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第一章「少女」

人は女に生まれるのではない、女になるのだ

 -シモーヌ・ド・ボーヴォワール「第二の性」



少年「放課後だってのにこれから準備室に行くのか…しかも準備室は校舎の外れにあるし、資料は重いし…早く帰りたいなぁ」



-放課後・準備室-


少年(やっと着いた…ん? 中に誰かいるのか?)


少女の声「ったく、だからオレは嫌だって言っただろうが、クソが!」


少年「!?」


少女の声「押しゃあいいってもんじゃねーんだよ! わかれ! ああ、もう、思い出すだけでムカつくぜ! くそっ、あのヤロウ、キメェんだよ!」


少年「うゎぁ…」(ドン引きだぜ。すげえ可愛い声なのに…)


少女の声「!! ……誰かいるの?」


少年(うっ、仕方ない。ドアを開けてっと)

少年「えーっと、資料を置きに来たんだけど…」


少女「あ、し、少年くん。資料を、お、置きに来たの?」


少年「日直で資料を片付けるの忘れてて…」

少年(同じクラスの少女さんだったか。美少女だけど殆どクラスに馴染んでいない子だ。黒いロングヘアが目立つ、いつも物静かでクールビューティーな子だと思っていたが…)


少女「そう。……」


少年「……」


少女「……」


少年(くっ、気まずい!)

少年「じゃ、資料も片付けたし、俺はこれで…」


少女「…っ! 少年くん、ちょっと…」


少年「な、なに?」


少女「あの、さっきの、聞こえた?」


少年「さっきの? え、いや、まあ、その…何となく…」


少女「そ、そうだよね…。実は演劇の練習をしていて…アハハハ」


少年「あ、あははは…」

少年(めっちゃ笑顔だけど目が笑ってねぇ。なんか普段の物静かな感じと全然違うぞ。引きつってる笑顔も超可愛い!)


少女「…ふぅ、でもまぁちょうどよかったか」ボソボソ


少年「え、なに?」


少女「ねえ、わたし女に見える、男に見える?」


少年「え? 男? え? 少女さんもしかして男の娘?!」


少女「わたしは女よ」


少年「じゃあなんで聞いたし! 女以外に見えようがないぞ」


少女「そうだよね。わたしの身体は女。でも、心は男だと思っているの」


少年「え? あの、LGBTってやつか?」


少女「そう。トランスジェンダーってやつね。で、面倒なんで『地』をだすけどいい?」


少年「地?」


少女「ああ。女言葉や仕草は外見に合わせて演技しているんだ。中身はおまえらと同じ男だと思ってもらっていい」


少年(同じ顔、同じ声なのに雰囲気ががらっと変わった!)


少女「まあ地と言っても表に出すことは殆どないけどな。いつもは頭の中だけで叫んだり話したりしていたのさ。でもまあ、我慢できなくなって今日みたいに人気ひとけのないところで吐き出してたってわけだ。まあ運悪くおまえに見つかったけど」


少年「男って言うけど、ただそういう話し方が好きなだけで、別にトランスジェンダー?だっけ? そういうわけではないんじゃないのか?」


少女「オレ、普通に女の子しか恋愛対象、いや性的対象にならないぜ?」


少年「普通って…」


少女「まあまあ。それで今日男に言い寄られてな。付き合わねーっつってんのにしつこくてよ。男と付き合うなんてできるかよ。ホモじゃねーんだし」


少年「ホモではないだろ、確かに…」


少女「もちろんこんなこと誰にも言えんし、言うつもりもなかったんだが。しかし聞かれちまったもんはしょうがねぇ。ちょっとこの後オレんまで付き合ってくれないか?」


少年「え、おまえのうち? なんでまた急に?」


少女「これ以上ここで話すのも何だしな。誰かまた来るかもしれないし」


少年「それもそうか」


少女「カフェやファミレスもまずいし、な。今後のことも含めて色々話しておきたい」


少年「わかった」

少年(このまま俺がクラス中に触れ回っても困るだろうし、状況説明した上で釘を刺しておきたいということか)


