しりたがり
ねぇ、ママ。赤ちゃんはどこからくるの?
それはね。コウノトリが運んでくるのよ。
そうなんだあ。
ねぇ、ママ。人はなんでうまれてくるの?
それはね。いろんなことを知るためよ。
そうなんだ!
ねぇ、ママ。キリンの首ってどうして長いの?
それはね。高いところにある草を食べるためなのよ。
そうなの?じゃあ、ぼくも高いところのものがほしくなったら、長くなるのかなぁ。
ある日、ママの友達が言った。
智くんは博識だねぇ。
だから、ぼくはまた聞いた。
ねぇ、ママ。はくしきってなあに?
それはね。いろんなことを知っててすごいってことなのよ。
そうなんだ!
ねぇ、ママ。空ってなんで青いの?
それはね。うれしいからよ。
そうなのかあ。ぼくもなんだかうれしいな。
ねぇ、ママ。なっちゃんにきらいって言われたの。なんでなのかなぁ?
それはね。智くんのことよく知らないからなのよ。
そうなんだね。
ねぇ、ママ。どうして雨はふるんだろう?
それはね。泣いてるのよ。
そうなんだ…。ぼくもなんだかかなしいな。
ねぇ、ママ。お父さんはいつ帰ってくるの?
お父さんはもう帰ってこないのよ。
なんで?どうして?
ねぇ、ママ。しんじゃったってなに?
……………。
ねぇ、ママ?
__うるさいわね!ちょっとは自分で考えなさい!
ごめんなさい……。
ねぇ、先生。ぼくはママにすてられちゃったの?もうむかえに来ないの?
そうね。智くんがいい子にしていたら、きっと迎えに来てくれるわ。
そうなんだ!じゃあ、ぼくいい子でまってる。
(ママはぼくが物知りだとうれしそうだった。)
(ぼくがもっと博識になったら、ママ、むかえに来るかなぁ。)
ーーーーーーーーーーーー
俺はいま駅のホームで電車を待っている。
電車が遅延しているのか、まだ電車は来ない。
急いでいるというのに、また人身事故でもあったのだろうか。
イラつきながら携帯の画面を見た。
検索履歴がずらっと並んでいる。面接の仕方、グルメ情報、新番組などいろいろだ。
調べれば何でもすぐにわかってしまう。全く便利な世の中になったものだ。
(おっ、やっと電車が来たか)
そう思った瞬間、誰かが俺の体を勢いよく突き飛ばした。
その時、確かに聞こえた。
「ねぇ、死ぬってどんなの?僕に教えてよ。」
という無邪気な声が。