再生
「一週間たったのよ お馬鹿さん」
最近ユカリさんのアタリがキツイ。
「何か言うことがあるんじゃないの お馬鹿さん」
こういうこと言う感じの人だっけか。
「本当にお馬鹿さん」
子供たちが、マネをしてお馬鹿さんお馬鹿さんとはしゃいでいる。
酒場中で燃えて使えなくなったものを運び終え、今は掃除をしている。
火が回らなかった部分で、子供たちに囲まれてユカリさんがこちらを見ている。
戦闘の終わりが告げられ、食料の確保作業と居住区の立て直しが行われている。
「それはかっこいいのかしら お馬鹿さん」
ユカリさんは左腕を指さしてる。
左腕の傷口をかばう為に、ナンバープレートと自転車のチューブで腕当てを作った。
リョウが早速真似をして、ピンクのナンバープレートをつけて見せてきた。
いまでは町の人も何人かつけている。
傷を庇う理由がなくとも、ちょっとした防具になるのかもしれない。
「かっこいいとか そういうのじゃ」
いいかけて、あきらめる。
言い返せば追撃が来る。
取り外すと、傷口特有のにおいがむわっとする。
ユカリさんが布を外し、傷口を洗い、布を変えてくれる。
途中傷口を指でつつく。
痛がるとケタケタと笑う。
こういう人だったろうか。
リョウが戻ってきて、大量の魚を掲げる。
子供たちがおおぅと歓声をあげる。
銃を手に入れたことにより、大抵の脅威は対応できると判断。
池への道を本格的に切り開くことになった。
以前のように森を超えてではなく、手製の道を通って通うことが出来る。
また、参加者も増えた。時に10人近くで向かうほどだ。
そして、ブラックバスとブルーギルは相変わらず釣れる。
もともと食料として取り入れられた魚だったと記憶しているが、繁殖力がすごい。
油さえ注意すれば臭みも感じず、普通においしい。
火災の跡が残るキッチンで、二人が調理を始める。
排煙口には侵入を防ぐべく、刀の残骸が取り付けられている。
ユカリさんの銀髪は火災で焼け焦げ、今は男前な感じのベリーショートだ。
横で小柄なリョウがぴょこぴょこと動き回る。
「おみずをあげといてくださいね お馬鹿さん」
子供たちと一緒に如雨露に水を汲み。
自分はといえば、プランターで育ちつつあるジャガイモに水をやっている。
リョウとユカリさんの会話が聞こえてくる。
育てるところもないのに、育ててねっていうのよ・・
本当にお馬鹿さん・・
あーコウさん そういうこと言って困らせそうですもんね・・・
この町では、耕作可能なところは使い切っていた。
確かに以前、育ててねってジャガイモを渡したなぁ。
ユカリさんもリョウも、以前と変わらずに自分を気遣ってくれる。
しかし、ユカリさんが自分を呼ぶときの名称が「お馬鹿さん」に固定されてた。
カイが見かねて窘めたこともあったが、リョウが何か耳打ちをする。
「そりゃまぁ コウさんが悪い」
一体何を言われているのだろう。
大きな心当たりがあるので余計に聞けない。
プランターを陽の当たる場所へと移動させる。
子供たちがきゃあきゃあとはしゃぐ。
今だって何か確かなものがあるわけじゃないけれど。
この町に来てから、安定と再生を感じていた。