少年(しかし、途中から全然違和感なかったな。顔と声が少女さんなのに、普通に男友達と話しているような感じになった)



-帰り道-


少女「わたしの家はこっち。悪いけどよろしくね」


少年「ああ」

少年(うーむ。今は女モードか。しかし可愛いな)


少年(ちょうど部活の最中で下校している生徒が少ないからいいけど、こんな一緒に帰っているところをみんなに見られたら一発で噂になるな)


少年(クラスでは浮いてるけど、言い寄る男が多いのもわかる。しかし女の子と一緒に下校なんて初めてだな。ふふふ)


少女「なに笑ってんだよ」ヌッ ヒソヒソ


少年「うゎ、顔ちけーよ!」


少女「まあ、気持ちはわかるけどな。でも中身は男だってこと忘れんなよ」ニヤ ヒソヒソ


少年「お、おう」

少年(くっそ、こいついい匂いしやがる! はあぁ、幸せな気分だ……っていやちょっとまて、こいつのいうとおりこいつは男だ! 男だ男だ男だ…)


少年(変な気持ちはおこさないように……って、女でいいのか。ああもう!)


少女「そろそろオレん家だけど、ちょっと一言言っておく。たぶん家にはお袋がいると思うけど、オレのこの中身のことは家族も知らないから」ヒソヒソ


少年「おまえ、家族にも言ってないのかよ」


少女「ああ。知ってんのはおまえだけだ。誰にも言ってないからな」


少女「っと、着いたぜ」ヒソヒソ



-少女の家-


少女「ただいま」


少女の母「あら、少女ちゃんおかえりなさい」


少年「お、おじゃましマシュ」(くっ、咬んだ…女の子の家なんて緊張するぜ)


少女「同じクラスの少年くん。ちょっとクラス行事の打合せがあるからわたしの部屋にいくね」


少女の母「いらっしゃい。あらまあ、珍しいわね、少女ちゃんがお友達を連れてくるなんて。ふふ。じゃあ少年くん、よろしくね。おばさん、しばらく上の部屋には行かないから!」ニッコリ ウィンク=☆


少年「はへ?」


少女「少年くん、こっちよ」


少年「あ、ああ…」(何だ、今の?)


少年(…女の子の家、女の子の部屋! ちょっとドキドキしてきた!)



-少女の部屋-


少女「まあ、その辺に座ってくれ」


少年「…ああ。…すごい部屋だな。アイドル・アニメのポスターにフィギュアか」


少女「まあ、そんなにディープじゃないけどな」


少年「確かに。TVとかでみたオタクの部屋ってびっしりグッズやポスターがあったもんな。ここは抱き枕とかもないし。でも少し女の子の部屋を期待したぞ」


少女「そりゃすまん。まあ、自分の部屋は別に偽装する必要ないしな。誰も呼ばないし。そのかわりお袋がちょっと心配しててな。こんな趣味で男の影もないときた。さっき、お袋はおまえに多大な期待をかけてたはずだ」


少年「年頃の男女が二人きりで部屋にもるっていいのかなって思ったけど、あれはそういう…」


少女「男と付き合うこともそうだが、ちゃんと結婚できるのか心配なんだろうな。その点親には悪いと思っているよ。男と付き合ったり、まして結婚なんかできるわけないし」


少年「そうか…」


少女「あ、ちょっと悪いが、後ろ向いててくれるか?」


少年「? ああ」クルッ


少年(何だ? あ、戸棚のガラスに反射して見える。ジャージを制服のスカートの下に穿くのか。太ももの根元まで見えそうで色っぽい…)


少女「もういいぜ」ドカッ


少年「…胡座かきたかったのか」


少女「ああ。そのままだと見えちまうからな」


少年(色っぽくなかった…)

少年「さっそくだけど、その、中身が男だってことは秘密にしておくんだよな」


少女「ああ、頼む」


少年「誰彼にいう話しじゃないだろうけど、カミングアウトはしないのか?」


少女「さっき言ったとおり、親には心配かけたくないし、周りに言って面白おかしく見られるのもな。いや、面白おかしく見られるのは別にいいんだがな。気にしなければいいし…」


