怯え 2
リョウが何か言っている。
やめてくれ、俺は怖いんだ。
そう心の中で返事する。
リョウがユカリさんを連れてきて、何か話している。
布を水に浸し、頭をぬぐってくれる。
石がかすった後がピリッと痛む。
調理した魚をリョウが持ってくる。
「今はいいよ、みんなで食べて」
そう返事伝える。
目を閉じる。
無理に昔を思い出す。
仕事を終え、帰りにコンビニによってビールを買って飲む。
ネットで好きな動画を流しながら、つまみを食べる。
焼き鳥がいいな。
一人で部屋でクーラーをガンガンに効かせてさ。
有料配信の映画で見たいのを片っ端から見てさ。
生き延びずに死んでしまっていれば、こんなに苦しくなかったんじゃないか。
そんな考えがよぎる。
額に手が触れる。
ユカリさんの手だろうか。
「もう腫れは引いたようだけれど・・・」
彼女の声が聞こえる。
優しい声だな、そう思う。
衝動的に手をつかむ。
細くてやわらかくて冷たい手。
心とは別のところから、獣のような欲が浮かび上がる。
どうせ死ぬのであれば、何をしてもいいのでないか。
少しくらい、よい思いをしてもいいだろう。
目を開くと、心配そうな顔がこちらを見ていた。
視線が合うと、優しく微笑む。
リョウはいないようだ。
しばらく顔を眺める。
綺麗な人だ、ただやっぱり痩せすぎだ。
手を強く引き寄せる。
ユカリさんの体が、バランスを崩し自分の体の上に乗る。
ひどく軽い。
そのまま体の上下を入れ替える。
何か言おうとした口を唇でふさぐ。
手首をつかみ、片手で胸を押さえつける。
手が吸い込まれるように柔らかい。
顔を見る。
恐怖でひきつっている。
泣き声が聞こえる。
ユカリさんの体は固まったように動かない。
自分も動けない。
もう取り返しがつかないな。
そんなことを思う。
もったいないから最後までやってしまおうか。
自嘲する。
自分にはそんなことはできない。
ゆっくりと体を起こす。
「すまない」
言葉にできたであろうか。
ユカリさんは何も答えなかった。
立ち上がりシェルターに戻るべく、町をでる。
門番の少年に声をかける。
一人で考えてくると伝え、外に出る。




