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第6回

第2話・鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)と新島 直美(ニイジマ ナオミ)


**** 2-06 ****



「そんなの単純よ。わたし達は、あなたのセンスに期待しているの。」


「期待、ですか。」


「勘違いしないで。仕事を丸投げして、責任を全部押し付けようって話じゃないのよ。あなたは、まだ学生なんだから、責任は大人が持つの、当然よ。あなたの柔軟な思考で、アイデアを具体化する方策を練って欲しいのよ。具体化する作業はワン・ステップずつ、費用と効果を勘案して次へ進むかどうか、本社側が考えるわ。効果が見込めない様なら、計画は中断されるし、例えば試作に失敗したからって、あなたに責任を取れなんて、迫ったりしないわよ。安心して。」


「それは有り難い申し出だと思いますが、本社の技術を、わたしはどうやって知ればいいんですか?」


 待ってましたと言わんばかりに、立花先生は長机の上に置いてあったバッグから、一つのメモリー・デバイスを取り出して、言った。


「それで、これを鬼塚さんに預けようと思うの。本社の『技術データベース』にアクセス出来る、メモリーキー。」


「…技術データベース、ですか。」


「本来は社外からはアクセス禁止なんだけど、この学校の、この部屋の回線からのみ、このメモリーキーを挿した端末から、パスワードを入力したらアクセス出来る様に仕掛けがしてあるわ。勿論、閲覧は厳重注意で、内容を外部に漏らす事は厳禁だけど。『特課』の生徒なら、その辺りの事は入学時に誓約した通りよ。」


「なんだか…物騒なお話になってきましたね。」


 緒美はちょっと身を引いて、作り笑いを浮かべている。立花先生はニッコリと笑って、言った。


「でしょう。鬼塚さんにやる気が有るなら、これをあなたに預けるわ。勿論、無理強むりじいはしないけど。」


「先生は、わたしが断る可能性は考えてました?」


 意地の悪そうな表情を作り、敢えて緒美は聞いてみた。


「20パーセント、くらいかな。」


「八割方引き受けると? どうしてですか?」


「だって、断るくらいなら、そもそも、あんな研究レポートなんて書かないでしょう?」


 緒美は口元に笑みを浮かべ、掌を上にして、立花先生へ右手を差し出す。


「分かりました。お預かりします。」


「契約成立、ね。」


 立花先生も同じ様な笑みを浮かべて、緒美の掌の上に、メモリー・デバイスを乗せた。


「さて、勢いで色々、話しちゃったけど。あなた達はどうする?」


 立花先生は、恵と直美へ交互に視線を送った。


「わたしは雑用程度なら、緒美ちゃんのお手伝いをする積もりですけど。勿論、緒美ちゃんが嫌でなければ。」


「雑用よりも、いろいろと計算を手伝って貰いたいわ。森村ちゃん、数学、得意だから。」


「わたしで出来る事なら。直ちゃんは、どうする?」


「わたしは…鬼塚さんの役に立てるとは思えないわ。悪いけど。」


 直美は上体を少し反らし、視線を天井へ向けた。


「新島さん、あなたはこの学校の『特課』を選んだくらいだから、技術者志望なんでしょ。だったら、この活動に参加する事で、得難い経験が出来ると思うけど?」


 立花先生は、直美を見詰めて言った。


「いいじゃないですか、先生。無理強むりじいする事じゃないですよ。」


「あら、当面は理論研究だけだとしても、先々、ある程度は人手も必要よ。それに、部活の体裁的にも部長、副部長、会計の三役は揃ってないといけないし。」


「森村ちゃんは、どう思う?新島さんの事。」


 緒美が恵に意見を求めたのが、妙に唐突に感じて、直美は思わず声を上げた。


「なんで、森村…さんに聞くのよ。鬼塚さん。」


「わたしは、あなたの事、正直、良く知らないもの。」


 確かに、こんなに緒美と会話をしたのは、入学以来一ヶ月の間で今日が初めてだったのだと、直美はようやく、その事実に気が付いた。




- to be continued …-



※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。




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