少年「?」


少女「オレが中身は男だとみんなに言うわな。で、男どももオレを男と認識してくれたとする。で、男同士のつきあいになる。実際『男友だち』って欲しいしな。当然エロ話とかもするよな?」


少年「当然と言われるとあれだが、まあ、男同士だしな」


少女「おめえ、いい乳してんじゃん、男同士なら恥ずかしくないだろ、ほら。とか言って上半身裸になって、俺も脱いだんだから…とか言って脱ぐことを強要したり…オッス!とか言って股間を触り合ったり…」ブルブル


少年「おまえ、想像力豊かすぎだろ! 身体は女だし、さすがにそんなことはないと思うぞ」


少女「いや、オレと同じ奴がいたら、オレならそうする。ぐへへ。だって女の体だぜ?」


少年「…おまえ…。いや、そうすると俺に正体明かすのもまずくないか?」


少女「うん、少年は大丈夫。実は前からカミングアウトするならおまえだと思ってたんだよ。まさか本当にカミングアウトすることになるとは思わなかったけどな」


少年「前から?!」


少女「おう、目を付けてたぜ」ニヤ


少年「あまり話もしたこともなかったと思うけど、なんでまた?」


少女「そりゃおまえから漂うヘタレ…いや、女子に話しかけられたときのビビりぐあいとかな…。男子同士で猥談してるときも何となく避けてるし」


少年「ぐぁ!」


少女「猥談くらい普通に参加しろよ。それに、それとなく会話は聞いてるようだし」


少年「余計なお世話だ! よく見てたな…」


少女「まあ、そんなわけで、ムッツリだけど実際に手を出すことはないだろうと…」


少年「ほっとけ!」


少女「信用してるってことさ」ニヤリ


少年「ヘタレを信用されるってのもな…。とにかく、この件は秘密なんだな?」


少女「そう。よろしく頼むよ」


少年「でも家族にはやっぱり話したほうがいいんじゃないか」


少女「うーん、今はちょっとな。将来言えるかどうかも…」


少年「そうか。確かに他人が口を挟むことではないな。わかった」


少女「今はカミングアウトできてホッとしてるよ。この口調で本当に会話したかったし」


少年「頭の中ではずっとそんな感じで話してたのか?」


少女「そうだな。まあ、小学校高学年くらいからかな。そのころから、自分は周りと比べておかしいと感じてたのさ」


少女「小さいころは男も女もあんまり関係なくて、オレくらいお転婆な女の子やお人形遊びよりヒーローごっこのほうが好きな子も多少はいたさ。でもいわゆる思春期になってきて、好きな男子は?とかいう話になるわけだ。男嫌いの子もいたけど、そのころからはっきり自分は違うと感じたな」


少年「ふうん」


少女「で、あるとき、男言葉で話してみたらすごくしっくりきてな。ちょっと周りの子にもそれで話してたら微妙な雰囲気になったりしたんで空気よんで頭の中だけで話すようになったんだ」


少年「確かにちょっとイタイ子に見えるかもな」


少女「あと、一時髪もベリーショート、つまり男っぽくしたり、男っぽい服装したこともあったけど、自分から見ても全然似合わなかったよ。外見的に。で、今はこんな恰好さ」


少年(ショートヘアも美人だから似合うと思うけどな。でも確かにロングヘアのこの感じはすごくあってる気がする)

少年「いろいろあったんだな」


少年「あんまり知らないんだけど、こういうのって手術して男になったりとかあるらしいじゃん。それなら似合うこと気にしなくてもいいんじゃないか?」


少女「うーん、親からもらった身体に傷をつけたり、薬で無理に変えるってのもな。なんだかんだで産んでくれた親には感謝してるし」


少年「いや、変なこと聞いてすまなかった。わかった、秘密は守るし、俺でよければ話し相手くらいにはなるさ」


少女「すまない。まあ、よろしく頼むぜ!」バン!!


