に回避したはずの左の集団から俺にフレンドリーな挨拶をする同級生の声がしたのだ。普通の学生ならその声の主を瞬時に特定し、笑顔で挨拶を返すくらいの反応を見せるのだろうが、あいにくと俺にはそんな技能は備わっていない。なのでまずは、全身を使って声の主を探し、そこからどんな反応を返すかまでを脳を介して考えないといけない。

 ということで早速、声がした方向へと振り返る。真っ先に飛び込んでくるのは、教室の外からすでに確認が取れていた男女混合グループ。男4人女6人の計10人で構成された集団が、言葉通り十人十色の反応でこちらを見ていた。

 そしてその中に1人、見慣れた顔の女子が太陽のように明るい笑顔を向けてきているのを発見したところで、声の主探しは終わりを迎えた。

 さて、素直に俺の今の心情に従うのならガン無視を決め込んでやるところなんだが、ここは言わば今のあいつのホームスタジアム。下手な対応をすると、それだけで全クラスメイトを敵にまわすことになりかねない。

 「・・・おう。」

 脳内での厳正な会議の結果、俺は片手だけあげて一言返すという選択をした。

 これがただのクラスメイトからのものだったら、もう少し愛想よくしようかとも考えたのだが、あいつが相手ではこれが今できる最大限の対応だった。

 俺はそのまま今度こそ自分の席に向かって歩き出す。

 「美桜って栗生君とも話すんだー?」

 「あいつって何考えてるのか俺さっぱりわかんねーわ。」

 「でもさすがクラス委員だよねー。」

 たった一度俺に挨拶しただけで、周りからここまでの賛辞を受けているのは、昨日俺に狡猾なやり口で無理やり協力関係を結ばせてきた女子生徒、白瀬美桜。わざとらしく『えーそんな大したことじゃないよー』とか、『うーん、話してみると普通の子だよ?』とか言って場を盛り上げているのを聞きながら、俺は当初の予定通り席に着いて自家製の麦茶を堪能する。妙な絡まれ方をして少しイライラしていた心にはいい薬だ。

 しかし、そんな俺の幸せな一服の時間は、またもやこの女の一言で崩壊する。

 「昨日なんか、わざわざ休んだ分のプリントを家まで届けにきてくれたんだよ?」

 危うく口に含んだお茶をヒロの席に向かって思いっきり吹き出すところだった。

あいつはなんだ、バカなのか?それとも俺を困らせて楽しむ、極悪人の裏側でも持っているのか?

 「え、美桜の家まで来たってこと!?」

 「あいつ、さらっとお前のお見舞いに来たってことかよ!?」

 「えー、それってどうなん!?」

 そんな発言を聞かされた側はもちろんこういう反応になる。気づいていないふりをしてカバンから今日の分の教科書を漁っているが、白瀬の集団から何人もの視線を向けられているのをヒシヒシと感じる。そのざわめきは、白瀬軍団の人間に留まらず、教室内に形成されていたいくつかの小集団にも広がりを見せ、いつの間にか登校していたクラスメイトほぼ全員の視線が俺に集められていた。隅で1人読書をしている、特徴的な眼鏡をかけている女子を除いて。

 「あ、もちろん先生に言われたからだよ!?私たち、家近いから!」

 あれが果たして演技なのかは知らないが、あいつはやけに焦った様子で大袈裟な身振りを使って同級生からの意味深な視線を躱そうとしている。好奇の視線こそ向けられるものの、俺に話しかけてこようとする人間はおらず、みんな白瀬の方に注目を向けている。

 我関せずの姿勢を貫きほとぼりが冷めるのを待っていると、いつの間にか小集団を吸収して大集団となっていた白瀬グループは、俺のことなんてすっかり忘れて、小中時代の自分たちの話題について盛り上がり始めた。

やがて予鈴が鳴ったところで大集団は解散し、各自の席へと戻っていった。

 幸い、ヒロはチャイムギリギリに教室に入ってきたため、からかわれることはなかったが、如何せん白瀬は俺の隣の席だ。白瀬がさっきの明るい調子で俺に『あっはは、ごめんごめん!』と謝ってくるのを見られてしまった。

 だから俺は、謝ってきた白瀬に対して、『何の話だ?』という一言を、殺気をこれでもかと込めた視線と共に返してやった。


            *     *     *

 

 あれからは白瀬からの絡みがなかったおかげで、いたって普通の一日だった。中間も来週に迫っている影響で授業はいつも以上に真面目だし、まとめプリントなんて銘打たれた宿題を大量に出された。これではどのみち白瀬だって凌太先輩に構っている暇なんて全くないはずだ。

 「おー、帰ったか、海斗!」

 「おかえり!海斗君!今日はちゃんと帰ってきたね!

 肩にカバン、両手にパンパンに詰まったエコバッグを持ってリビングの扉を開けると、兄と妹が仲良く隣に座って机で勉強をしていた。この絵だけを見ているとそれなりに心休まるが、これからこの疲れた体に鞭打って、この何も手伝いをしてくれない2人に晩飯を作らないといけないのかと思うと気が滅入る。こんな愚痴を言うのも今更って感じではあるが。

 「昨日のことは大目に見てくれっつーの。俺だって不本意だったんだ。」

 「でも結果的に見ると、S級美少女の家に上がり込んでたんでしょ?そんなラブコメ主人公的なイベントはなかなかないよ、海斗君!」

 「どんなイベントだそれは。いいことなんか全く・・・、いやほんの少ししかなかったぞ。」

 てかそのラブコメ主人公っていうのは何なんだ。昨日も聞いたぞそのフレーズ。

 「今日はちゃんと約束どおりハンバーグだからな、海斗!」

 「わぁーってるよ。ほれ、ちゃんと挽き肉買ってきてやったぞ。」

 必死の思いでバッグをキッチンに置き、中から合挽き肉とパン粉をこれ見よがしに見せつける。どうやらそれを見て満足したようで、机に並ぶ兄妹は再び机に向き直った。 


 のもわずか30分だけだった。

必死に俺がタネを捏ねていると、いつの間にか2人はコントローラーを握ってテレビ画面に釘付けになっていた。

 「おい!あんなんで死ぬなんかおかしいだろ!?」

 「残念でしたー。このキャラの後ろ投げはチートだから!」

 「はあ!?もっかいだ!夕飯までに絶対一回は勝つからな!」

 どう考えても勉強の話じゃない会話を聞きながら、俺は3つの大きな肉の塊をフライパンで蒸し焼きの要領で調理していく。今日はソースを作るのが面倒だったから、買ってきた青じそを切り刻んで、あとは適当に大根おろしを乗せてポン酢をかけて終わりにしよう。

