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第14回(第5話・終回)

第5話・ブリジット・ボードレール


**** 5-14 ****



 そんな折、実松課長と畑中の二人が、進み出て来て緒美に声を掛ける。


「部長さん、取り込み中の所を悪いんだが…。」


「そろそろ、日も暮れるし、わたし達はこの辺りで引き上げます。」


「HDG 本体と、スラスター・ユニットが稼働する所にも立ち会えたし、B号機のテスト・ドライバーも決まりそうな雰囲気だし。本社の方へは良い報告が出来そうだ。」


「新しいヘッド・ギアは持ち帰って、修正が出来次第、又、送る事になるから。」


「はい、宜しくお願いします。」


 実松課長と畑中に、緒美が会釈して答えた。


「立花先生の方は、小峰君か影山部長に、何か伝言とか有るかい?」


「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」


「そうか、じゃぁ、お先に上がらせて貰うよ。出ようか、畑中君。」


「はい。 では、お先に。」


 二人は第三格納庫の大扉、西側の前に駐めてある大型トランスポーターへと向かって歩き出す。


「師匠~、帰り道、気をつけて~。」


「畑中先輩、安全運転で宜しくお願いしますよ~。」


 佳奈と瑠菜が、トランスポーターへと向かう二人に声を掛けると、二人共が一度振り向き、笑顔で手を振って見せた。

 そして、トランスポーターへと乗り込むと、エンジンを始動しヘッドライトを点灯させ、畑中の運転でゆっくりと前へと進み出す。トランスポーターは駐機場を東へと進み、見送る一同の前を通過して、学校の裏口に当たる貨物搬入門へと向かった。


「そう言えば、あのおじさん達は?」


 一人、事情を知らないブリジットが、茜に尋ねる。


「本社、開発部設計課の課長さんと、若い方の人が試作部の人よ。HDG の設計も試作も、本社に協力をして貰ってるの。」


 茜がブリジットに解説をしていると、緒美が言った。


「取り敢えず、天野さん。今日のテストはこれで切り上げましょう。メンテナンス・リグに HDG を戻して来て。その後、明日からのテスト・プランを練り直しましょう。」


「そうね、A型であれだけ飛行出来るとなると、テスト項目を考え直さなくっちゃ、だわ。燃料の消費量とか、どうなってるのかしらね?」


 と、立花先生も、腕組みをして考えている。


「取り敢えず、装備を降ろしてきます。」


 茜が格納庫内部へと歩き出すと、佳奈が準備の為にメンテナンス・リグへと先回りするべく、走り出すのだった。


「あなたも、打ち合わせに参加していきなさい。」


 緒美も茜の後に付いて、格納庫の奥へと進んで行きつつ、ブリジットに声を掛けた。


「えっ、わたしまだ、部外者ですよ。」


 その返事を聞いた緒美は、くすりと笑い、言った。


「天野さんがこの部活を辞める気が無くて、あなたが天野さんを心配してるなら、選択肢は無いと思うけど。」


「違いない。」


 直美も笑って、緒美の意見に同意するのだった。


「あぁ、そうだ。Ruby、もう、おしゃべりしても、いいわよ。」


 と、突然、緒美が Ruby に発言の許可を出すのだった。部外者が居る際に、Ruby が発言を控えているのは恒例なのだが、勿論、そんな事情をブリジットは知らない。


「宜しいですか?緒美。」


 突然、どこからか聞こえて来た女性の合成音に、ブリジットは戸惑うのだった。


「誰ですか?今の声。」


「こんにちは、ブリジット。わたしは Ruby です。」


 Ruby に話し掛けられて、更にブリジットは困惑する。そこで、Ruby に就いて、恵がブリジットに解説をする。


「Ruby は LMF…あの中に搭載されている AI なんだけど、この格納庫の中で起きてる事は、ほぼ把握してるわよ。」


「ハイ、ご説明ありがとうございます、恵。先程は茜に就いて、興味深いお話を聞かせて頂ました。ありがとう、ブリジット。」


 この Ruby の発言に、直美が笑いながら突っ込みを入れる。。


「盗み聞きとは、感心しないよ~Ruby。」


「あら、どんなお話かしら?わたしも興味が有るわね。」


 と、今度は緒美が軽口を挟む。


「幾ら緒美が相手でも、他人のプライバシーに関する情報は、軽々に口外はしないよう、プログラムされています。それに、直美。セキュリティの為に高感度なセンサーが取り付けられている都合上、聞こえてしまう物は仕方がありません。」


「そうね、確かに。」


 笑って、恵が Ruby に同意するのだった。


「あ、所で、Ruby の事も、本社の重要な秘密事項だから。気を付けてね。」


 緒美は、そうブリジットに告げて、ニヤリと笑う。皆と一緒に、格納庫奥の階段へと向かって歩いていたブリジットは、一人、歩みを止めて、少し大きな声で抗議した。


「そんなの、卑怯です!」


 ハッと気が付いた様にブリジットは、HDG から抜け出し、ステップラダーから降りて来た茜の方に振り向き、言った。


「分かったわ、茜、あなたも、こんな風に騙されて、秘密保持って言われて、無理矢理、抜けられない様にされたのね!」


「違う、違う。」


 茜は両手を胸の前で大きく振って、慌てて否定した。

 そして、最後に茜から一言。


「もう、皆さん、ブリジットをからかうのは、いい加減、止めてくださいっ!」



 結局、本人としては、少々不本意な形ではあるが、この様な経緯で、ブリジットの兵器開発部への入部が決まったのだった。

 女子バスケ部との掛け持ちの件に就いては、後日、約束通りに直美の働き掛けに因って、話はまとまったのだが、「週三日の朝練には、必ず参加する事」、「放課後の部活に就いても、週に一回以上は参加する事」と言う条件で、合意に至った様子である。

 ブリジットの兵器開発部に対する諸々(もろもろ)の誤解は、立花先生に因る懇切丁寧な事情の説明にて、後日、ようやく氷解する事となるのだった。その後、HDG に関するレクチャーが緒美や茜に因って行われ、ブリジットが実施するべく、B型のテスト・ドライブの準備が進められていく事になる。一方で、B型実機の完成までの間、今まで、直美が担当していた LMF のテスト・ドライブは、ブリジットが担当する事になったのだった。

 入部に就いての経緯いきさつや、部活での役割はともあれ、茜と共に同じ活動に参加出来る事に就いて言えば、それは満更でもないブリジットなのであった。




- 第5話・了 -




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



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