少年「痛っ!」


少女は豪快に少年の背中を叩く。そんなわけで、奇妙な男?友達が少年にできたのだった。



-ある日・少女の部屋-


少年「よっ、それ! あ、ヤベ!」バシッ! ガッ!


少女「っしゃ、勝った!」チャラララー


少年「くっ、また負けたか。さすが所有者は強いな。この格ゲー俺も買おうかな」


少女「おう、買え買え。これ通信で対戦もできるからな」


少年「ところで俺にカミングアウトしたときの話だけどさ、あのとき別に中身は男だってバラさなくてもよかったんじゃないか? 乱暴な男言葉を使う女子もいないわけじゃないし、それこそ『ストレス発散でやった。反省はしている』とかでもいいわけだし」


少女「うーん、あのときは『バレた!』って気持ちと、『少年でちょうどよかった!』って気持ちが先に立ってたからな。でもずっと抱え込んでるより少年に言えてよかったよ」


少年「そう言われると少しこそばゆいな」アセアセ「あ、そのポスターのアイドル〇子の写真集、昨日買ったぜ」


少女「マジでか! エロい写真もあるという…。今度貸してくれ」


少年「まあいいけど、それほどエロくはなかった。高校生でも買えるヤツだし」


少女「マジかー。……なあ、アイドル本じゃなくて、そのものズバリのエロい本も持ってるだろ?」


少年「えっ…いや、その…まあ持ってるけど」


少女「いかんな。18禁だぞ」


少年「じゃあ聞くなよ!」


少女「今度それも貸してくれ」


少年「えええ! 興味あるのか!?」


少女「あたりまえだろ。健全な男子なんだから。いや、女だけど」


少年(心は男とわかっていても、美少女からそんなこと言われるとビビるな…。普通にエロ本持ってるとか言っちゃったけど)


少女「こんなこと頼めんのおまえだけだからなぁ」


少年「そらそーだろうな。女の身じゃこっそり買ったり、男友達から借りたりできないだろうし。俺の持ってる本も友達からもらったりとかが多いんだが」


少女「今度頼むよ」


少年「あ…、変なこと聞くけどさ、おまえ心は男だろ?」


少女「ああ」


少年「自分の裸見たらいいんじゃないの?」


少女「アホか。自分の裸でどう興奮するんだ」


少年「俺は身体も男だから自分の裸じゃ興奮しないよ? でも女の身体だったらいろいろ触ったり見たりしちまうとおもうけどなぁ。男ならわかるだろ?」


少女「うーん、そうか。オレも別の女の子の身体と入れ替わったらそうなるのかなぁ。でも自分の身体は別だな。ナルシストでもないし

おまえ、自分の母親の裸で興奮するか?」


少年「おえ…。変な想像させるな。親はオバサンだろ。自分はピチピチの女子高生じゃないか」


少女「ピチピチて。なら、自分の妹でもいい。家族や血のつながった人間には興奮しないんだよ。自分なら一番血がつながってるからな」


少年「妹とかいないからよくわからんが、なんとなく理解した。でも、女なら女湯とか女子更衣室とか入り放題じゃねーか。裸なんて見放題だろ。これは正直羨ましいわ」


少女「ぐへへ…ばれたか」ジュルリ「それに関してはいい思いをさせてもらってるよ」ニヤリ


少年「思いだしヨダレはよせ。拭け」


少女「へへへ」ゴシゴシ「ふふふ………、はぁ」


少年「どうした、溜息ついて」


少女「確かにそういうところは天国だけどな、そうジロジロ見れるもんじゃないぜ。たまにすげープロポーションのいい女が、私を見てって感じで何も隠さず堂々と歩いてることがあるけど、基本隠すしな。じっくり見てたらさすがに女でも痴漢容疑で逮捕されるだろうし。それになんかその、恥ずかしくてな。自分も裸だし。なんかそういうところだと視線を下にしてササっと過ごしちまう」