 「おい、机の上を片付けろ。ぼちぼち出来上がる。」

 「っしゃあ!先に残り1ストにしたの初めてじゃね!?」

 「油断してると、足元掬われるよ?」

 「あー!だからやめろってそのコンボ!あ、あ、あーーーっ!!!」

 ダメだ、まったく聞いちゃいねえ。とりあえず激戦を繰り広げているみたいだし、先にご飯と味噌汁でもよそうか。

 「おら、おら!決まれ、必殺・・・」

 「いやだからその技は発生が遅いって言ってるじゃん、流渡君。」

 「ああああああああああ、クッソおおおおおおおおお!!!!!」

 うん、どうやら決着がついたようだな。

 「ちくしょー、もっかい!もっかいだ!!!」

 「えっへへー、いいよー?」

 「よくねえっつーの。ご飯だって言ってんだろうが。」

 さらっともう一戦始めようとしてんじゃねえよ。中学1年生にボコられてそんなウルウルした目をするな高校3年生。

 「おい、頼むよ海斗ー!このままじゃせっかくのハンバーグも敗北の味しかしねえんだよ!」

 「じゃあ冷めてカッチカチになったやつを1人で食ってろ。」

 「な!?それはそれでまずいな。悪い藍波、勝負は食後にお預けだ!」

 「仕方ないなあ、流渡君がそう言うなら。」

 なんでこの人は中学1年生にこんな上からの態度を取られてるんだろうか。これじゃあどっちが兄でどっちが妹かわかったもんじゃない。


*    *     *


 「あー、食った食ったー!やっぱハンバーグこそが正義だな!」

 「土曜に焼肉食いに行ってたやつがなんか言ってんぞ。」

 「焼肉とお前の手料理を比較してお前が勝ったんだぞ?もっと誇りに思えよ!」

 「さいですか。そいつはようござんした。」

 兄は思った以上に堪能してくれたようで、俺の肩をバシバシと叩いている。喜んでくれるのは悪い気がしないが、それを物理的に伝えてくるのはやめてもらいたい。

 「いやー、でも海斗君また腕を上げたんじゃない?今日のやつ、すごくジューシーだったよ!」

 「そりゃ3年間ほぼ毎日何かしら作ってたら嫌でも上達する。」

 妹も出来に満足してくれたようで何より。これでなんとか昨日の失態は取り返したと思っていいだろう。帰りの電車内で美味しいハンバーグを作る方法を熱心に調べた甲斐があったってもんだ。

 しかし、まあ、なんだ。料理を作るのは今でもすごく面倒だと思うが、こうして2人の幸せそうな顔が見れると思うと、決して悪くないって思えるのが不思議だな。

 「んじゃ、続きだ藍波!1勝もぎ取るまで相手してもらうからな!」

 「ふっふっふ、その挑戦、受けてあげようじゃない。」

 食べ終わった食器をまとめて流しに置いていったかと思えば、またこの2人はソファーを占領してゲーム機に飛びついていきやがった。

 「海斗君、このままテレビに接続しててもいい?」

 「はあ・・・、好きにしろ。」

 別にこの時間は見たいテレビ番組があるわけでもないしいいけどさ。でも少しは皿洗いを手伝うとかしてくれてもいいと思うんだが。

 特に一番張り切っている兄貴に関しては、俺と同じで中間試験前のはずなんだが。勉強に関しては人それぞれだから何も口出しする気はないけど、もう少し受験生の自覚を持ってもいいんじゃないかとは思う。

 そうして騒がしい声を聞きながら、1人寂しくハンバーグの肉汁がたっぷりついたお皿やフライパンと格闘する。さっきのあの2人の嬉しそうな顔を見たときの心の高鳴りが跡形もなく消え去りそうなストレスと戦いながらも、なんとか許容範囲だと思える程度までには綺麗にすることができた。まだ今日はおろしポン酢だったからよかったけど、これをデミグラスとかにするともっと大変なんだよな。


 「ん・・・?」

 布巾で水気をとっていると、ズボンのポケットからわずかな振動を感じた。連続して鳴っていることから、これは電話だな。

 「あーはいはい、この手がびしょびしょな時にかけてくるんじゃないよ、ヒロさんよ。」

 急いで手を拭いて、緑の受話器ボタンを押して耳へと持っていく。

 「ういーっす、どしたー?」

 『お、ういーっす!なになにどうしたのー?電話口だとテンション高いんだね?』

 ・・・ん?なんか俺の知ってる反応と違う。と言うか俺の思っていた声とは明らかにヘルツが高い。

 『あれ?おーい、もしもーし!栗生くーん?あれ、急に聞こえなくなっちゃった。もしもーし?』

 まさか。

 スマホを耳から離し、恐る恐るスクリーンに表示されている通話相手の名前を見る。

 「・・・やらかした。」

 そこには初めて見る、白瀬美桜の4文字が表示されていた。

 いや、今からでも遅くない。まだ何もなかったことにしてその赤いボタンを押してしまえば大丈夫なはずだ。


 「ふう・・・。危ないところだった。」

 通話終了、0:14という文字を見て、ほっと一息をつく。危ない危ない。危うく家という唯一の憩いの場すら侵食されてしまうところだった。

 と胸を撫で下ろせるほど、あの女は甘くなかった。

 「おい、またかけてきやがった!」

 今度は手の中で必死にブルブルと震えだすスマホ。もちろん相手は白瀬。今度は迷わず赤いボタンを最初から押す。

 しかし、今度は安堵する間も無く再度の着信が届く。

 「マジで勘弁してくれよ・・・。」

 スマホの電源を落とそうかとも迷ったが、一回出てしまった以上、次の日に何を言われるかたまったものじゃない。ここは、1分前の愚かな自分を呪うしかあるまい。

 ならばせめて、拘束時間は最小限に抑えられるように戦おう。まだ食器を片付ける作業が残っているのだから。


 『ちょっと、いきなり切ったでしょ!?』

 「お前、LINEでしか連絡しないって言っただろうが。」

 『えーでもこれだってLINEでしょ?LINEの通話機能なんだから。』

 こ、こいつ。ここにきてまた屁理屈を・・・。

 「言っておくが、今日の進展はない。そもそも中間が迫って忙しいこの時期に動きを起こすつもりはない!」

 『あーうん、それを伝えようとしたのもあるんだよ。幾ら何でも中間前くらいは自分のことに集中してほしいって。』

 「じゃあ今すぐ集中したいから切るぞ。」

 『ちょ、ちょっと待って!流石に私のこと嫌いすぎでしょ!』

 「今までの自分の行いを胸に手を当ててよく考えるんだな。」

 『・・・あーうん、心当たりしかないから考えるのやめていい?』

 自覚症状があるだけまだ立派か。あるだけで態度を改めない場合はクソ度倍増だが。

 「じゃあ切るぞ。」

 『だから待ってって!』

 あの程度の言葉では逃がしてくれないか。新たな厄介ごとじゃないことを祈る。

 「・・・はあ、なんだ。」

 『いや、あのね。その、えーっと・・・。』

 スマホ越しでも、白瀬が少し言い出しづらそうにしているのが伝わる。もしかしたら、こんなに弱気な白瀬の声を聞くのは初めてかもしれない。

 『今日の朝、君に話しかけたのってもしかして迷惑だったのかなって。』

 ただ、その内容がまさか今日の朝の出来事についてだとは思わなかったが。

 「挨拶されるのすら嫌ってことはねえけど反応には困る。」

 『そこは普通におはようって返してくれたらいいのに。』

 「お前がそれを言うか。」

 『え、私が言ったら何か変?』

 当たり前だろうが。ちょっと前まで俺と同等かそれ以下のカーストに所属していたはずのこいつだったら、ちょっと考えればわかりそうな話だろ。

 声色とこの間でなんとなく察するが、こいつ絶対今キョトンとした顔してるな。なんだ、高校デビューをしたらそれまでにあった出来事を全て忘れる副作用でもあるのか?

