勇者の資格 6
朝目覚める。
柔らかな感触と、少し甘い匂いを感じて横を向く。
スースーと小さな寝息をたててユカリが眠っている。
以前より丸みを帯びたその頬を少し撫でる。
目の下には涙の跡が残っており、それが胸を締め付ける。
起こさぬようにそっと寝台から抜け出して、朝の見張りに出かける。
駅の町の外周には、外敵は見かけられない。
秋が深まり、風は冷たくなってきている。
近年は雪が深く積もることも少ないと聞いていたが、それでも冬は寒いだろう。
空を見上げると、何処までも青く、それは何処か切ない思いにさせる。
帰りにはすこし薪を集めて戻る。
老人たちが集まり、何かごそごそと相談をしている。
彼らに学ぶところは多い。
何をしているのかを眺めていると、老人たちにリョウが駆け寄っていく。
子供たちと二宮良子がぞろぞろとそれについていく。
リョウは何かをひとしきり話すと、目を輝かせている。
こちらを見つけると、ぴょんぴょん跳ねながら「コウも手伝って」と言い出した。
老人たちとリョウの指示に従って、土を掘る。
粘土質の層が混じった土を集めると、子供達がこねる。
リョウが難しい顔をしながら、木枠に詰めて形を整える。
表情は何かの職人のようだ。
老人たちがからかいながらそれを並べて、天日で干す。
次第にわかってくる。
手製の煉瓦を作っているのだろう。
「これは何に使うレンガなのかな」
リョウはいまさら何をと、驚いた顔をして答える。
子供たちも、同じ表情でこちらを見ている。
「ドライフルーツを作るために、カマドを作っているのよ。」
リョウさん・・・初耳ですよ。
別に怒ってはいないけど、すこし不満な顔をしてしまったかもしれない。
そしてリョウは言っていなかったことに気が付いたのだろう、腕に抱き着いて舌をペロッと出した。
すでに煮炊きはできるよう、共同のカマドは修復されていたが、それとは別にドライフルーツを作るようなオーブンを作る気なのだという。
子供たちにせがまれて、二宮良子が地面に何か書いている。
カマドの完成予想図のようだ。
老人たちもそれを見て感心している。
「あぁ、確かにこういう短い煙突があったほうがいいのう。」
「わしらより、よくわかっとる。」
二宮良子の瞳は輝きを取り戻し、以前と同じような笑顔を浮かべている。
思わず声を掛ける。
不思議そうな表情を浮かべ、こちらを眺める二宮良子からの返答は無かった。
柔らかな笑顔を向けているが、言葉は伝わらぬようだ。
「大丈夫よ。きっと大丈夫。」
リョウが僕の目を見てニカッと笑う。
そうだなと、笑って返す。
ユカリが食事ができたとみんなを呼ぶ声が聞こえる。
きっと大丈夫だ。
自分に言い聞かせるように呟き、リョウ達とユカリの元へ向かった。