少年「おめーのほうがヘタレじゃねーか! まあ、俺も急に女だらけの混浴に投げ込まれたら、周りが自分を気にしなくてもそうなっちゃうかも…」


少女「で、話を戻すけど、いいやつを頼む。スマホやPCは閲覧制限かけられてるしな」


少年「いいやつ? ああ、エロ本のことか。まあ、わかった。隠し場所だけは気を付けてくれよ。おまえんとこの親にでも没収されたら俺泣くぞ」


少女「ああ。没収以前に、見つかったときのダメージは普通の男の何十倍だからな。そのときは『少年くんが無理やり部屋に置いて行ったの』って言うよ」


少年「やめろよ! 下手したら俺が訴えられるぞ?!」


少女「ははは。冗談だ。デスノートばりに隠すさ」


そんなわけで、密輸品を扱うような慎重さで少年と少女はエロ本をやりとりするのだった。



-ある日・とある駅前-


少年(ちょっと早めに待ち合わせ場所の駅前に着いたけど…あ、もうあいつ来てる。遠目でも目立つな。フリルの白いミニのワンピースにデニムのジャケットか)


少女「あ、少年くーん!」ノシ ブンブン


少年(めっちゃ笑顔で手を振ってきた! ヤバ可愛い! 余計に目立って、周りからも超注目集めてる!)

少年「悪い、待たせた?」


少女「ううん、今来たところ」ニコッ


少年「あれ、大きなバッグだね」


少女「うん、少年くんと食べようと思ってお弁当作ってきたの。サンドイッチだけどよかったかな?」


少年「マジで! ありがとう! あ、そのバッグ持つよ」


少女「ありがとう。でも大丈夫だよ」


少年「女の子に重い荷物持たせておくわけにもいかないしな。さあ」サッ


少女「じゃあ、お願いするね! ありがとう」ウフフ


モブ1『あのコ、すっげえ可愛いな』ボソボソ

モブ2『あんな可愛いのにあんなサエナイ男と…。なんでだ!』ボソボソ

モブ3『美女と野獣みたいな組み合わせってタマにみるけど、彼女騙されてるんじゃ…』ボソボソ

モブ4『あの地味ヤロウが彼氏? 金持ちのボンボンか何かか? クソが』ボソボソ


少年(聞こえてるっつーの! ウチは超中流だっての。くそ…。でもこんな美少女を独占してデートとか…。テンション上がってきた!)


…話は数日前に遡る


-少女の部屋-


少年「おう、例のブツだ」コソコソ


少女「いつもすまねぇな。少年のブツは質がいいからな」ニヤリ


少年「比較したことあんのかよ。まあ、希望に合ってれば嬉しい」


少女「ああ。真面目系っていうか、地味目のコが趣味でな。そんなコがあんなエロいポーズとってるとか…ぐふふ」


少年「世の中には『清純派AV女優』って矛盾しきった言葉もあるくらいだから需要は高いんだろうな。まあ、俺もその手のが好きだから持ってるんだけど…

あ、AVって言えば今度はDVDも持ってこようか?」


少女「マジで!? うわ、やった!」


少年(満面の笑みで喜んでる…。傍から見たらエロDVDに大喜びしているようには絶対見えないな)