 「中学時代のお前だったとして、もし教室に入った時にいきなりパリピの集団をまとめる男子から挨拶されたらどうだ?」

 『それは・・・、』

 「それでその男子から、『あいつ、昨日わざわざ俺の家に来て休んでた分のプリント渡しに来てくれたんだぜ!』ってクラス中に聞こえるボリュームで言ってたら、どんな気分になる?」

 電話口から小さく『あっ』と呟く声が聞こえる。それから数秒沈黙が流れたが、やがて白瀬の方からそれを破ってくる。

 『・・・ごめんなさい、私、何も配慮できていなかった。』

 どうやら多少は心に響いてくれたようで、申し訳なさいっぱいの謝罪が聞こえてきた。

 「まさかとは思うが、俺に言われるまでそれに気づかなかったとでも言うつもりか?」

 『情けない話だけど気づいてなかった。本当にごめんなさい。』

 こいつ、マジか。これだけ必死に謝るってことは、おそらく本当の本当に俺に言われるまで気づいてなかったってことだよな。

 よくもまあ、15年間もあのキャラで生きてきておいて俺ら側の人間の気持ちを忘れることができるな。逆に尊敬するわ。

 『私、自分がクラス内でうまくやれてることに気を良くしてばかりで、周りのことをちゃんと考えられてなかった。』

 「後になって反省するくらいなら最初からもっとよく考えて行動することだな。自分のことばっかり考えているから、そういうことになるんだ。」

 白瀬美桜という人間は、今までもこうやって自己中心的な思考を周りに押し付けて生きてきたんだろう。どうせそれが凌太先輩をめぐる一件を大きく拗らせている原因なのだろう。ストーカー紛いの行為でもして、それが凌太先輩にバレて嫌われた。この前の凌太先輩のあれほどまでの拒絶反応を見る限り、そうとしか考えられない。

 だとしたら、このまま白瀬に協力して凌太先輩を心変わりさせるというのは本当に正しいことなのだろうか。己の身の可愛さが故に凌太先輩を生贄に差し出すような行為に他ならないのではないか。

 『今日はもう、切るね。』

 「待て。」

 いくら面倒ごとを避けたいとはいえ、悪に加担することはポリシー上、許せる話ではない。

 流石に俺という人間はそこまで腐っちゃいない。

 「お前がやっていることは、自分の感情の押し付けなんだといい加減気づいたらどうなんだ。」

 『・・・うん、君にはそう言われても仕方ないとは思う。実際、君にはひどいことしかしていないもんね、私。』

 「どうせ俺だけじゃないんだろ?そうやってお前は、凌太先輩にも色々自分の都合を押し付けてきたんじゃねえのか?」

 『え・・・?』

 「この前の凌太先輩の反応を見たらわかる。どうせ、凌太先輩にも自己中心的な考えであれこれとちょっかいを出して嫌われたんだろ。そんなことの手伝いになんて俺は絶対に協力しないからな。」

 『ちょ、それは違う!』

 「何が違うもんか。自分ではみんなそうやって言うんだよ。ストーカーとかするやつはみんな決まってそうだ。」

 『私はストーカーなんて・・・。』

 「それを俺が信じるとでも?この短い時間だけでもお前がそういうことをするって・・・」


 『何も知らないくせに勝手なこと言わないで!!!!!』


 耳がキーンとなるほどの大音量をいきなり耳に浴びせられ、思わずスマホを床に落としかける。間一髪もう片方の手でキャッチしたので事無きを得たが、下手するとスマホが破損するところだった。

 「おい、びっくりするだろうが!」

 イラっとはしながらももう一度スマホを耳に近づけて文句の一つでも言ってやろうと思ったが、スマホの画面はすでに通話終了の4文字を表示していた。

 「チッ、あいつ、自分から電話切りやがった。」

 逆ギレとはいい度胸してやがる。

 ああいうタイプの人間は真実を突きつけられても、絶対にそれを認めないからな。それが余計に面倒くささを倍増させるのだ。

 俺はああいう奴が大っ嫌いだ。自分の都合で人を振り回し、人様の迷惑を顧みずに行動する。それがどれだけクズな行為なのか、本人は全く自覚していない。


 「海斗君、どしたの?」

 「・・・なんでもねえよ。」

 無性にむしゃくしゃした気持ちで食器を元あった場所に返していると、その俺の違和感を感じ取ったのか、ゲームを一時停止した兄貴と妹が俺の方をガン見していた。

 「お前、なんちゅう顔してんだよ。」

 「放っとけ。いつもこんな顔だ。」

 「バカ言え。目つきの悪さが10割り増しだ。」

 「・・・普段から目つきは悪いから変わんねえだろ。」

 「普段はもう少しイケメンだぞお前。」


 「うるせえよ!!!・・・少し放っといてくれ。」


 食器の片付けも途中のまま、いたたまれなくなった俺はそのまま階段を登る。

 2人とも気遣うようにこちらを見ていたが、それがなぜか異様に俺の心を抉るような痛みを与えるようだった。


 「俺は絶対に悪くねえ・・・。」

 それから自室の勉強机に向かって教科書を開く。

 「絶対に悪くねえはず・・・なのに。」

 だが教科書の文字は、一文字も頭の中に入ってくることはなかった。


*     *     *


 「ふぅー、終わった終わったー。」


 「おう、お疲れー。」


 全員分の答案用紙があることを確認した試験監督から試験終了が告げられると、ヒロは上半身をぐでーっと机に預けた。

 ヒロだけでなく、クラス中がテストからの解放に声をあげて喜んでいるようだ。早々にカバンを手に取って、高校初の試験週間の終了を祝う生徒もいる。

 「高校でも10位以内は狙えそうか、海斗?」

 「さあな。周り次第ってとこだ。」

 「自己評価的にはどうなんだ?」

 「全教科9割は取っている自信はある。筆記の採点次第で現代文と歴史は満点も十分に狙える。」

 「うへえ、相変わらずバケモノ染みた学力をお持ちで・・・。」

 誰しも、日頃から授業を真面目に聞いてしっかり宿題をやっていれば、ある程度のいい点数を取れると思っているんだけどな。

 それを続けるのが難しいとか、授業だけでは内容がよくわからないなんていう反論はこれまで幾度となくされてきたが、前者の場合はただのやる気不足、後者の場合は最初の一歩をどこかで間違えている、または昔の知識を忘れているだけだと俺は考えている。学校の授業というものは、ちゃんと段階を踏んで進むようになっているのだから、授業を聞いてもわからないというのは、それまでにやった内容をきちんと理解していないことの証明に他ならない。

