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勇者の資格 3

まだ荒れた息の中で、口びるを離す。


彼女は救えた。

喜びに体が打ち震えている。

しかし、それに浸っている時間はない。


良子の様子がおかしなままだ。


先程も反応を示さず、そのままフラフラと駅の町へ向かっている。

外敵を連れて行ってしまう可能性もあり、ほっておくわけにはいかない。


シェルターの中に、声を掛け、見張りを増やす。

ユウタは彼女をもう一度強く抱きしめると、良子を追い、駅の町へと走りだした。



□■□■□■


先程のことだ。

誰かが自分に声を掛けてきたような気がする。


「Jijijijijgaおpぎk@あkg」


何を言っているのだろう。

良子はしばらくユウタを眺めていたが、それが何かもわからず、そのまま歩き出した。



駅の町への道は、今でも覚えている。


遥か昔に10人の子らを連れて向かった場所。

自然に溢れた世界で、彼らの暮らしを作るつもりでいた。


あの頃のことを思い出す。

自分は世界を救った気でいた。

自分は救世主なのだと確信していた。


町の周りには緑があふれていた。

鹿やウサギが時折姿を見せて、豊かな自然に皆表情を輝かせていた。


町をどうやって運営していこう。

どんな作物を育てよう。

彼等は期待にあふれ話し合っていた。


自分もその中にいて、彼らと熱い議論を交わした。


あの場所に、早く帰らなくてはいけない。

彼らが知ることは少ない。

自分の手助けがまだまだ必要だ。


それなのに随分長く、帰っていない気がする。

自分はいつあの場所を離れたのだろうか。


その後・・・自分はどうしたのだろう。

うまく思い出すことが出来ない。


ただ、あの場所に戻らないと。

あの子たちが帰りを待っている。



□■□■□■


ユウタは走り続けた。


駅の町の前につく頃には、良子に追いつくことが出来た。

良子は作られたバリケードの前で呆然としている。


「おれだ、ユウタだ、大きいお母さんがおかしい。助けてくれ」


中に声を掛けて、良子を連れて入る。

何度も声をかけるが反応はない。


次第に人が集まってきて、良子の周りを囲む。

リツやリクが側によって話しかける。


「どうしたの、なにがあったの」


リツが話しかける。

しかし、良子はまるで子供をあやす様に頭を撫でるばかりで、状況がまるでつかめなかった。


「とにかく、防護服を脱いで、中で話そう。」


リツが悲鳴に近い声で呼びかける。

しばらく無言の時が流れる。


そのうちに、強化防護服の背が割れ、中から良子が出てきた。


目はうつろで、何処も見ていない。

話しかけても、ただリツを抱きしめて頭を撫で返すばかりである。


明らかに様子がおかしい。

カイはリツ達と相談し、良子を酒場の奥に運び、横たえさせた。



■□■□■□■


「どう思う」


ユカリはリョウに問いかける。

二人は良子の顔を眺め、考えていた。


良子は先ほど、気を失うように眠ってしまった。

余程のことがあったのだろう。

以前の生き生きとした姿は感じられず、まるで病人のように弱弱しい。


リツとリク、ユウタの3人は、急ぎ研究所に戻る手配をしている。

コウが戻り次第、出発の予定だ。

シェルターのことも気がかりだが、良子の状況が異常すぎる。

なにかあったとしか思えない。


ユカリが席を立ち、リツ達とその後の相談を始めた。

今はリョウが良子の様子を一人、見つめている。


弱弱しく息をする彼女の瞳からは、涙が一筋零れ落ちていた。


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