少女「しかし、そうするといつもこっちが貸してもらうだけで申し訳ないな。といってこっちから提供できるブツなどないし……

はっ?!」


少年「?」


少女「へへへ、目の前に次世代匂い付DVDがあるじゃねぇか。脱げよ、とか思ってないだろうな!」


少年「D・V・D! D・V・D!…ってノセるなよ!」


少女「おまえ古いこと知ってるな」


少年「ほっとけ! おまえから振ってきたんだろうが」


少女「まあまあ。でも悪いが、オレの身体で…ってのはナシで」ブルブル


少年「言わねぇよ! ダチにそんなお願いできるか!」


少女「オレだったら土下座してお願いするかも」


少年「相変わらずだな、おまえ…。しかしエロ関係が自分の身に及ぶのはマジで嫌なんだな」


少女「当たり前だろ。男からエロい視線を浴びさせられてると想像してみろ。ホモだったら嬉しいかもしれんが」


少年「確かにガチムチ兄貴からその手の視線を浴びたらめっちゃ震えるな…」


少女「そうだろ。で、話を戻すけど借りっぱなしってのもな」


少年「まあ、気にするなよ」


少女「そうもいかんだろ。…うーん、やっぱり身体で払うか」


少年「えええぇぇ!! さっきの話は何だったんだよ!」


少女「落ち着け。身体で払うけど、エロいこと抜きだ」


少年「? 肉体労働ってことか? 部屋掃除に来てくれるとか」


少女「それでもいいけど、一度おまえを接待するぜ」


少年「接待? 政治家の料亭とかの?」


少女「ホモで思いついたんだが、オカマバーって楽しいらしいな。オレはあまり理解できないけど」


少年「よく聞くな。そこに招待してくれるのか? 18歳未満でも入れんのか?」


少女「いや、オカマバーの話でさ、楽しいのはショーとかもなんだが、行き届いた接待術が絶妙らしい。何しろ男なんだから、男が喜ぶツボを心得ているとか」


少年「ふぅん」


少女「だから、オレ自身がやられたら嬉しいと思うことをやろうと思う。一番嬉しいのはエロいことだが…」


少年「おまえ本当にブレないな」


少女「それは無理として。一度デートに行こうぜ」


少年「デート?」


少女「ああ。デート接待だっ」サムアップ



…というわけでデート当日に話は戻る


-とある街中-


少年(さて、そんなわけで少女とデートしているわけだが…)


モブ5『チラチラ』グヌヌ

モブ6『チラチラ』ハアァー

モブ7『チラチラ』クソガ

モブ8『チラチラ』イイオトコ///


少年(相変わらず少女は周囲の視線を集めてるな。最後おかしいけど。しかしこうなってくるとモブどもの嫉妬の視線も心地いいぜ!)ワハハ


少女「少年くん、急に笑ってどうしたの?」


少年(はっ、しまった!)「あ、いや、少女さんとのデートが楽しくて…」


少女「もう!」///


少年(うおおおぉぉぉーー!! 何そのハニカミポーズ?! 演技と分かっていてもめちゃくちゃ嬉しい! 萌える!

   さすが少女、男のツボを心得てやがる!)


少女「ねえ、どこに行く?」


少年「うーん、お昼にはちょっと早いし…

  (あ、あそこにあるのは…)

   じゃああそこで少しだけ時間つぶしてから公園とか行ってご飯食べようか」


少女「うん! 何か面白そうなところだね!」

  (少年、いきなりゲーセンか…しかもプリとかも無いアーケード中心の店じゃねーか…オレは嬉しいが…)


少年「そう? 少女さんこういうとこ来たことあるの?」


少女「うううん。ないけど、少年くんこういうところはよく知ってるの?」


少年「へへ、まあね///」


少女「えっ、じゃあ色々教えてね!」

  (おいおい、オレだからいいが、実戦だったらおまえもう死んでるぞ…)



-ゲームセンター-


少年「うーん、いろいろあるけど…。お、これなら初めての女の子でも楽しめるかな」


少女「わあ、面白そう!」

  (初めての女の子でもって…格ゲーじゃねえか…。大丈夫か、少年)


ゲーセンモブ1『チラチラ』

ゲーセンモブ2『チラチラ』

ゲーセンモブ3『チラチラ』


少年(やっぱり少女は注目を集めるな)

