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第8回

第6話・クラウディア・カルテッリエリ


**** 6-08 ****



 解散となった時刻には、既に昼休みになっていた。その為、中断した四時限目の授業は、そのまま終了、各自は昼食へ、と言う運びである。

 西本さん達、普通課程組の多くは教室でお弁当なので、寮生活で弁当持参でない茜達、特別課程組は普通課程組とはそこで別れ、茜達はそのまま学食へと向かったのだった。A組とB組の特別課程の生徒は共に機械工学科であり、その女子生徒は合計十五名である。その中で、それぞれが仲の良い三、四人のグループに自然と分かれて、学食へと向かっていた。

 この時の茜のグループは四人で、その一人は勿論ブリジット、もう一人は村上さんと言う眼鏡を掛けた、温和おとなしそうな少女、あと一人が九堂さんで、こちらは村上さんとは対照的な、快活な印象の少女である。

 村上さんは所謂いわゆる「飛行機オタク」で、取り分け戦闘機に興味を持っていた。彼女は幼少期からの飛行機好きなのだが、本人いわく「ひどい高所恐怖症」なのだそうだ。それ故、パイロットではなく飛行機を設計したり、整備する方向を目指しているのである。だから、卒業後の天野重工では、防衛装備事業の航空機部門への配属を希望していた。村上さんは飛行機好きと言う事から、当然、部活としては飛行機部を選んでいた。普通、飛行機部に入部するのは、グライダーやモーター・グライダーの操縦に興味を持つ人なのだが、村上さんの場合は「ひどい高所恐怖症」であるが故、操縦には関心は無く、始めから整備や地上要員グラウンド・クルー志望で入部したのだった。整備や地上要員グラウンド・クルー志望と言う人材は、飛行機部部員としては少数派だったので、彼女の入部は、先輩達に非常に歓迎されたのだった。

 茜も、大きなくくりで言えば「兵器オタク」であり、その点で村上さんとは話が合うのだったが、この二人が兵器関連に就いて語り合いを始めると、ブリジットが一人置き去りにされてしまうと言う事象が間間まま、起きるのである。そんな時、ブリジットの相手をしてくれるのが九堂さんなのだった。

 九堂さんは、茜や村上さんとは違って兵器に就いては特段の興味は無く、一般産業向けの機械設計技術者を志向している。その辺りはブリジットも同様で、特定の産業や業種にこだわってはいないので、将来のヴィジョンに関して特別明確な目標を持っているわけではない。しかし、そんな彼女の方が実際は多数派であって、茜の「パワード・スーツ開発」や、村上さんの「戦闘機設計技術者」等の様に、明確な目標を持っている者の方が少数派なのである。勿論、れだけ明確な目標を持っていたとしても、将来、天野重工に入社して希望通りの職種に就けるか、それに保証などは無い。

 ともあれ、この四人には特別に共通した趣味や興味が有るわけで無く、茜とブリジットとの繋がりは別としても、四人の関係は、何となく「馬が合う」程度の緩い繋がりだったのだが、それが心地良い関係でもあったのだ。


 四人は学食へ入ると、注文カウンターの端末でそれぞれが好みのメニューをオーダーし、携帯端末で支払いを済ませた。


 彼女達がそれぞれに所有している携帯端末には決済機能が組み込まれており、大概の買い物はこれで用が足りる。携帯端末は決済機能の他に通話、データ通信やネット検索等、幾つもの機能を設定可能なのだが、厳密に言えば、携帯端末にこれらの機能が組み込まれているのではない。携帯端末は契約したサービスを呼び出して、データの仲介だけをしているのである。つまり、携帯端末がアプリケーションや各種データを保持しているわけではない。メールや画像などのデータも、契約したサービスのサーバーに保存されているので、携帯端末に保持されているのは、のサービスと契約しているかの情報のみである。

 携帯端末は、ユーザーが勝手にゲームなどのアプリケーションを追加したり出来ない仕組みなので、学生や児童向けとしては定着したデバイスとなっており、又、煩雑はんざつなアプリケーションの管理が煩わしいと思う多くの人達に支持されている。


 茜達は、それぞれがオーダーしたメニューが乗せられたトレーを受け取ると、空いたテーブルを探す。時間的に、まとまった席が空いているテーブルは少なかったのだが、茜は四人分の空席を見付けると、直ぐにそこへと向かった。

 茜の行く先に気が付いたブリジットは、そのテーブルにクラウディアと維月が居る事に気が付き、茜を呼び止めたのだが、茜は歩みを止めなかった。


「あ、アマノ アカネ。」


 クラウディアが茜に気が付き、声を漏らす。


「ここ、空いてる?」


 茜の呼び掛けをクラウディアが無視するので、維月が答える。


「どうぞ、空いてるよ。天野さん。」


「あなたが居るって事は、あのノッポも一緒ね。」


 クラウディアは横目でちらっと茜を見ると、そう言った。そこへ、ブリジットが九堂さん、村上さんと共に、そのテーブルへとやって来る。


「一緒に居て悪かったわね。」


「ご一緒させてくださいね、維月さん。」


 六人席のテーブルの端側に、維月とクラウディアは向かい合って席に着いており、茜はクラウディアの隣の席に座った。


「どうぞ、どうぞ。ほら、他のみんなも座って。」


 ほがらかな口調の維月の勧めで、ブリジットは維月の隣に、九堂さんはブリジットの隣に、村上さんは茜の隣の席に、それぞれが座ったのだった。

 皆が席に着いて直ぐ、クラウディアとブリジットは、お互いのランチ・メニューが同じパスタだった事に気が付き、何だか気まずい表情に変わった。そして、クラウディアが先に、ブリジットへの皮肉を発する。


「あなたは、ハンバーガーじゃないの?」


 そう言われて、ブリジットはムッとして言い返す。


「あなたこそ、ジャガイモとソーセージでも食べてれば。ついでにビールでも飲む?」


 その遣り取りを聞いて、茜は呆れて言った。


「もう、二人とも。いい加減、その、お国柄コントは止めて。 大体、未成年はビール飲んじゃダメでしょ。」


「あ、天野さん。最後の突っ込みは要らないから。」


 そう言って、維月は笑うのだったが、事情の分からない村上さんと九堂さんは、流石にその険悪な雰囲気に引いていた。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



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