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第14回

第7話・瑠菜 ルーカス(ルナ ルーカス)と古寺 佳奈(コデラ カナ)


**** 7-14 ****



「確かに、麻里…姉さんは、天野重工の開発部に勤めてますけど。お仕事の内容までは知らないので…そう言えば、ここ数年、ろくに実家にも帰って来てなかったんですけど。 そう言うお仕事、してたんですね。」


 維月は、そう所感を漏らすと、軽く息をいた。


「聞いた話だと、Ruby の開発は天野重工と三ツ橋電機、JED の三社協力でハードの設計をやって、ソフトの方は三社が独自に味付けをやってるらしいんだけど。三社とも進捗状況とか詳細は社外秘って協定で進めてる案件だそうだから、まぁ、ご家族が知らなくても不思議は無いと言うか、むしろ知ってたら大問題って言うか。発注元は政府らしいから、ある意味、国家機密級のプロジェクトの様なのよね。」


 そんな立花先生の発言に、真っ先に反応したのは直美である。


「そんな物騒な物が、どうして学校ここに有ったりするんですか?」


「噂だけど、他の二社はソフトの開発の方が、余り思わしくないらしいのよ。あなた達に Ruby の教育を手伝ってもらうってのは、天野重工うち独自のアプローチなんだけど、その発案者は井上主任らしいの。あと、こんな所に、国家機密級の開発物件が有るとは誰も思わないだろう、って言う目論見も有るのだそうだけど。まぁ、本当の所は、重役以上の人しか知らないだろうし、怖くて誰も本当の事何て聞けないわね。」


 続いて、恵が直美とは違う視点で、立花先生に問い掛ける。


「そこまで聞くと、その井上主任って相当に凄い人みたいですけど…井上さんのお姉さんって事だと、そこそこ若い人なんじゃ?」


 それには回答したのは維月だった。


「あ、うちは五人姉妹でして、わたしが一番下で、その麻里ねえが長女なんです。歳は、わたしとは一回り以上離れてますから。」


 維月の説明を聞いて、緒美が立花先生に問い掛ける。


「と言うことは、大体、先生と同年代?ですか。」


「年齢的には、わたしより一つ下だって。学年で言えば、同じらしいけど。」


「麻里ねえは二月生まれなので。」


「あれ、それじゃ先生と入社は同期なんじゃ…。」


 直美の素直な疑問に、立花先生は苦笑いをしつつ答えた。


「わたしは一般大学卒だけど、井上主任は、あなた達の先輩。天神ヶ﨑(ここ)の OG だから、会社的には、わたしの四年先輩なのよ。天神ヶ﨑(ここ)の特課の卒業生は、年下の先輩に…あなた達の側から言えば、年上の後輩や部下が出来る可能性が他社よそよりも高いから、まぁ、楽しみにと言うか、覚悟しておきなさい。」


 立花先生の眼鏡をクイッと上げる仕草に、二年生一同が引き気味の雰囲気が漂う中、樹里が普通のトーンで立花先生に問い掛ける。


「Ruby って可成り高機能は汎用 AI の様ですけど、そもそも、政府は何の為に Ruby を開発してるんですか?」


「それこそ、機密中の機密なんでしょ? 少なくとも、わたしは知らないし、Ruby 自身も知らないでしょ。ねぇ、Ruby。」


「ハイ。最終的な目的は、わたしも知らされていません。当面の仕事は、ここのセキュリティ管理と、近々納入される LMF に搭載されて、その機体管理を行う事です。」


「わたしは、大体見当が付きますけどね、政府の考えている事。」


 緒美は吐き捨てる様にそう言うと、静かに息をいた。


「緒美ちゃん、その見当って言うのが、当たっているにせよ、外れてるにせよ、どっちにしても誰にも言っちゃダメよ。」


「分かってます。それ程、迂闊うかつじゃありません。」


 緒美の返答は静かだったが、それであるが故に、怒りの様な、嘆きの様なニュアンスが、その場の全員に伝わった。無感情な素振そぶりをする事は有っても、緒美は、あからさまに不機嫌な態度を取る事は滅多に無かっただけに、緒美のその発言は、その場の雰囲気を重苦しくさせていた。

 自分のそばで立ったまま様子を見ていた、瑠菜と佳奈の所在無さな様子に気が付いて、直美は席を立ち、二人に声を掛ける。


「じゃ、わたし達は CAD 講習、今日の分を始めようか。」


 三人は隣の CAD 室へと向かうが、その場を離れる際に、佳奈が樹里に向かって、何時いつもの調子で言うのだった。


「じゃぁ、樹里リン。また、あとでね~。」


「あ、うん。」


 二人は、互いに胸の前で小さく手を振り合う。

 直美達三人が部屋の奥、北側のドアから部屋を出て行くのを見送って、恵は微笑んで言った。


「古寺さんのマイペース振りは、貴重ね。」


「はい。中学の時から、何て言うか…救われる様な気持ちになる時が有ります。一緒に居ると。」


 再び笑顔になり、緒美が口を開く。


「変な空気にしちゃって、ごめんなさいね。 さて、二人とも細々(こまごま)と説明しなくても、もう随分と理解して呉れてる雰囲気だから聞くけど。入部して、わたし達の活動に協力して頂けるかしら?」


 緒美の問い掛けに、最初に答えたのは樹里だった。


「正直言うと、兵器とかの開発に興味は無いんですけど。わたしは、将来的には Ruby の様な、汎用 AI の開発に参加したいって思ってたので、そう言った意味で、Ruby には凄く興味が有ります。ただ、それだけ高度な物に自分が付いて行けるかどうか、それは、ちょっと分かりませんし、自信も有りませんけど。」


「メカの方だって、実質的には本社の大人が設計してるの。わたし達はアイデアの取りまとめをやってるだけと言っても良いくらいだから、その辺りは心配しないで。」


「そう言う事でしたら、やってみたいと思います。」


「そう、良かったわ。井上さんはどうかしら?」


 樹里の協力を取り付けた緒美は、続いて維月に問い掛けるのだったが、当の維月はと言うと、何だか浮かない表情で黙っていた。

 そして、少し間を置いて、維月が口を開いた。


「申しわけありませんが…少し考えさせてください。」


「どうして?…って聞いてもいいかしら。」


「はぁ…身内が絡んでいる、となると…わたしは、余り関わらない方が良い様な気がして。もしもですけど、麻里ねえに迷惑が掛かったりすると嫌ですし…ただ、樹里さん一人だと作業的に大変になりそうでもあるので、入部はしないけど、樹里さんのアシスタント程度で良ければ関わらせてください。勿論、秘密保持に就いては入学時の誓約通り守りますから。」


「身内の事とは線を引いておきたい、と…分かる様な、分からない様な、だけど。うちの活動に参加すると、バイト料的な話も、有るんだけど?」


「いいです、お金とか。それ貰っちゃったら、それこそ線引きになりませんからっ。」


「どうしましょう?先生。」


 緒美は判断に困って、立花先生へ水を向けてみる。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。


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