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第10回

第1話・天野 茜(アマノ アカネ)


**** 1-10 ****



「天野さん、あなたにもう一つ、見ておいて貰いたい物が有るの。」


 鬼塚部長はメンテナンス・リグのかたわらにある、キャスター付きのフレームの前に立っていた。そのフレームには 50 センチ四方程の金属製の板が一枚、立てる様に取り付けられている。その金属板からは数本のケーブルが伸びており、そのケーブルはスタンド状のコンソールに繋がっている。


「これが、FSU に並ぶ、HDG の基幹技術。ディフェンス・フィールドのデモンストレーター。」


「ディフェンス・フィールド…ですか。」


「まぁ、ちょっと離れて見てて。」


 鬼塚部長は、コンソールを操作して電源を投入した様だった。フレームに取り付けられた金属板の裏側には多数のスリットが刻まれており、そこが青白く発光している。低い、唸る様な低周波ノイズがかすかに聞こえていた。

 鬼塚部長は一旦、コンソールの前から離れると、格納庫の壁際に立て掛けてあった金属パイプを手に、デモンストレーターの前へ戻って来た。鬼塚部長は低くうなる金属板の1メートルくらい前に立つと、右手に持った金属パイプを振り上げ、そして、金属板を目掛けて振り下ろす。

 瞬間、金属板と振り下ろされたパイプの間に青白い閃光が走り、鬼塚部長が手にしていた金属パイプは跳ね返されたのだった。

 金属パイプは鬼塚部長の手を離れ、しばし放物線を描いて宙を舞い、乾いた音を響かせて床に転がった。


「どう?」


「ディフェンス…ですね、確かに。どう言う原理なんですか?」


「荷電粒子のフィールドを形成して、ぶつかって来る物を弾き返したり、軌道を逸らしたりするの。フィールドの荷電粒子量分布を計測して、その変動に応じてフィールドの密度を調整してるのよ。要するに、ぶつかって来る物体の運動エネルギーが高い程、その部分のフィールドが強化されるって仕掛けね。」


「それなら、ずっと全方位で荷電粒子の濃度を高くしておけば…。」


「そうすると、消費電力がとんでもなく、なるし、第一、内側からの攻撃も出来なくなるでしょ。」


「ぶつかって来る物だけ、弾き返そうって事ですね。」


「そう…でもね…。」


 鬼塚部長は、先程の床に落ちた金属パイプを拾い上げ、もう一度、金属板に正対する。


「…こう言う事も起こるのよ。」


 今度は金属パイプを、ゆっくりと振り下ろして行く。すると、弾き返される事無く、金属パイプの先端が金属板の表面に達し、小さく「カン」と鳴った。


「どう言う事か、解る?」


「単純なシールドではない、って事ですか?」


「ぶつかって来る運動エネルギーが大きい程、その部分の荷電粒子の濃度が上がるって言う事は、逆に運動エネルギーが小さい物は素通りしちゃうわけね。それから、もう一つの問題は、運動エネルギーを持った物体しか防げない点ね。特に、輻射熱とかレーザー光線とか、電磁波のたぐいは素通りしちゃうから、そう言ったエネルギーを利用した兵器には無力なの。」


「世の中には、そう言う兵器は結構有りますからね。」


「そんなわけで、この技術もデータベースに埋もれていたのだけれど…でも、『エイリアン・ドローン』が相手なら、この技術は有効だわ。アレは物理攻撃が基本だし、『ペンタゴン』が装備してるって云う粒子砲も、撃ち出されるのが質量を持った荷電粒子だから防御可能だわ。まぁ、その場合は、出力次第では、至近距離だと防ぎ切れないかも知れないから注意が必要だけど。」


「あとは、相対速度を合わせられると、フィールドの内側に入られてしまう…と。」


「そうね。頼り切ると危険なのは何でも同じだけど、特性を理解して使えば、有効な盾になると思うわ。LMF にも、前側と後側に大型のジェネレータを取り付けて有るの。あと、小型のが数カ所。」


「LMF は、稼働試験をやったんですか?」


「去年の夏に、LMF 単体運用のはね。防衛軍にも協力して貰って、割と大掛かりの試験だったけど、結果は好評だったのよ。それで、陸上防衛軍仕様に単体運用版 LMF の改設計を、本社の方で進めてるって聞いてるわ。もう試作機の試験が始まってるかしら?そっちの詳しい進捗は、知らないけど。」


 鬼塚部長はデモ機の電源を切り、茜の方へ歩いて来る。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



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