勇者の資格 4
コウは町に戻り、良子の来訪を知る。
カイやタケルに彼女の説明を済ませると、酒場に向かい様子を見る。
酒場の奥で寝かされている良子は、以前よりずっと弱弱しく見えた。
声を掛けようとして、リョウとユカリに止められる。
いまはあまり良い精神状態ではないらしい。
彼女には休息が必要なのだろう。
それから数日、様子を見ながら過ごす。
現状はかわらず、彼女は時折微笑みながら、リョウの頭を撫でている。
「二宮さん、いったい何があったんです?」
「・・・」
彼女は首を傾げ、こちらをみていたが、そのうち小さな子供らのところへ行ってしまった。
いくら話しかけても、明確な返答は返ってこない。
小さな子供たちに近寄れば、抱きしめて頭を撫でる。
それはまるで、老婆が孫を可愛がる姿にも似ている。
彼女の状態を示すかのように思え、胸が痛む。
現状を重く見た、リツ・リク・ユウタの三人は、研究所に戻る用意をしている。
まだリツの体調は十分とは言えないが、彼女の強い希望もあり、強行することとなった。
彼等を見送り、シェルターへと向かう。
シェルターには数日分の食料が溜められるようになり、小規模であるがバリケードも築かれている。
様子をみると少年たちが手を挙げて答える。
手で答えて、町へ戻る。
おそらくシェルターは、数日は離れても問題あるまい。
自分がてこずったのと、同様の相手が来たとしても、柵の中で複数で対応するのであれば、彼等でも十分に勝機がある。
シェルターの防御態勢が安定すれば、駅の町と互いに守りあえる、現状より万全の体制が築けるだろう。
彼らは予想以上に誠実であり、互いの関係はうまく進んでいるように思える。
問題は二宮良子だ。
良子を眺め考える。
ほんの数日前まで、冷静で強く明るい女性だと感じていた彼女。
いまは見る影もなくなっている。
およそ200年近い年月の疲労が、彼女をこんな風にしてしまったのだろうか。
子供たちの世話を甲斐甲斐しくこなしてはいるが、言葉が通じぬように思える。
そして、ユカリのことは、認識できていないようだ。
そのことは、ユカリにも大きな衝撃であったのだろう。
良子の世話は、主にリョウがこなしていた。
ユカリも時折、悲し気に彼女を見つめている。
目を合わすと、無理に笑う顔が痛々しく思えた。
自分には、想像もできないほどの長い年月を、彼女は生きてきた。
何時終わりが来ても、おかしくはない。
どのような順番で、人は老いて壊れていくのであろう。
自分もいつか、彼女のようになってしまうのだろうか。
テーブルの上で手を組み、何かに祈る。
まだ、自分は壊れるわけにはいかない。
ユカリを、リョウを、町のみんなを、シェルターの彼らを、これからも守っていきたいと願う。




