勇者の資格 7
リツ達はようやく研究所にたどり着く。
住民達は集まって、今後の協議をしようとしてた。
良子の状況を伝える。
生きていたことへの安堵と、明らかな変調への不安。
その二つがまじりあって何とも言えぬ空気になる。
暫くの動揺が続き、そして次第に静寂をとなる。
リツが声をあげて、今後の動きをどうするべきか話し合いが始まる。
二宮良子不在での会議はまとまりをもたず、意見は延々として結論へと進まない。
一人は積極的にうってでると言い、一人は籠城策を提案する。
一方は他所と連携を取るべきと提案し、一方は単独での行動を提案する。
楽観と悲観の対立となり、それはどちらにも理があるように聞こえる。
そして、膠着した話し合いは沈黙で終わりを迎える。
「黙っててもどうしようもないじゃないっ」
沈黙にリツは癇癪を起し、部屋を飛び出した。
彼女の考えは、研究所の戦力をもちい、単独で周囲の脅威を殲滅すること。
十分な戦力を持たない他所との連携は足手まといを増やすだけだ。
研究所単独での戦闘により、ゴブリンどもを駆逐する。
過去の遺物である兵器類の損耗はさけれない作戦である。
兵器類には数に限りがあり、二度と手に入らぬ可能性もある。
それでも使わずに後悔することは、愚かなことに思えた。
彼女の意見に反対の声を上げたのはユウタだ。
彼とは長い間チームを組んでいた。
チームとなる以前は、幼馴染でもあった。
リクとユウタを連れて、リツはよく研究所を探検したものだった。
いつもリツが意見をあげて、リクがそれをまとめ、ユウタがフォローする。
それで今までうまくやってきていた。
彼が自分と反する意見をあげたことにも、すくなからずショックを受けていた。
ユウタの意見は、こうだ。
他所との連携を密にし、相互に守りあう。
限られた戦力での殲滅戦は無謀であり、周囲の集落と連携をとって戦力の底上げをすべきである。
研究所だけで問題は解決できない。
恒常的な戦力の増強をすべきだと声をあげる。
周囲の集落と連携をとり、皆で生き残って、初めて問題は前に進むのだと。
彼の気持ちがわからないでもない。
彼の正しさもわかる。
その意見はとても綺麗で、希望にあふれている。
だが、無力なものを守り、生き残ることの難しさが、彼を認めることを拒む。
研究所の他に、期待できる戦力が他所にあるだろうか。
若輩の自分たちは、まだ歴戦とは言えないかもしれない。
でも、少しでも甘い希望に縋ってしまえば、生き残れないことだけは十分に分かっている。
生き残るうえで重要なことは、他人をあてにしないことだ。
守るものを増やさぬことだ。
甘い希望に縋らずに、楽観的な予想に頼らず、周到に綿密に作戦をたて、油断をせぬことだ。
それはリツの性格にあわぬ判断である。
何度も痛い目をみて身に染みた教訓がなければ、ユウタの意見に飛びついたであろう。
リツは何度となく、勢いだけで乗り切り、いつも迷惑をかけながら生き延びてきた。
ユウタの意見はわかる。
そちらが性分にあうこともあり、痛いほどわかる。
それだけに、どうしても甘いと感じてしまう。
いつのまにか畜舎まで歩いてきてしまった。
近くの材木に腰かけて、家畜を眺めて考える。
のんきに草を食む彼らを眺め、そして心の中で結論をだす。
「どちらの案でも不十分かもしれない、それでも戦うのであれば・・・」
自分たちが中心となって戦う。僅かながらそちらに分があると考える。
後ろに人の気配がして、振り向く。
「どちらの案でも、きっと足らないわ・・」
一人の少女が、自分と同じ考えを言葉にして立っていた。




