初めての町
背中から、意識を失った青年の、かすかな息が聞こえる。
少なくとも、この音が聞こえる間は、諦めてはいけない。
そう思いながら、指さされた方向を目指す。
駅が有った辺りだろうか、廃材で作られたバリケードが見える。
おそらく、あれが町なのであろう。
門らしきところで、大声をあげる。
「けが人なんだ、助けてくれ」
門の上から人の頭がのぞき、こちらの顔を見ている。
少年のようだ。
「いまあける。離れて」
門から後ずさると、ようやく二人が入り込める程度の隙間が開く。
体を何とかねじ込み、その場に倒れる。体力も限界だった。
「リュウさん、一体どうしたんだ」
少年が悲鳴のような声で問いかける。リュウというのが青年の名前なのであろう。
「小柄な老人のような怪物に襲われていた」
「腹が食い破られている、傷口は洗ったがとにかく治療が必要だ」
少年が答える。
「とにかく人を呼んでくる、待っててほしい」
「わかった」と倒れたままで答える。
こちらも、息をするのが苦しいほどに消耗している。
そのまま意識を失ってしまった。
次に目が覚めたのは、廃材で作られた小屋の中である。
草を敷き詰め、その上に衣服が重ねられている。
その上に横たわっていた。
目を閉じて、何があったかを考える。
すべてが夢のようで、考えがまとまらない。
そうしているうち、濡れた布で顔を拭われる。
手をつかみ、相手の顔をみる。
怯えた顔の少女が、こちらを伺っていた。