表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/285

第7回

第6話・クラウディア・カルテッリエリ


**** 6-07 ****



「そう言えば、ここは町の方にも、シェルターは余り無いの?」


 茜は西本さんに、地元の事情を聞いてみる。


「市役所の駐車場の地下と、中央公園くらいじゃない?シェルターが出来てるのって。一般の会社とか住宅で、シェルター付きなんて聞いた事無いし。まぁ、田舎だからね~今までエイリアンのが飛んで来た事も無いしさ。」


「でも、陸上防衛軍の基地とか、町外れに有るのよね?」


 今度はブリジットが問い掛ける。


「演習場よ。所謂いわゆる、基地って感じじゃなくって、ただの原っぱらしいし。だからエイリアンは狙って来ないだろうって、うちの親とか、そう言ってる。」


「矢っ張り、地域で随分、差が有るのね。」


 中学時代の感覚を忘れていたのも無理は無い、と、そう思う茜とブリジットの二人だった。


「さっき、教室でさ、男女別に分かれるように言われて、ちょっと、えっ、て思ったんだけど。ここに来て納得って、思ったわ。」


「どうして?」


 唐突に西本さんが、話題の方向性を変えて話し出すので、茜が聞き返した。


「だって、この狭い感じだと、男子達と一緒に入るの、何か嫌じゃない?」


「あぁ~まぁ、確かに。」


 西本さんの意見に、茜とブリジットは「言われてみれば」と同意し、クスクスと笑う三人だった。


 それから十五分程して、今度は生徒会の女子役員がシェルター内の人数確認に訪れた。


「現在、人数の集計をやっています。訓練終了の放送が有るまで、ここで待機しててください。」


 人数確認を終えると、女子役員はそう言い残して立ち去ったのだった。

 茜はポケットから自分の携帯端末を取り出し、時刻を確認する。


「もうすぐ、お昼になるのね。」


 隣に居たブリジットが、茜が携帯端末を取り出したのを目に留め、声を掛ける。


「ここって、電波、入ってるの?」


「ううん、この中はダメみたいね。通路に出たら、通信出来るエリアが有るのかな。」


 その、二人の会話に気が付いた西本さんが、茜に話し掛ける。


「あぁ、トイレの前あたりの通路だと、電波が入るみたいよ。さっき行った時に、何人か端末を弄ってる子を見かけたわ。」


「あぁ、そうなんだ。」


「ニュースでも見るの?天野さん。」


「違う違う。時間を確認しただけ。一応、授業時間中だから携帯弄ってるのマズイでしょ、ホントは。」


 茜は、携帯端末をポケットに仕舞った。


「天野さんは真面目よねぇ。」


 そう言って、西本さんは笑うのだった。

 それから程無くして、シェルター内に生徒会の放送が始まると、それまでざわついていたシェルター内が、急に静まり返るのだった。


「避難人員の集計、確認が完了しました。今回は確認完了まで、所要時間は三十一分二十一秒でした。過去の最短記録は十八分三十二秒です。次回訓練では記録更新出来るよう、全校生徒の協力をお願いします。以上を持って、今回の避難訓練を終了しますが、シェルターからの退出時は通路が混雑するので、押し合わない様、注意してください。シェルターは全員退出後、閉鎖、施錠されますので、全員、自警部担当者の誘導に従って退出し、シェルター内部に残らないでください。誘導担当の自警部部員が到着するまで、各自、シェルターからは勝手に出ないように、お願いします。以上、放送を終わります。」


 放送が終わると、再び、シェルター内はざわめき始める。放送を聞く為に中断したおしゃべりを再開する者、訓練が終わっても直ぐにシェルターから出られない事に不平を口にする者、四時限目の授業が潰れた事を喜ぶ者など、内容は様々だったが、総じて混乱した状況では無い種類の「たわいの無い」ざわめきである。

 そうこうする内、誘導担当の自警部部員が到着したが、それは教室からこのシェルターまでの誘導を担当した女子自警部部員だった。


「一年AB女子、四十六名。全員揃ってる?トイレとか行ってる人はいないわね。」


 その女子自警部部員はそう言って人数を確認すると訓練本部へ連絡をし、茜達の退出の誘導を開始した。


「はぁい、じゃ、みんな通路へ出て。一階廊下に出るまでは付いて来てね。一階に出たら、そこで解散していいから。」


 茜達は再び、校舎へ繋がる地下通路を歩き出す。茜は列の先頭付近にいたので、自分たちのグループの前を歩いている別グループの後端が見えた。恐らく、一年C組とD組の女子だろうと思った茜だったが、だとすればD組のクラウディアと維月がいるはずだが、茜には二人の姿は見付けられなかった。クラウディアは列の先頭の方にいるのかも知れない、そう茜は思った。一際背の高い維月ぐらい、列の後ろからでも分かりそうな物だが、前方のグループには飛び抜けて背の高い姿は見受けられなかったので、或いは、前のグループは一年C組とD組ではなかったのかも知れない。

 黙々と通路を進んでいる内に、ふと、気になった事を、茜は誘導担当自警部部員の上級生に質問してみた。


「あの、ちょっと聞いていいですか?」


「何?どうぞ。」


「さっきの放送で、避難に掛かった時間が三十一分とかって言ってたんですけど。今回は普段よりも特別、時間が掛かってたんですか?」


「あぁ、あれね。毎年、最初の避難訓練は時間が余計に掛かるのよ。不慣れな一年生が参加してるのと、運営してる側は、慣れた人が卒業したあとだから。毎年、回を追うごとに段々タイムが上がっていくから、今回が特別、出来が悪かったっていうことじゃないわ。」


「成る程、そう言う事ですか。ありがとうございます。」


「どういたしまして。」


 間も無く一同は一階廊下に到着し、そこでようやく解散となったのである。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