 とは言え、本気で勉強をし始めたのは中学時代になってからだ。小学校時代は学力も普通だったし、全教科9割を取った日にはそれなりに馬鹿騒ぎもしたものだ。

 「あれだけ思い詰めてたくせに、いざテストが始まるとこの澄まし顔だからなあ。」

 「別に思い詰めてなんかない。」

 俺の隣の席の様子をチラチラと伺いながら、からかうように笑うヒロ。


 あれから今日に至るまで、俺と白瀬は一度もコミュニケーションを取っていない。俺から白瀬に話しかけることなんて、高校になってからは一度もなかった(それ以前はさすがに覚えていない)し、白瀬が俺に学校で話しかけてくることも滅多になかったから、それ自体は不自然なことではない。だからその程度では、普通のクラスメイトは俺たちに突然訪れた不和に気づくことすらない。

 ただ、俺の目の前に座っているこの男は普通のクラスメイトではなかった。あろうことかこの男は、あの電話があった次の日の放課後には、

 『なあ、お前らなんかあったん?』

 と、何かを察したかのような一言をかけてきたのだ。気づいた理由は、俺がいつも以上に白瀬の方をチラチラと見ていた、そして白瀬は俺とは対照的に一度もこちらを向かなかったからだという。お前は俺の前の席なのに、どうやってそんなことに気づいたんだって話だ。

 詳細はテスト後に話すと言ってその場はやり過ごしたが、テストが終わった直後にこの話に触れてくるとは、よほど気になっているみたいだな。俺からするとあまり話したい内容ではないんだが。

 改めて隣をチラ見してみると、周りにはいつものメンバーが白瀬を取り囲むようにして話し込んでいるようだ。グループの中心というのは、精神的だけでなくフォーメーションまで真ん中になるんだな。すぐ近くまで白瀬グループの人間がいるのは邪魔くさいが、そのおかげで小声で話せば白瀬にまでその会話の内容が漏れる心配がない。

 「一応聞いておくが、お前はあいつとは接触していないって思っていいんだな?」

 「してねえよ。今回はあの喫茶店の時とは違ってLINEも来てない。状況についてはちんぷんかんぷんだ。」

 この言葉をどこまで信じていいのかは正直怪しいが、こうしてテスト終了と同時にこの話題に切り込んでくるあたり、早く情報が欲しくて仕方がないって様子だ。そういったところから判断すると、ヒロの言っていることは真実だと見ていいか。

 本当なら、2人で藤が丘まで戻ってこのことについてじっくりと議論したいところなんだが、ヒロはテスト最終日の今日からまた部活なのだ。なので残念ながらここで帰宅するわけにはいかない。

 「食堂に場所を移すぞ。どうせ昼飯も食わねえといけないんだ。あそこならちょうどいいだろ。」


            *     *     *


 「あー・・・。うーん・・・。」

 腕を組みながら唸り声を上げるヒロ。ちなみに今お互いの口の中には、学食で購入した唐揚げ丼がゴロゴロと入っている。

 「いやあ、でもやっぱ6:4でお前が悪いな。」

 「・・・お前、最近全く俺の味方してくれねえな。」

 迷いに迷った挙句、俺の親友であるヒロが今回の一部始終を聞いた上で下した判決は、俺にわずかばかりの非があるという、なんとも納得しがたいものだった。

 「それにしてもまさかあの日にそんな楽しそうなイベントがあったなんてな!」

 「全く楽しくなかったわ!散々だったんだぞあの日!」

 吉川に白瀬宛のプリントを渡しに行ったら、なぜか白瀬家まで同行することになって・・・、ってダメだ、思い出しただけで胃が痛くなる。

 「白瀬さんの家に吉川さんを連れて上がりこみ、みんなには内緒の約定を結び、最後は吉川さんを家に送る・・・。お前、俺以外に絶対そんな話すんじゃねえぞ。下手すると半殺しにあうぞ。」

 「この上にさらなる仕打ちが待ち受けているとか、俺の人生どうなってんだ。知らん間にお寺の大仏でも壊したのか?」

 「むしろ毎日丁寧にお世話したって手に入らないくらいの幸せをお前は手にしているんだよ。」

 これが物欲センサーってやつかねえ、と頬杖ついてあきれるように俺を見るヒロ。確かにどうせなら、ヒロにこういうイベントを用意してやればいいのに。そしたら白瀬も幸せになるだろうし、お互いウィンウィンなのにな。神様とは実に残酷である。あ、この場合、仏様か。

 そんなどうでもいい話をしているうちに、机の上に置いてある丼は空になった。この1ヶ月ですっかりここの唐揚げ丼には世話になりっぱなしだ。

 「白瀬さんがお前を味方につけるためにとった行動はそれなりにひどいとは思う。」

 「ひどいの3文字で片付けられることすら不服に感じるがな。」

 「でも、証拠もないのにあんなことを言うのはもっとひどい。」

 「ほぼほぼ裏が取れていたようなもんだろ。俺と凌太先輩が知り合いだって知ってたこと自体まず不気味だし。」

 「いや、言っておくけど凌太先輩と流渡先輩ってこの学校では有名人だからな?ちょっと3年生とコネクションを持てば、あっさり情報をゲットできるだろ。」

 悲しいかな、まだこの高校に来て1ヶ月と少しだと言うのにあのバカ兄貴の噂はそれなりに耳にする。ずっと学校が俺と一緒だった白瀬は、もちろん兄貴のことも知っているだろうし、ない話ではないか。

 「でも白瀬を見たときのあの凌太先輩の反応を思い出せ。明らかに昔何かあった顔をしてたぞ。」

 「仮にストーカーをされていたとしたら、怒るか怯えるかどっちかじゃないか?あんな気まずそうな顔はしないと俺は思うけど。」

 「もう関わらないでくれ的なことも言ってたろ。」

 「それだけじゃ判断基準にはならんだろ。極端な話、凌太先輩が一方的に白瀬さんを嫌いになったから、嫌がらせをしたって可能性だってあるだろ?」

 う、うーん・・・。そう言われてみたら、白瀬にひどいことを言ったみたいなこともあの人は言ってたかもしれない。

 「100%そうだっていう確証がないのに、そう決めつけて責めたてるのは、あまり褒められた行為じゃないと思うぞ、俺は。」

 む、むう・・・。そう言われると些か早まったことをしてしまったような・・・。

 いかん、なんか背筋にいやーな汗が滲んでいっている気がする。

 そんな俺を見ると、さっきまで割と真剣な顔で説教していたヒロが、少しだけニヤリとした。

 「にしてもよ、出来るだけ平和に、波風を立てないってポリシーを立てているお前が、そこまであからさまな敵意を他人に向けるなんて珍しいよな。」

 それは俺自身もこの数日間何度も考えていた。本当、我ながら柄でもないことをしてしまったものだと。

 クラスの中心人物を相手にしているんだから、多少気に食わなくても機嫌を損ねない程度の嫌味に留めておくのが本来の俺のやり方だってのに。なんでこんなにもムキになって、真正面から啖呵切ってるんだろうか。

