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第13回

第4話・立花 智子(タチバナ トモコ)


**** 4-13 ****



「わたしは妥当だと、思っています。エイリアン・ドローンとわたし達の装備とでは、根本的に運用の思想が違いますから。それが、現在のわたし達の損害に繋がっていると分析しています。」


「運用思想の違い…具体的には?」


「例えば、わたし達の装備では、距離を取って撃ち合うのが基本ですが、エイリアン・ドローンは相手に取り付いての物理攻撃、所謂いわゆる、斬撃が基本です。普通に考えれば、距離の有る内に、先に攻撃出来る方が有利に思えますが、それは弾丸なりミサイルなりが命中する事が前提です。それらが回避されて相手の間合いまで接近されたならば、超接近戦、格闘戦の出来ない此方こちらが著しく不利になります。 実際、例えば戦闘機の装備する空対空ミサイルは、エイリアン・ドローンに対して命中率が三割に届いていません。敵方が無人機であるが故でしょうか、機動力で回避されるケースが非常に多いのが現実です。 エイリアン・ドローンの大多数である『トライアングル』が飛び道具を装備していないのは、遠征用の兵器として、極力、補給を必要としない思想だからだと考えられます。機銃やミサイル装備だと、弾切れになると攻撃が出来なくなりますが、『トライアングル』の様に格闘戦での斬撃や噛み砕きと言った攻撃方法ならば、弾切れの心配や補給の必要がありません。行動が可能である限り、攻撃を続けられる反面、近距離での格闘戦は同種の機動兵器同士であれば自身が損害を受けるリスクも高まるはずなんですが、そこは機体を『使い捨て』と割り切る事でリスクを低下させているのだと考えられます。但し、わたし達の装備が相手の場合、近距離での格闘戦では反撃されるリスクがむしろ下がるので、此方こちらの損害の方が多くなります。わたし達の装備で此方こちらが損害を受けるリスクを回避する為には、エイリアン・ドローンを遠距離で捕捉した上で、命中率の低さを補う為に大量のミサイルで迎撃する事になりますが、これでは、ミサイルが高価な装備であるが故に、経済的な負担が大きくなります。 以上の考察から、導き出されるエイリアン・ドローンに対抗する装備の方向性は三つ。ず、エイリアン・ドローンと同種の格闘戦用ドローン。次に、戦闘機であれ、戦車であれ、有人機ですが接近戦や格闘戦でも反撃の出来る機体。最後が、エイリアン・ドローンに取り付かれない程度のサイズの機体。あ、もう一つ加えるならば、ロー・コストのミサイル、しくは、非常に命中率の高い高機動型のミサイルを開発すると言う事になりますが、ミサイルに就いては現在も改良、開発が続けられているので、これは敢えて取り上げる必要は無いでしょう。」


 ここまで一気に話して、智子は一息をいた。そこで発言をしたのは、開発部の大沼部長である。


「最初の方向性、同種のドローンってのは、技術的に難しいな。」


 それを受けて、答えたのは事業統括部の飯田部長。


「いや、アメリカやドイツ、フランスなんかは、その方向で開発を進めてるって話だろう?」


 そして、企画部の影山部長が発言した。


「一番進んでるのはアメリカだが、それでもおとりに使うのがやっとだそうだ。ドイツやフランスのは、テストも、まだ始まってない。」


「二番目の、格闘戦で反撃出来る戦車とか、戦闘機となると…ちょっと、想像出来ないよなぁ。」


 困った様にうなったのは、開発部の大沼部長である。そして、片山社長は智子の解説に納得する様にうなずき、言った。


「成る程、パワード・スーツは三番目の、取り付かれない程度のサイズの機体、と言う事か。確かに、自分より小さい物への物理攻撃は、やり難いだろうからな。」


「はい。ですから、防衛軍がパワード・スーツに着目して開発の可能性を探ろうとした所までは、妥当な判断だと思います。問題は、どの様な形態で、どう運用するか、なんですが。その部分の考察が、防衛軍やわたし達の検討チームと、鬼塚さんのレポートの、一番の違いなんです。鬼塚さんのアイデアは、より具体的でビジョンが明確であると言えます。 その点に関して、わたしは社長や部長の御意見をうかがいたいのですが、如何いかがでしょうか?」


 その、智子の問い掛けに答えたのは、影山部長だった。


「その点に関しては、午前中に話し合っていたのだが。我々もキミと同感だ、と言っていいだろう。それで、キミはこのあとを、どう進めたいと考えているかな?」


「はい。わたしはこのレポートの内容が、当社の技術でどこまで実現出来るのか、それを見極めたいと、出来れば試作まで。」


 智子の提案を聞いた一同は、声も出さずに顔を見合わせた。

 そして、開発部の大沼部長が、ず口を開いた。


「レポートの結論では、二百項目からの開発テーマが挙げられているが、これを一から?」


「それは、鬼塚さんに技術についての知識が無いから、そう言う結論になっているだけで。大沼部長も、彼女が挙げている開発項目の多くが、当社の保有技術で実現出来る可能性が有る事にお気付きと思いますが?」


 智子の言葉に、大沼部長は答えはしなかったが、ニヤリと笑って見せたのだった。そして、次に発言したのは事業統括部の飯田部長である。


「開発設計をやるにしても、あのレポートの内容だけでは不十分だろう。あれには概論しか書かれていない。」


「はい。設計仕様にするには、まだまだ細かい検討が必要なのは、わたしも解っています。」


「その作業から本社側に引き取れ、と?」


「いえ、仕様設計の作業は、わたしは鬼塚さんにやらせたいと思っています。」


 その遣り取りを聞いていた、影山部長が口を挟む。


「おいおい、立花君。技術的に素人の高校一年生に、そこまで望むのは酷じゃないかね?」


「ですが、この段階で彼女の研究成果と言うかアイデアを、会社が取り上げてしまうのは得策ではないと、思います。設計仕様を詰めていけば、問題点は幾つも出て来ると思われますが、それをクリアするのに、鬼塚さんの柔軟な思考が必要になる事は、有ると思います。いえ、彼女じゃないとクリア出来いないかも知れません。」


「随分と彼女のセンスを買っている様子だが、では、技術的な知識や経験の不足分をどう補って、彼女に仕様設計をやらせる気だ?」


「そこで、提案したいのですが。鬼塚さんに、我が社の『技術データベース』への、アクセス許可を頂きたいんです。」


 智子の提案を聞いた一同は、一瞬、声を呑んだ。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



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