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第11回

第6話・クラウディア・カルテッリエリ


**** 6-11 ****



 そんな調子で、昼休みも半ばを過ぎた頃。クラウディアと維月はそれぞれ昼食も食べ終わり、茜達と分かれて、先に学食を出て教室へと向かった。その途中、廊下を歩きながら、維月はクラウディアに言うのだった。


「天野さんとは、仲良くなれそうじゃない?」


「仲良くなる必要なんて無いわ。わたしは彼女に勝てれば、それで良いの。もっとも、向こうが仲良くしてくださいって言って来るなら、考えなくもないけど。」


 クラウディアは、そう言って笑う。


「そうやって、あなたが突っ掛かって行かなければ、さっきみたいに普通に受け入れてくれるわよ。折角せっかく、同じ部活になったんだから、わざわざ敵対する事もないでしょう?」


「対抗心は Motivationモチバッツィオンを維持するのに必要なのよ。」


「何?モチバ…あぁ、モチベーションね。ドイツ語だと、そう言う発音になるんだ。」


「モチベーション…カタカナで発音すると、そうなるんだったわね。発音にアクセントが無いのは、日本語の不思議の一つだわ。」


「あはは、あなたと話してると、色々と気付く事が有って面白いわ~クラウディア。」


 維月は隣を歩くクラウディアの頭を、右手で優しく撫でるだった。クラウディアはその手を払い除けて、言った。


「頭を撫でるのは止めて、イツキ。」


「あぁ、ごめん、ごめん。いやぁ、ちょうど良い高さだからさ、つい、ね。」


 そして、また「あはは」と維月は笑うのだった。



 一方、学食に残っていた茜達は、昼食後のお茶を飲みながらおしゃべりを続けていた。


「さっきの、クラウディアさん? ブリジットと何か有ったの?」


 事情を知らない九堂さんが、ブリジットに問い掛けた。


「別に、何か有ったわけじゃないけど。あんまり茜に、突っ掛かって来るからさ。だったら、こっちの態度も刺刺とげとげしくなるって物じゃない。」


「あぁ、それでか~ブリジットは天野さんラブだもんね。」


 ブリジットの回答に、笑いながら村上さんが、そう言った。

 そして今度は茜に、九堂さんが尋ねる。


「入学式のあとの時もだけど、どうしてあの子は天野さんに?」


「入試の成績で、わたしに負けたのが悔しいんだって。」


「へぇ~、成績良いのも、考え物ね~。」


 茜が理事長の孫で、入試の成績がトップだったと言う事実は、この頃には全校に知れ渡っていたのである。話の出所は定かではないが、一年生達は上級生から伝え聞いたと言う事だけは判明していた。

 九堂さんの反応を受け、ブリジットが呆れた様に、補足を加える。


「それで、今度の中間試験で茜に勝ってみせるって息巻いてるわ。」


「学科が違うのに、勝つも負けるも無いわよねぇ。」


 と、感想を漏らす茜に、村上さんが意外な事を言い出す。


「そうでもないわよ。中間と期末の試験成績は、学科関係無しに各教科の総得点順で、各学年ごとに上位三十名の名前は発表されるって聞いた、先輩から。」


「えっ、何それ?」


 思わず、茜が聞き返すと、それに対して、九堂さんが所感を述べる。


「天野さんは、そう言うタイプじゃないけど、あの子みたいに、そう言う理由で燃えるタイプもいるからじゃない? 成績上位者には、何だか特典も有るって話も聞いたけど、まぁ、わたしや敦実には、縁の無いお話よね~。」


「あはは、そうそう。」


「入試でトップだって言っても、入試を受けてない、推薦枠で入学した人も居るんだし。中間試験でわたしが上位に行けるとは限らないでしょ。だから、わたしにも関係無いわ。」


 九堂さんと村上さんに、そう言って笑う茜だったが、向かいに座っているブリジットは、浮かない表情で言った。


「取り敢えず、わたしは上位なんて望まないから、赤点だけは回避しないと。」


「あなたは、二つも部活を掛け持ちしてるからよ。」


 溜息をくブリジットに、容赦なく突っ込む九堂さんである。


「わたしも付き合うから、今日も試験範囲の復習、頑張りましょう。」


「迷惑掛けるわねぇ、茜~。」


「ブリジット、天野さんに教えて貰ってるの!?」


 村上さんが少し驚いた様に、そう言い、更に茜に尋ねる。


「今日の教科は?」


「数学か物理、だけど?」


 その答えを聞いた村上さんは、目を輝かせて茜に頼み込むのだった。


「ねぇ、わたしも一緒に教えて貰えないかな?」


「え、あぁ、ブリジットが良ければ、いいけど。」


 村上さんは、ブリジットの方へ向き直り、胸の前で両手を合わせて言う。


「いい?ブリジット、お願い。」


「あ…うん。構わないけど。」


 村上さんの語気に押される様にブリジットが承諾すると、そこに九堂さんが割り込んで来るのである。


「あ~敦実だけずるいっ!わたしも一緒にお願い出来ない?」


「いいけど、四人も入ったら狭いわよ、部屋。」


 女子寮の部屋の、快適性に就いて釘を刺す茜である。


「大丈夫、大丈夫。四人だったら入れるって。よし、じゃあお菓子とか飲み物は、わたしと敦実が持参するから。」


「ちょっと、真面目に勉強する気、有る?」


 今度は、勉強に対する態度に就いて釘を刺す茜である。更に、ブリジットが言葉を続ける。


「それに、試験勉強は夕食のあと、よ。」


「お菓子は別腹よ、決まってるじゃない。それに、わたしは頭を使うと、口寂しくなるのよね。」


 透かさず返された九堂さんの発言に、茜とブリジットは顔を見合わせ、笑った。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



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