 「俺のポリシーを真っ向から否定してくるくせに、俺のポリシーに背いたやり方で俺を巻き込もうとしてくるのが許せねえんじゃねえか?知らんけど。」

 「うーん、その主張もわからんでもないけどよ。でもどうも俺は、お前らが対極にあるって感じがしないんだよなー。」

 「そりゃ、お前の目がだんだん腐敗の一途を辿り始めてるってだけじゃねえの?」

 「んなこたあねえと思うけど。でも、どこが似ているのか説明しろって言われても、パッとできる自信がねえなあ。」

 「まあお前が何と言おうと、俺があいつとはウマが合わんって思っている以上、何も変わんねえよ。」

 ヒロがどう思おうが、俺と白瀬の戦いの火蓋はすでに切って落とされてしまっている。ちょっとやそっとじゃ歩み寄ることができない状態にまで、この1週間で拗らせてしまっているのだ。

 「俺は仲良くした方がいいと思うけどなあ。」

 「メリットが1つもない。」

 「そうでもねえだろ。ほら、吉川さんともっとお近づきになれるかもしれねえじゃん。」

 な、何を言い出すかと思えば、そんなくだらないこと。そ、そりゃあ、白瀬の面倒に巻き込まれる対価として少し期待していることもあったかもしれなくもないかもしれないけど。

 「きょ、興味がない。」

 「・・・それ、隠せてるつもりかよ?」

 「痛って!?」

 こいつ、やたら冷たい目で、俺の右耳を思いっきり抓ってきやがった。

 「真っ赤っかだぞ、お前の両耳。」

 「それはお前が今・・・!?」

 「はいはい、そんなに言うなら今度左耳も抓ってやるっつーの。」

 部活の時間だと言ってヒロは空になった自分の丼とカバンを持って席を立った。

 「心の底から白瀬さんのこと嫌いだって言うんだったらそのままでもいいと思うけど、少しでも後悔してる気持ちがあるなら、手遅れになる前になんとかしろよ。」

 「別に後悔なんてしてねえ。」

 「あーそうですかい。―――じゃあ土日中に、その目の下に薄っすらできてる隈、治しとけよ。」

 引いた椅子を戻し、じゃあな、と最後に一言残して俺のこの学校で数少ない話し相手は去っていった。


 「テスト勉強で睡眠時間削られてただけだし。」


 ・・・相手がいないのに嘘をつくというのは、実に虚しい。


             *     *     *


 時刻は午後5時過ぎ。

 ヒロが部活に向かって1人になった俺は、学校に残る用事もなかったのでさっさと帰ろうかとも思っていたのだが。

 「よく起きられたな、俺・・・。」

 テストから解放されたことで、今まで忘れようとしていた眠気が怒涛の勢いで攻め寄せてきたのだ。即刻帰宅してやろうと思っていたが、これでは帰りの電車で爆睡ルートだ。最寄駅は終点だし、寝てても駅員が起こしてくれるから問題はないんだが、電車の中で爆睡するとどんな恥をかくかわからんからな。

 ということで、すでに第2の家と化しつつある図書室で仮眠をとっていた。約3時間、一度も目を覚ますことなくぶっ通しで寝ることになるのは予想外ではあったが。長時間もこの低いテーブルにうつ伏せで寝ていたせいで腰が痛い。


 「逆に、それだけスマホが鳴っているのに起きない方が不思議だけどね。」

 「・・・ん?」

 バッキバキに固まった体をほぐそうと右に腰を捻ると、姿勢正しい姿で本を読んでいる1人の女子生徒の姿が目に映った。


 「い、いたのか、吉川。」

 突然話しかけられたことにびっくりして、声が裏返ってしまった。これは恥ずかしい。

 「2時間ほど前にね。その時からすでにあなたはぐったりと伸びているようだったけど。」

 な・・・。2時間もずっと爆睡してる俺の隣で本を読んでたってのか。周りにこんなにたくさんスペースはあるのに、なんでわざわざここで。

 「何度か私の寝ている姿を見られていたらしいからそのお返しよ。どう、少しは私の気分を味わえた?」

 「・・・べ、別に見ようと思って見ていたわけじゃないからな。勘違いすんな。」

 「なんでそこでそんな、ツンデレヒロインみたいなセリフが自然と出てくるのよ。」

 微笑をたたえながら、またしてもよくわからない横文字を並べられる。相変わらず褒められているのかバカにされているのかはわからんけど。

 「どっからどう見たって俺は男なんだが?」

 「・・・そういうことじゃないのだけれど。でも本当にこっちの世界には疎いっていうことだけはよくわかったわ。」

 幸か不幸か、今の吉川は眼鏡モードだから俺の心をざわつかせるようなことはない。が、すでにその眼鏡を取った姿を脳が記憶してしまっているからか、わずかながらの精神への負荷は積もっている。

 「その疲れ切った表情は、テスト疲れなのか美桜疲れなのかどっちなのかしらね。」

 「・・・テスト疲れだ。」

 「そう、やっぱりあなたは人の顔色を気にして生きていくタイプの人間なのね。」

 間髪入れずにそう答えてくるってことは、十中八九答えがわかっていただろこいつ。性格悪いな。

 「そんな睨まないでよ。そんなわかりやすい顔をするあなたが悪いんだから。」

 「あんたら2人は俺をおもちゃだと思ってんだろ。」

 「私はそうかもしれないけど、美桜はそうじゃないと思う。」

 「あんたはそうなんかい。」

 素直に言えば許されると思ってたらそれは大間違いだっつーの。

 とか思っていたら、また読書に戻りやがった。なんという自由気ままなやつだ。

 「あなたが美桜にどういう感情を抱こうが勝手だし、美桜を恨んだり嫌ったりするのはむしろ当たり前だとは思う。」

 「言っておくが、仲直りしてくれとか言うつもりなら聞く気はないし、白瀬に俺を説得するように頼まれたんなら、無駄だぞ。」

 「私がそんなことをわざわざあなたに言いに来るタイプの人間だと思う?」

 いくら図書委員以外誰もいないからと言って、孤高を貫いている吉川が学校で俺に接触してそんなことを言う可能性は確かに低い、か。

 「じゃあ何が言いたい。」

 「大したことじゃないわ。ただ、喧嘩をしてこれで終わりだと思っているようだったら、それは甘いんじゃないかって忠告してあげようかと思って。」

 「どういう風の吹き回しだ?あんたがわざわざ俺に忠告するなんて、それこそらしくないだろ。」

 「言ったでしょ?私は今日は寝ている姿を散々見られたお返しをしにきただけ。」

 「はあ?それがなんの・・・」


 「あなたが寝ていた間に何度も電話が鳴っていた。10回以上は鳴っていたわよ。」

 そう言えば、一番最初にもそんなようなことを言っていたな。ふと気になったので、ポケットからスマホを出して確認してみると、

 「うわ、兄貴からめっちゃかかってきてる・・・。」

 「それを聞いて、まだあなたは巻き込まれるだろうなと思っただけ。」

 この言い方、まるで電話の主が俺の兄だってことを知っていたかのようだな。気持ち悪いくらいの勘の鋭さだ。それにその電話の内容にもある程度の検討がついてるって感じだし。

