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初めての戦い

目の前のものが信じられず、もう一度よく見てみる。


老人のような体躯、茶色と緑を混ぜたような肌。

見開いた眼、金色の瞳、大きく開かれた、血まみれの口。


人間ではないのだろうか。


醜悪な姿は、物語のゴブリンを思わせる。

足元の人も気にはなるが、いまは目が離せない。


手元には鉄片を布で巻いた、簡素なナイフを持っている。

体格的には、こちらが170cm、あいてが140㎝くらい。


にらみ合いを続ける。相手からこちらに向かってくる。


自分は自慢ではないが、争いごとの経験が全くない。

体格で優っていても、殺意を持って向かってくるものは恐ろしい。


恐怖からか、手斧をゴブリンに向かって投げつけていた。


手斧は相手の頭をかすり、地面に突き刺さる。


ゴブリンはニヤリと手斧をながめ、こちらに振り向こうとする。


とっさに思いきり蹴飛ばした。

相手が倒れた隙に手斧を手元に取り戻す。


またにらみ合うが、手斧を失っても攻撃をしかけてきたことに脅威を感じたのであろうか。

相手は威嚇ばかりを行うようになった。


足元から、倒れている人の苦痛な声が聞こえる。

腸を食い破られたものとばかり思っていたが、まだ息はあるようだ。

であれば、一刻も早く助けなければならない。


「獲物をあきらめて去るのであれば追わない」


たとえ相手が人外の姿でも、人型のものを傷つけるのにまだ躊躇がある。


手斧で傷つければ相手は死ぬであろう。

現状まだ、殺す覚悟も殺される覚悟もできていない。


言葉がわかるのであろうか、威嚇をしながらじりじりと後ずさる。

頼む、そのまま去ってくれと心から願う。


ある程度の距離が開く。もう少しだ、そのまま去ってくれ。

足元から、苦しみうめく声が聞こえる。


倒れている人に、目を向けようとしたその時、ゴブリンがナイフを向けて飛び込んできた。


無意識に手斧で薙ぎ払う。

体格の差で、こちらの斧が先に相手の首にあたり、頭だけを飛ばす。

頭を失った胴体が地面に倒れ、最初の戦いが終わった。


足元に倒れていた人に声をかける。


20歳くらいだろう青年である、うめき声だけで返事はない。


白いシャツに、ベージュのチノパンを履いている。

シャツの破れから、腹部が覗いている。


傷口を見ると、腹の肉が食い破られている。傷口は深く、つやつやとした内臓が見えている。

内臓までは、食われていないが危険な状態である。

このままでは、出血で死亡するだろう。


水をとりだし口元にあてる。飲み込めはしないが、目をこちらに向けてくる。


傷口を水で洗い、切り裂いた白衣で傷口を縛る。

青年が指を南に向けると、震える声で「町へ」と告げる。


おそらく指さす方向に町があるのだろう。

荷物を近くに瓦礫に引っ掛けて青年を担ぐ。


指さした方向は平坦で大きな木も生えておらず、元の道路だったのであろう。


ともかく、一刻も早く、治療を受けさせないといけない。

切り裂いた白衣の残りで、青年の体を自分に縛り付け、町へ向う。


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