  「これはこっちとこっちで戦うんだけど…。やってみたほうが早いか」


少女「うんうん。ね、やって見せて!」


少年「お、おう。じゃあ…」


<少年プレイ中>


少年「ふう、こんな感じかな」


少女「面白い! わたしもやってみたい!」


少年「お! じゃあ2人でやることもできるから一緒にやろうか。やり方は今のでわかったよね」


少女「うん。じゃあ、真剣勝負だよ!」


少年「ははは。よし、俺も頑張るぞ!」


ゲーセンモブ1『あの可愛い娘、あのゲームやるのか』

ゲーセンモブ2『女の子で格ゲーやるなんて珍しい』

ゲーセンモブ3『くう、俺も一緒にやりたい』


ゲーム機『Are you ready? OK, FIGHT!!』



-数分後-


少年「くそっ! おっし!」


少女「オラ! っしゃあああ!」


少年「ちぃ! 負けたぁ!」


少女「どうだオラ! ははは!」


ゲーセンモブ1『うわぁ』

ゲーセンモブ2『うわぁ』

ゲーセンモブ3『うわぁ』


少女「あっ……」


少年「あっ……」


少女「…」


少年「…くく!」クスリ


少女「す、すまん…接待するつもりが自分が楽しんじまった…」キマズゲー


少年「ははは。いや、俺も楽しかったよ。もうデートとかじゃなくて普通に二人で遊ばないか?

   もう演技とかもいいしさ」


少女「すまねえ…。でもこのゲームは楽しかったよ。もう一回やりたいけど、先に飯食わないか?」


少年「ちょっと早いがいいな。じゃあ行こうぜ!」



-公園のはずれ-


少年「おお、このサンドイッチ豪華だな! うまそう!」


少女「おう。作ったのはお袋だけどな」


少年「そうだと思ったよ」


少女「おまえと遊びに行くって言ったら張り切ってな」


少年「あのお母さんだからな…目に浮かぶよ」


少女「それよりすまなかった。接待だのなんだの言ってこのありさまだ」


少年「気にするなって。さっきも言ったけど、普通に遊ぶんでも楽しいじゃん。

   それより、おまえの接待っていうか演技、すごいな。男のツボも押さえてるし」


少女「いや、本当は最初に腕くんだり手を繋いだりもしてやりたかったんだが…

   さすがにそれはいくらダチ相手でもキツかった…」


少年「無理すんなよ」


少女「なんかおまえと一緒だとつい地が出ちまうな」


少年「そりゃいつも俺とは地を出して話してるしな」


少女「いや、どうも色々と興奮してくると地が出ちまうみたいなんだ。興奮というか、我をわすれたとき?」


少年「ふうん」


少女「実はな、こんなオレでも彼女がいたことあんだよ」


少年「ええええ! 初めて聞いたぞ。マジかよ。カノジョって、女のカノジョってことだよな」


少女「彼女なんだから女に決まってるだろう」


少年「そらそうか。でもそんな子がいて良かったじゃないか」


少女「ああ。向こうから告られてしばらく付き合ってたんだけど、『少女さん男の子みたい』って言われて振られた」


少年「うーん、複雑だなあ」


少女「その子と付き合ってるとき、すごく楽しかったから、多分地が知らず知らず出てたんだろうな」


少年「そうか…(辛かったろうな)」


少女「だから、学校でもなるべく地が出ないよう大人しくしてるし、女子グループにも入ってない」


少年「ふうむ。俺もおまえの最初の印象は、物静かで孤独を愛する(クールビューティーな)大人しい子だったしな」


少女「孤独を愛するって…ボッチって言ってくれてもいいぞ」


少年「あ、いやいや! ボッチではないだろ。女子グループには入ってないけど、たまに他の女子とご飯食べたりしてんじゃん」


少女「まあたまにな。グループ内に他の女子が入ってくるのって嫌がられるかと思ったけど、結構大丈夫だな」


少年(それは少女がすごい美人だからでは…?)


少女「ま、それより早く飯食おうぜ」


少年「そうだな。いただきます!」パクリ「うま!」


少女「ほら、お茶もあるから…。で、この後どうする?」パクパク


少年「そうだな。本当は水族館とかも考えてたけど、とりあえずさっきのゲーセン戻るか」グビリ


少女「ああ! ちょっと主旨は変わっちまったが、今日は楽しもうぜ」


少年「おう!」


こうして少年と少女はその日デートを楽しむのだった



-ある日・少女の部屋-


少年「……」ペラリ


少女「……」ペラリ


少年「このマンガ、次のあったけ」


少女「あ、今度出るんだよ」


少年「ふうん…あっ」


少女「?」


少年「おまえ、見えてんぞ」


少女「おっと、失敬失敬」スカートナオシ


少年「…最初の頃は随分気にしてたのに」


少女「わりぃわりぃ」


少年「いや、悪くはないけど…(むしろありがとうございますだよ)」

少年(いわゆるボクサータイプで色気はないし少女のだけど、やっぱりちょっと、いや相当嬉しいな)


