ふつうのおっさんはふつうに無力である
酒場をはなれ町を散策する。
先ほどの問題を考えながら、あたりをみわたす。
廃材で作られた薄暗い町。よどんだ空気と不衛生な臭い。
文明を失った人間はこんなにも弱い。
ひどい環境で暮らさざるを得ない。
安全に暮らす。
今のような状況でなければ当たり前のことが、こんなにも難しい。
例えば、ずっと昔だって野犬や熊の問題もあっただろうし、盗賊というか強盗もあっただろう。
それは圧倒的多数の人が平和を望み、そして強い治安維持の組織力で解決してきたことだ。
現状のように少人数、限られた土地では、成しえないことなのだろう。
例えば、人数をそろえて釣りをしたとする。
ある程度の回数までは増えた人数分の食料は賄えるだろうが、魚の数も限りがあるだろう。
常にとれるとも限らない。
魚に限らず、狩りや採取を兼ねて行うにしても、それぞれの方法やノウハウの確立がされるまでもつだろうか。自分では予想がつかない。
保証がないことに、みんなを従わせるわけにもいかない。
そもそも、自分が何か提案をして、この町は従うであろうか。
結果それぞれの思うよう、行動せざるを得ないだろう。
試行錯誤を繰り返す中でできた現状は、限界を迎えようとしている。
求める結果を出すために、必要なピースが足りていない。
どこかで賭けに出て必要なものを集めるしかない。
安全を模索した結果、出る答えにため息をつく。
きっと幾人もこの問題にぶつかり、そうして不運にも命を散らせてきたのだろう。
幸い自分には、シェルターに備蓄がある。
全員に分け与えても数か月かはもつであろう。
食料以上の危機が訪れなければであるが。
やはり早くに、少しでも勝算のある賭けに出なくてはならない。
もちろん自分がしなくてはならない理由があるわけでない。
ただ、自分がなんとかしたいのだ。
町の端にある廃材置き場で適当な箱に腰をかける。
住民たちが、行商と交換するために集めたものの売れ残りだろう。
使えるものがないか、ごそごそと廃材を探る。
原付に乗るときに使う、ハーフのヘルメット。
穴の開いた自転車のチューブ数本。
コーラの瓶や自動車のナンバープレートが何枚かある。
プラスチックの製品は、劣化して触ると崩れてるものが多い。
逆さで気が付いていなかったが、今座っている、蓋のない箱。
フォークリフトで使うパレットが数枚。
ゲームや映画であれば、こんなときにどうするだろうか。
ゾンビ映画であれば、ホームセンターに立てこもるとか?
いっそ居住者を増やして数で問題を解決するのは?
その手段は?
自分にはなにもわからない。
いつまでも出ない答えをもとめ、椅子の上で頭を抱えていた。