 「これのどこが仕返しになる?」

 「それだけ着信があったことを知っているってことが、ずっとここで監視していたっていう証明になるじゃない?ただそれだけよ。」

 それだけ言い残すと、吉川はずっと開いたままだった本の続きへと没頭していった。

 本当、何を考えているのか一番読めないのはダントツでこの人だ。全く喋らない時もあれば、今みたいにそれなりに喋りかけてくる時もある。子供のようなあどけない笑顔や寝顔を持っているのに、発言や仕草は大人っぽいというか落ち着いている。冷めているのかと思えば、白瀬にはそれなりに協力的。他人に無頓着なのかと思えば、自分の寝顔を見られた仕返しと言って俺に構ってくるような一面も見せてくる。

 それが不思議な魅力となって、俺の心を手玉に取るように揺さぶってくるのだから、どうしようもない。

 とりあえず、吉川の俺への興味は完全に消え失せたようなので、遠慮なく俺も片手に握ったままのスマホに目を向けることにした。

 『海斗ー、ちょっと話があるんだけど今どこだー?』

 『気づいたら折り返してくれー。無理なら無理って言ってくれー。』

 『スマホ充電切れかー?とりあえず俺らは家にいるからなー!』

 『今日、また凌太泊まっていくことになったからよろしく!』

 計11回の着信と4つのメッセージ。だいたい10分おきに一回かけてきてるじゃねえか。どんだけだよ。

 おまけに凌太先輩同伴ときましたよ。それで俺に話があるという内容の電話。

・・・はあ、やっぱそういうことだよなあ。

 「喜べ、あんたの予想は見事に的中したみたいだぞ。」

 「そう。」

 ほぼ無視に等しい反応をどうもありがとうございます。おかげで何の未練もなくこの場を去れそうです。

 ・・・でも果たして本当に吉川はそんなくだらない理由でわざわざ俺の近くで本を読んでいたっていうのか?いや、流石にそんなことでわざわざこの人はこんなことはしない。

 とすると、やはり白瀬の差し金か?いやでも、俺が白瀬をどう思おうがどうでもいいっていう発言が嘘だったとも思えない。

 じゃあ何だ?単純に俺の様子見?・・・わからん。さっぱりわからん。

 でもここで白瀬に変な報告をされても困るし、俺の主張だけはちゃんと伝えておいたほうがいいかもしれない。

 「あんたには悪いが、俺は白瀬の味方をする気はない。」

 「そう。」

 それなりに大事なことを言ったつもりだったんだが、吉川は視線を本から外すことはなかった。俺が何をしようとどうでもいいってことか。

 何だよ、人が珍しく真剣に悩んでやったっていうのに。結局あんたにとって俺なんかどうでもいいってことかよ。

 「ただ、」

 いらんことを言ったと後悔して、この場を立ち去ろうとすると、もう今日は聞くことがないと思っていた声が再び聞こえてきた。


 「一応親友の名誉にかけて言わせてもらうけど、美桜はあなたが思っているような人間じゃない。・・・それだけ言いたかった。それじゃ。」


 いつもはどこか気怠げに話す吉川が、やけに堂々とした声で俺にそう告げる。そのシリアスそうな表情も眼鏡のせいで台無しだが。

 「・・・そうですかい。」

 今度こそ俺は吉川に背を向けて図書室を後にした。


 ・・・白瀬にあんな発言をしたことに、わずかばかりの罪の意識を感じながら。


            *     *     *


 「おい、だからそのコンボはおかしいだろ!」

 「確ってないんだけどなこのコンボ。頑張ってずらせば3撃目以降は当たらんぞ。」

 「って涼しい顔しながら撃墜するのやめろおおおお!!!」

 リビングの扉を開くと、いつぞや見たような景色が広がっていた。違う点は、兄貴の隣に座っているのが妹じゃなく凌太先輩だってこと。

 「お邪魔している。」

 「あー、やっと帰ってきやがった!連絡しろっつったのに、なんで何も言ってこないんだよ!」

 扉の音で俺の存在に気づいたようで、ゲームを一時中断した兄貴たちの注目は一斉に俺に向けられた。

 「悪い、普通に図書室で寝てた。」

 「寝てたあ?学校を仮眠スペースに使うって俺には信じられんのだけど。」

 「不真面目なくせに、授業中に寝るとかだけは絶対にしねえしな、お前。」

 相変わらず肝心なところだけは真面目なようで。

 「はあ?だって寝るのなんか勿体無いだろ?聞いてて面白い授業は聞きてえし、つまんねえ授業の時は内職もできるし、今日はどんなことしようって考える時間にもできるしよ!」

 ・・・相変わらず要領よく生きているようで、に撤回しよう。

 「ある意味こういうところが、3年間学年成績トップ3の座を保持している秘訣かもしれんな。」

 「我が兄ながら、ほんと憎たらしいわ。」

 「やるときはやる、羽目を外すときは外す、これ大事だから覚えとけよーお前ら!」

 ニシシと笑顔で隣に座る凌太先輩の肩をバシバシと叩く。それを嫌そうな顔をしながらもされるがままにされている凌太先輩。

 今となっては見慣れた光景ではあるが、最初の頃はこうもいってなかったことを思うと、なんだか感慨深い。

 「あ、海斗君おかえりー。」

 この騒ぎを聞きつけたのか、2階から藍波も下りてきたので、ただいまと一言返す。

 少し羨ましそうにテレビに映し出されているゲーム画面を眺めているが、この様子を見るに、また誘いを断って1人自分の部屋で別のゲームをやっていたんだろう。

 「少しだけ顔色良くなったね。寝てきたの?」

 「そんな顕著に違いがわかるくらい酷かったのか、俺の顔。」

 帰ってきた瞬間に聞かされた言葉がこれって、朝の俺の顔は相当酷かったみたいだ。

 そういえば最近はクラスの連中とも距離を感じていたような・・・ってそれはいつも通りか。

 「おい、聞けよ凌太!海斗のやつ、高校最初のテストだからって張り切って、睡眠時間削って勉強してやんの!」

 「そんなバカにするようなことじゃないだろ。ま、テスト前こそ、十分な睡眠を取ることが大事だと俺は思っているけど。」

 「わかってますよそんなこと。ただ、なんというかその、落ち着かなかったもんで。」

 実際は、他事に気を取られて思うように勉強に身が入らなかったからが5割、寝ようと思ってもその他事が頭を悩ませるせいでいい睡眠が取れなかったからが5割。

 その悩み事がなんだと聞かれるのが嫌だったので、兄にはああやって言って誤魔化したんだが、それをネタにされるのは癪に障るな。

 「それでだけどさ!3人ともテストで疲れてるだろうし、ピザでも頼まない!?」

 「お、いいこと言うじゃねえか藍波!俺は大賛成だぞ!」

 「おー、俺も賛成だ。夕飯をご馳走になるのは申し訳ないと思っていたところだったんだよ。」

 「なーに、気を遣ってんだよ!そんなの俺たちの間には無用だっつーの!」

 いや、作るの俺だからな?お前らの関係についてどうこう言うつもりはないけど、俺と凌太先輩の間は別だからな?