少女「ちょっと失礼」ガサゴソ


少年(目の前でジャージ履き始めるし)

少年「関係ないんだけどさ」


少女「ん?」


少年「その、おまえの身体のことだけど聞いていいかな」


少女「いやん!」ムネカクシ カラダヒネリ


少年「そんな仕草されたら色っぽくてしょうがねーじゃねえか!…あ、いやそうだな、不躾だったな」


少女「不躾って…まあなんでも聞いてくれよ。パンツの色以外だったら答えるぜ」


少年「それはさっき見たわ!」


少女「ははは。じゃあ乳首の色以外だったら答えるぜ」


少年「そ、そんな、おまえ乳首って…」///


少女「おまえ相変わらず猥談ダメだなー」


少年「猥談っていうか、おまえがそういうこと言うと生々しいんだよ!」


少女「まあまあ、何が聞きたいんだよ。お姉さんに言ってみ?」


少年「いや、この前ネットで見たんだけど、身体が完全に女でも内部っていうか内臓的には男ってパターンもあるらしいじゃん」


少女「オレに精巣、いや睾丸があるかって?」


少年「コ、コウガンって…(何で言い直した)」


少女「そんなんでおまえ保健の時間どうすんだよ」


少年「だからおまえが言うと生々しいんだって!」


少女「オレ普通に生理あるぜ」


少年「お、おう(生理とか言われるとどう答えていいかわからないな)」


少女「まあ実際検査したわけでもないけど、多分身体は完璧に女だな。おそらくホルモンとかも」


少年「そうか、おまえの見た目以外、本当に普通の男だからさ。

   いやでもすまん、こういうのっておまえにとってデリケートな問題だったよな…」


少女「いや、いいって。普通の男って言ってくれて嬉しいけどさ、こんな“変な男“なんだ。

   気になることはなんでも聞いてくれよ。陰毛の本数以外なら答えるぜ」


少年「い、陰毛って…どんどん下品になるじゃねーか!」///


少女「これでも抑えてるんだが」


少年「せめてそこはスリーサイズくらいにしろよ!」


少女「猥談レベルがオコサマか」


少年「…いや、やっぱりつい何か普通の女性とは違うんじゃないかって…いや、違うんだけど、

   女性ではないのかもって…っ…失礼だよな、こういうの。ごめん」


少女「だからいいって。こういうのがLGBTなのさ。…多分」


少年「…」


少女「まあでも、女で良かったって思うことも一つあるな」


少年「女湯に入れることか?」


少女「二つあるな」


少年「…」


少女「女湯や更衣室はもちろんなんだが、オレ運動オンチでさ。男で運痴はマズイだろ。

   でも女ならある程度は許容されるしな」


少年(俺、どっちかっつーと運痴なんだが…)

少年「でも、もし男になったら、男並みの運動神経になるんじゃないの?」


少女「オレ、女子の中でも体育の成績ドベに近い…」ナミダ


少年「良く知らなかったけどそうなんだ。まあでも確かに外見のイメージどおりっちゃあどおりか」


少女「でもさ、モテる女ってのはみんな運動神経いいんだよな…」


少年「? そういうのもあるけど、運動神経なくてもモテてるじゃん。例えばおまえ自身そうだろ」


少女「男にじゃねーよ。女にモテる奴のことさ。女子バレー部や女子バスケ部のエースの先輩とかめちゃモテだぞ」


少年「そういやキャーキャー言われてるひといるな」


少女「オレがアニメやゲーム、アイドルの話してもドン引きされるだけだ…」


少年「一部の男どもにはウケるだろうな」


少女「男にウケてもしょーがねー! くそう、モテたいぜ!」


少年「そりゃ俺もだ!」


そうして2人は、どうしたらモテるのか真剣に語り合うのだった。


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