プロローグ
ダンジョン、それは幾多の冒険者が夢を見、そして夢を散らしていった場所である。
世界にはダンジョンは無数に存在し、その難易度はA,B,Cの三段階に分かれている。
しかしながら、ダンジョンの中でも難易度が高すぎるため、まだ誰も踏破したことがないダンジョンが七つあり、それらは”セブン・ス・ヘズン”、即ち侵されざる七領域と呼ばれている。
冒険者たちは一攫千金、そして誉れ高い栄誉を求め”セブン・ス・ヘズン”の踏破を目指すのだが、いまだに攻略するものは現れない。
そして、これは”セブン・ス・ヘズン”のうちの一角、”モノキュロス”の攻略を試みるパーティー、〔金色の導き手〕のリーダー、ダンテ・カイトの物語.....
「ったく、なんだってこんなとこに来ようって言ったんだよ…。」
カイトは、二本の手を首の後ろに回し、たいそうめんどくさそうに歩いている。
「いやー、ちょっとリーダーに見てもらいたいものがありやして…」
「小せえことでグダグダゆうなよ!」
「えと、わたしもちょっと興味あります・・・。」
俺がリーダーを務めているパーティー、金色の導き手は俺も含めて全員で4人いる。
副リーダー的存在のケイウス、クラスは狩人。冒険時、全体を監視し俺に状況を伝える役目だ。索敵や罠外しなども担当している。しかしながら仕事がテキトーなので罠はカイトがほとんど外している...
言葉遣いが荒く、怒りっぽいバックス、クラスは戦士。戦いのときはパーティーの矛となり、幾多の敵を打ち破ってきた。見た目や言葉遣いから勘違いされがちだが、本当は気のいいやつである。
おっとりした性格なユリス、クラスは治癒士。彼女の治癒の能力は相当高く、この町の冒険者の中でもトップクラスだろう。普段はおっとりしているが怒らせたら...まあ、ここでいうのはやめておこう。
そしてリーダーが俺、カイト。クラスは賢者。戦いにおいては指揮をしたり、魔法で戦いを優位に進める役割を担う。ほかのやつらは20代でまだかなり若いのだが、俺は41歳。もうそろそろ引退を考えなければいけない歳である。
なんでこんなじじいが若者とパーティーを組んだのか、これにはとーーっても深いわけがあるのだが...
いやうそ、大したわけはない。ただ単に余り物が組んだだけだ。
俺は腕には自信がある。知識も豊富だと自負している。だが欠点がある、性格だ。
ほとんどのものに興味を示さず、パーティーの仲間ともなんにも話さない。面倒くさいのだ。
そんなことを繰り返していたら、いつしか俺とパーティーを組んでくれるものはいなくなった。
いくら腕に自信はあっても、一人だけで冒険をする、ましてダンジョンに行くなんてことは無謀である。
そんな俺たち、金色の導き手はとある場所に来ていた。セブン・ス・ヘズンの一角であるモノキュロスの第一階層だ。
いくら踏破者がいないダンジョンと言っても、第一階層ならほとんど攻略は終わっている。俺たちのようなベテランの域に差し掛かったパーティーが来るようなところじゃないんだが...
「絶対あれは新発見ですって!! 早く行きましょうや!!」
どうしてもケイウスたちが行きたいというのだ。
「分かってるって。つってもほんとに見たのかよ、光る石板なんて...。」
先日、モノキュロスの探索の際、調子に乗ってついついレベルの高い上層の階まで行ってしまった。
ダンジョン探索の際は必ず帰りのことも考えなければならず、そのときは食べ物やら装備やらがかなり限界で、復路はへとへとな状態で歩いていた。
その時に、ケイウスが謎の光る石板を見たというのだ。
狩人というクラスの性質上、ほかのものよりも探索の能力は優れているし、目もよい。
例にもれず俺のパーティーのなかで最も観察眼に優れているのがケイウスだ(そういうのが索敵とか罠の発見とかにいかされてほしいのだが・・・)。
「えーーっと、見つけたのはこの辺なんでやすがね・・・。」
そういってケイウスが止まった場所は、少し道の開けた広間のような場所だ。
ダンジョンの中ではこういった広間になっている場所もすくなからずある、のだがここはなんだか居心地が悪い。まるで、得体のしれない何かの中にいるような・・・。
「おい、ケイウス、本当にここだったのかよ! なんにも光ってねえじゃねーかよ!」
「えと、やっぱりケイウスさんの見間違いだったようですね。」
「おかしいでやすねえー、確かにみたとおもったんでやすが・・・。」
ほかのメンバーは何も感じていないのか? だとしたら自分の気のせいなのか、そうおもって仲間に声をかけようとしたとき、ふと足元の石が気になった。
正方形。それもかなり角がとがっていて、土で汚れている。大きさは手のひらくらいだろうか。こんなのが自然の石であるのだろうか、いや確かにダンジョンの中だから自然とも言い切れないが・・・。
しかしながら30年ほど冒険者を続けているがこんなのは見たことがない。少し気になって拾い上げようと石に手が触れたその時
目の前が真っ暗になった。