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過去の記憶

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「とりあえずの栄養補給だけしかないんだけど・・」


そう告げるが、リョウは悩んでいるようだ。

うつむいて、小さくうなっている。


他意はない、情報を得たい相手ができて、お腹がすいているので食事に誘っただけだ。だが、子供とはいえ女性を誘うにはあまりに下手な言葉だったかもしれない。


恩人?とはいえ、ほとんど他人だというのもあるだろう。


お腹がキュウと音を立てて不満をあらわにする。

もう食事をとらないと、動き回る気力はかなり落ちている。


「ひとまず、荷物を置いてきてしまったんだ。それを取りに行ってくるよ。」


そのあとに、話を聞かせてくれたらいいと告げ、よろよろと立ち上がる。


もしかしたら、もう残っていないかもしれないが、リュックには食料と水が入っている。

あれがあれば、ひとまずはしのげるだろう。


もし荷物が無くなっていれば、一度シェルターに戻ろう。

森の中とはいえ、30分もかからない程度の距離である。


そのまま、よろよろと部屋をでる。

気を失っていたために、町と呼ばれた場所を見ていなかった。


駅の地下のホームに廃材で区切られた小屋が立ち並ぶ。

地下の店舗も住宅用にされているようだ。

線路は廃材で閉ざされ、端に墓標が見える。


映画で見たスラムのような町。


小さな子供が、こちらを眺めている。

この子もお腹を空かせているのだろうか。


外に出ようとして、大切なことを思い出した。


「町の外に出るにはどういけばいい?」


リョウは、とりあえずの道案内をしてくれることとなった。

所々崩れた階段を、ひぃふぅと息をつきながら上がり、何とか外へ出る。


地上に上がると、畑があり、何人かが土仕事をしていた。


廃材をバリケードした中に囲まれた畑。

端から50mもないのではないだろうか。


それほど大きな畑ではない、これだけでは、町の人の腹を満たすことはできないだろう。


畑を抜けて、バリケードのそばにいる少年のもとへ向かう。


少女と一言二言話すと、門をずらして、外に出れるようにしてくれた。

彼は見張りなのであろう。


彼に礼を告げると、無言でうなずく。手で早くと示す。

ここにきてからずっと、無駄に話す人を見ない。


また後で戻ってくる、よろしく頼むと告げる。

少年はうなずき、バリケードを閉じなおす。


町からシェルターへ向かう。

道中に荷物はあるはずだ。


目を閉じて、職場への道を思い描く。平坦な道を道路に見立て、昔の街並みを思い出す。


腰の手斧を確かめてから、ゆっくりと歩きだす。


彼女は後ろで緊張した面持ちでついてくる。

また、例のゴブリンが出るかもしれない。


まわりの音に神経を集中し、慎重に進む。

幸い危ない遭遇はなく、初めての戦いの現場に戻った。


緑色の体に、虫がたかり食い散らかしている。


近くに落ちていた、鉄片に布を巻いた簡素なナイフをひろい彼女に渡す。

念のため持っていてと告げると、彼女は覚悟を決めたように受け取った。


リュックは残っていたが、中身は散らかされている。

人ではなく動物が荒らしたのだろうか、周囲に中身が散らかっている。

いくつかはパッケージが破れダメになっていたが、大半は無事のようだ。


かき集めて服で拭う。

水と流動食を彼女に渡し、目の前で開けて食事をとる。

彼女も見まねて、何とか食事をとれたようだ。


水と食料を体に入れたことで、頭がはっきりとしてきた。

今いるところを思い出す。昔は十字路で、角にドラックストアがあったんだ。


店の前には自動販売機が沢山あった。

店があったあたりを掘り返してみる。


しけった箱が地面に刺さっている。取り出してみると解熱剤の箱のようだ。

中身を確かめると、ひしゃげて湿った箱の中にアルミの袋が入っていた。

アルミの袋を開けてみると、見た目は正常に見える。


使用期限を随分と長く過ぎているので、使用できるかはわからない。


後ろで黙って様子をみていたリョウが、驚いた顔をしてこちらにくる。


こんなのが落ちてたよと手渡すと、手に持ったものを興奮気味に眺めていた。

こんなところで騒がれても困る。


物音を聞きつけて余計なものが来てもいけない。

落ち着くように伝え、周囲を警戒する。


リョウが話していることを聞いてみると、薬はとても価値があるらしい。

なかなか手に入らず、高価なものとして扱われるそうだ。


うまくいけば、10錠ほどの解熱剤で一月は暮らせるらしい。


おそらく現状は、薬など手に入らない世界なんだろう。

この薬も確実に使用できるとは限らないのに、そんな価値を持つくらいに。


もしこのまま、シェルターに彼女を連れて行けば、それは大きな混乱を招くかもしれない。

幸い10本ほど水と食料は回収できた。


いったん町に戻って、詳しく話を聞いてみたほうがいいかもしれないと思いなおす。


自分には過去の街並みの記憶がある。

必要なもの、価値があるものをありそうな場所は想像がつく。


この過去を知っていることは、自分の強みになるかもしれない。


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