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第5回

第3話・Ruby(ルビィ)・1


**** 3-05 ****



「接続完了。システム、異常有りません。」


 茜の報告を聞いて、佳奈がステップラダーを HDG の前から退けると、メンテナンス・リグのコンソール側から瑠菜が声を掛けて来る。


「じゃ、降ろすよ~。」


 瑠菜がコンソールを操作すると、宙に浮いている状態だった HDG が床面に降ろされ、接続部のロックが解放された。その時、茜の身体には、メンテナンス・リグとの接続から開放された、軽い反動が伝わって来たのだった。

 茜は HDG を装着した状態で自立していたが、腕や背中に接続されている筈の、各パーツの重さを感じない感覚が不思議だった。


「どう?どこか、痛い所とかは無い? 腰のリング…お腹は苦しくない?」


 ず、緒美が問い掛けて来た。


「いえ、腰のリングは大丈夫です。身体に負荷は…特に無いですね。ちょっと、不思議な感覚です。」


「それじゃ、天野さん。ずは動作範囲の設定から、やっていきましょうか。」


 樹里はコンソールのモニターを確認しながら、茜に指示を出した。


「ゆっくり動いた時の、各関節の動作最大値が高速で動いた時の限界値になるから。ずは、しゃがんでみてちょうだい。ゆっくりね。」


「こう、ですか。」


 樹里に指示された通りに、茜はその場にゆっくりとしゃがみ込んでいく。


「そうそう…上手くバランスが取れるかも、同時にチェックしてるから。転ばない様に、気を付けてね。」


「はい…あ、流石に正座が出来る程までには、膝が曲がりませんね。足の間に脚ブロックが挟まるから…。」


 膝から下には HDG の脚パーツが接続されているので、膝を完全には折り曲げられないのだ。


「あぁ、無理はしないで。じゃ、そこから立てる?」


「はい、出来ます。」


 茜は膝を曲げて腰を落とした姿勢から、しゃがむ時に比べて、やや早目に、すっと、立ち上がった。


「次は、右脚を上げて、左脚だけで立てるか、やってみて。」


「こんな感じですか?」


 茜は右膝を前に突き出す様に軽く曲げ、右脚を床面から持ち上げてバランスを取ってみせる。


「右脚、膝を伸ばして、前へ高く上げられる?」


「やってみます。」


 樹里に言われた通り、茜はバランスを取りながら、右脚を前へとゆっくり上げていった。


「じゃ、右脚を横へ開いて…Y字バランス…まではしなくていいから、Tの字ぐらいな感じで。…はい、いいわ。そのまま後ろへ…ゆっくりね…そう、上体を前に倒して…はい、オーケー。じゃ、同じ動きを今度は左脚で。」


 茜は右脚を上げて行った一連の動作を、同じ様に左脚で再現した。この一連の動作で、左右の脚の限界可動域が HDG 側に設定されたのである。


「次は上体の動作域ね。先ずは右に振り向く様に上体をひねって…あ、苦しくない程度でね…はい。今度は左へ。」


 指示されるままに、右、左へと上体をゆっくりとひねっていくが、重さや硬さ、抵抗等は特に感じない。


「今度は上体前屈…そう、バランスに気を付けてね…はい。身体を起こしたら、そのまま後ろへ反らして…はい、無理はしないで、いいよ。 次は、横へ。先ずは右へ…はい。戻したら、そのまま、左へ…はい、オーケー。」


「ふう…何だか、ラジオ体操みたいですね。」


 既に百年を超える歴史を持つ『ラジオ体操』はこの時代に於いても、いまだ健在である。


「最後、腕の可動域ね。これもラジオ体操っぽいけど。両腕を横へ上げて…そのまま上へ…はい、上から前へ下ろして…そのまま、後ろまで…そこから、また横へ。はい、じゃ、肘を曲げて…目一杯ね。曲げた状態で、肩から腕をひねって…戻して…肘を伸ばして…掌が上になる様にひねって…今度は掌が後ろに向くまでひねって…そう、親指が下になる様に…はい。これで腕の可動範囲も設定完了の筈よ。ちょっとずつスピードを上げながら、腕を動かしてみて、天野さん。こんな感じで。」


 右腕を胸の高さぐらいに上げた樹里は、肘を直角に曲げ、上腕をひねる様な動きをしてみせる。茜は同じ様に、右腕を軽く上げて、最初はゆっくりと腕を振ってみた。勿論、先程と変わりはない。段々とスピードを上げて同じ動作を繰り返していくが、特に違和感は無かった。


「余り、変わった様な気はしませんけど…。」


 その返事を聞いた緒美は、ニッコリと笑って言った。


「それで正解なのよ。腕パーツの分だけ、慣性は大きくなるから、本来なら腕の動きを止める時に普通よりも大きな力が必要なはずでしょ? それが感じられないと言う事は、動作範囲の限界前に、ちゃんとブレーキが掛かっているって言う事。その制御が効かなかったら、筋肉か関節を痛めるか、最悪、骨折するかも知れないんだから。」


「理屈としては解るんですけど、こうスムーズだと、却って実感が湧かないですね。」


 試作一号機にしては完成度が高すぎる事が、茜に取っては腑に落ちない所なのだった。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



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