 それにしても、藍波主体でこういう話になるのは正直予想外だったな。俺も今から献立考えるのは面倒だと思ってたからちょうどいいけど。

 「じゃあ藍波、宅配の手筈は任せた。お前からこんなことを言い出すってことは、何か考えがあるんだろ?」

 「えへへ、さすが海斗君。私の考えてることくらいお見通しかー。」

 「伊達に12年間お前の兄貴やってねえからな。ま、好きにしてくれたらいいけど、頼むピザはちゃんと2人にも確認をとって、頼む量もちゃんと考えること。いいな?」

 「はーい!」

 向日葵のような明るい笑顔を振りまいて、藍波は自分の部屋に戻っていった。

 「いつになくご機嫌じゃないか、妹さん。」

 「最近なんかテンション高いんだよな。なあ、海斗?」

 「そう言われてみればここ最近は確かに高い気がするな。」

 反対に、最近ずっと俺はげっそりしてるんだよなあ。

 でも藍波はそんな俺の体調を気にしてくれたり、何か困っていることがあったら聞くと言ってくれたりと、すごく寄り添ってくれていたっけ。

 今こうして振り返ってみると、なかなか可愛いところがあるよな、あいつ。


 それに、ああして元気よく階段を下りてくる様子を見てるだけで、俺としてはすごく安心するんだよな。


 「流渡君、凌太さん、これでいい?」

 「おう、異論なし!」

 「うん、ありがとう。よろしく頼む。」

 敬礼のポーズで了解の意を示す藍波は、最後に一応の確認として俺にもスマホに表示された注文画面を見せてきた。俺は好き嫌いとかはないから、よほど変なものを頼まれない限りは美味しくいただける自信がある。

 見たところ変なやつもなさそうだし、量も値段も申し分ない。よって、注文完了のボタンを押す許可を与えた。

 「藍波。」

 「ん?どしたの海斗君。」

 「新しい家事を覚えたら、お小遣いアップも検討するぞ?」

 「え、お小遣い?そりゃまた急な話だね?」

 「あれ、さりげなく俺に優しくしてお小遣いあげてもらおうって作戦じゃなかったのか?」

 しばらく首を傾げた妹に、無言で顔をじーっと見られる。

 「・・・なんでそんなことする必要があるの?」

 「いや知らんけど。」

 「上げてほしいと思ったら自分から、家事手伝う代わりにお小遣いちょうだいって言うよ。」

 「まあ、確かに。」

 こればっかりは反論のしようがない。自分で言った通り、藍波はお金に困っているときは来月分の小遣いの先払い交渉に来たり、掃除や洗濯をやる代わりにお駄賃をくれと言ってきたりする。回りくどいやり方を好まず、最初から直球を投げてくるのが藍波のやり方なのだ。

 「ちなみに最近、私が海斗君に優しくしてるのは、顔に出るほど海斗君が女性関係で悩んでるっぽかったからだよ?」

 「ふぁあ!?ん、んなことねえし!」

 「って言われると思ったから、私はいつでも相談に乗るっていうスタンスでいたの。だからまた隈作る前に、今度はちゃんと相談してよ?」

 倒れられると栗生家のピンチだし、と言い残して、藍波は軽やかに2階へと戻っていった。

 というか俺って、そんなに考えていることが顔に出るタイプだったか?さっきの吉川と言い、今の藍波と言い、最近は心の内を見透かされてばかりで気味が悪いんだが・・・。

 「それにしてもあいつ、いつからあんな頼れる妹感を出せるようになったんだ?」

 俺をあそこまで気遣ってくれたことを素直に嬉しく思う反面、妹の善意を浅ましい方向にしか考えられなかった自分を恥ずかしく思うのであった。


            *     *     *


 「やったーーーー!!!ほら、見てみて、アワタカ当たったよ!!!」

 ピザが家に届くなり藍波が握りしめているのは、水色の鳥の縫いぐるみ。その鳥の頭を幸せそうに撫で回し、俺に見せつけてくる。

 「そいつのグッズもう何個目だよ。」

 「また新しくコレクションに追加するんだよ!」

 完全に目をハートの形にして、自分の部屋へと持っていってしまった。あいつ、ピザのこと忘れてないだろうな。

 「なるほど、妹さんの狙いは今やってるスマクリのコラボか。」

 「5000円以上のお買い物で、どれか一体をプレゼント、ねえ。」

 「凌太がいれば、いつもより1枚多く頼めるから5000円を超えるってことか。あいつも策士だなあ。」

 珍しくピザを頼みたいなんて言うから何事かと思えば、そういうことだったのか。最初から付録目当てだったと。

 「妹さん、本当いいゲームの趣味してんな。」

 「いやー、単純に俺たちでも知ってるゲームをいくつか教えてやっただけなんだけどな。」

 「その中でもダントツでスマクリにはまってて、今では部屋中スマクリグッズでいっぱいっすよ。」

 テーブルの上にピザを3枚と、ポテトとチキンが入った紙箱を設置して準備完了。飲み物は家にある炭酸系のものを出しとけばいいだろ。

 その間に妹もちゃんと下りてきたので、俺たちも椅子に座り、手を合わせる。

 「「「「いただきます!」」」」

 戦闘開始の号令と共に、各々が狙っていた獲物に向けて手を出した。クォーターのピザって、色んな味が楽しめる分、大人数になると必然的に人気の味の取り合いになるのが難点だな。

 それも、イマイチ関係性があやふやな人と甘え上手な妹が同じ食卓にいると、自分の思ったように動けないという。

 最初の一口は俺も含めた全員が喜びの声をあげていたのに、時間が経つにつれ1人また1人と無言になり、やがて夕飯の席は無言でひたすら食べ物を口に運ぶだけの空間となっていた。

 そして20分ほど経過した頃には、あれだけいい匂いを漂わせていた5000円分の食べ物は、残らず胃袋の中へと消えていた。

 「あー、食った食ったー!やっぱピザこそが正義だな!」

 「なんかこの前も聞いたぞそんなセリフ。」

 「こいつ、この前俺の奢りで焼肉食いに行った時も同じこと言ってたぞ。」

 「流渡君は美味しい食べ物はなんでも正義認定しちゃうからね。」

 結局あの日、凌太先輩は兄に焼肉を奢ることになったようだ。凌太先輩にとって相当な厄日だったわけだ。

 「付録もしっかり4分の1を引き当てたし、私も大満足だよ!」

 「妹さんはファブルコン派なんだな。俺は生粋のグレンナルド派だから属性相性悪いわ。」

 「最初の3匹は全部好きですよ!でもやっぱりビジュアルはファブルコンが頭一つ抜いてますね!」

 そんな凌太先輩は藍波とスマクリ話に花を咲かせている。


 ちなみにスマクリというのは、スマートクリーチャーと呼ばれる育成RPGで、世界中で遊ばれている国民的ゲームのこと。ちょうど去年に新作が出たことでも話題になり、そのバトルの奥深さから子供から大人まで幅広い層に人気があるコンテンツだ。藍波が一番最初にやったゲームシリーズでもあり、絶賛どハマり中らしい。

 そのどハマり具合を表すかのように、藍波の部屋にはスマクリグッズが大量に置かれており、ベッドの上にはさっき当たったアワタカというスマクリが大量に置かれている。部屋に入った瞬間に四方八方からそいつがこちらを見てくるから、控えめに言って気持ち悪い。


 「スマクリ好きの女子って、みんな部屋がスマクリ系のもので溢れかえるジンクスでもあるのか。」

 「どんなジンクスだよそれ。てかスマクリ好きの女子の知り合いなんかいたっけ、俺たち。」

 「ん?あ、あー・・・、イメージだよイメージ。ほら、置いてそうなイメージないか?」

 やたら焦った様子で兄貴に目配せをしている凌太先輩。するとその謎の視線で察したのか、兄貴まで若干気まずそうな顔で俺に話題をふってきた。

 「お、俺は、女子の部屋って藍波の部屋しか知らねえからなんとも言えねえわ。海斗は?」

 「いや俺だって知ら・・・、」

 ないと思ったが、よく考えたらこの前行ったわ女子の部屋。

 ・・・というかよく考えたらあの部屋もスマクリだらけだったわ。本人には恥ずかしいから忘れろと言われたが、俺の記憶の中にはバッチリと残ってる。

 てかそうか!あの部屋入った時になーんか見覚えのあるものがあると思っていたけど、あれはスマクリだったのか。藍波の部屋で散々見ていたから白瀬の部屋にも既視感があったんだな。

 「・・・今のところ俺の知っている女子部屋のうちの2分の2がスマクリ部屋だったわ。」

 「マジかよ。」

 「俺も妹さんの部屋を含めたら2分の2だな。」

 「お前もかよ!女子の中で空前絶後のスマクリブーム来てんじゃねえか!」

 とは言うものの、標本が3人しかない以上、そのデータだけで女子の間でスマクリが流行っていると結論づけるのは間違ってるだろうけどな。

 「えー、私その人たちに会いたいなー!絶対友達になれると思う!」

 「藍波なら仲良くなれる可能性があるかもしれないけど、オススメはしない。」

 「えー、なんでー!?」

 「趣味は合うかもしれんけど、人としてどうって話だよ。」

 「海斗君の言う、人としてどうっていうのはあんまりあてにならないと思うけど。」

 「ひどい言われようだなおい。」

 俺と藍波の性格が違う以上、俺の価値観を押し付ける気はないけどさ。それでもあいつはやめたほうがいいと思う。

 「じゃあ、凌太さんのお友達はどうなんですか?」

 「お、俺の!?」

 「はい、部屋に行ったことあるくらいですし、仲いいんですよね?」

 純粋無垢な妹の瞳が凌太先輩に突き刺さっている。いくらあんまり藍波と会話した経験がないからって、そこまで困った顔をしなくてもいいだろうに。

 「む、昔の話なんだ。だから今はもう接点がなくてな。」

 「あーそうなんですか。残念です・・・。」

 そこまでしょんぼりしなくてもいいだろ。それにこいつ、兄の友達の友達とコネを本気で持とうとしてたのか。藍波のこのコミュ力、侮れん。

 それはそれとして、

 「なんで兄貴までそんな気まずそうな顔してんだよ。」

 「え、ああ、いや。今日の本題にも大きく関わる内容だったから、つい俺までそわそわしてしまったというか。」

 「今日の本題?」

 本題も何も、さっきからずっと格闘ゲームで対戦しかしてなかったじゃねえか。

 「お、おい流渡。このタイミングで話せってか!?」

 「もともと海斗に協力を得るつもりだったんだろ?それに女心を知りたいんだったら、藍波がいた方がうまく話が進むかもしれねえぜ?」

 「そ、それはそうかもしれんけど・・・。」


 なんてしらばっくれても、今日の本題が何かってことくらい、俺にもすでに見当がついている。

 でも待てよ。今の話が本題に関わるってことは、今凌太先輩が言っていた女子の部屋ってまさか・・・。

 「え、もしかして私に恋のご相談ですか凌太さん!?」

 あ、ちなみに藍波は無類の恋バナ好きである。なので恋愛の空気を察知すると、このように目をキラッキラに輝かせて食いついてくるので要注意。

 「良かったな凌太!あの最強と名高い栗生家3兄妹がお前の味方になってくれるってよ!」

 「どの界隈で名が通ってるんだよ俺ら。」

 「何言ってんだ。今までの学校で散々名を残してきたじゃねえか。」

 「それはお前だけだよ!俺はひっそりと過ごしてきてたっつーの。」

 俺がどれだけ、『あの栗生君の弟!?』ってイジリを受けてきたと思ってる。それも教師陣や兄貴の学年だけじゃなくて、全く俺らと関わりのない学年の先輩後輩からも言われてきたんだぞ?


 「・・・悪いが話だけでも聞いてくれないか、弟君。」


 そんな頼み込む姿勢を作らなくても、こっちはもう逃げるという選択肢が用意されてないんだよ。すでにこの件については深く首を突っ込んじまってるからな。

 「はあ・・・、わかりましたよ。大方話は理解しているつもりですけど。」

 「私にもわかるように一から説明してくれませんか!?」

 「あのなあ、やる気になっているが、これは多分お前の好きな系統の話じゃないと思うぞ?」

 1人の男に執着する女と、執着されて困っている男のお話なんて、聞いたところであまり楽しい話ではない。

 「俺も一回整理したいし、改めて一から説明してくれねえか?」

 「わかった。だいぶ長くはなるが。」


 いまだに揚げ物の香ばしい匂いが充満している栗生家のダイニング。そこの家主3人に囲まれるというアウェーな空間の中で、凌太先輩はゆっくりと話し始めた。



 「俺は美桜ちゃんのことが―――」

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