パンがなければ
リョウがこちらを、心配そうに眺めている。
所在なく、こちらもその顔を見返す。
リョウは、不思議そうに顔を傾げた。
「その、あの、そんな感じでしたっけ」
なんとも意を得ない質問であるが、聞きたいことはわかる。
顔が若返っていることを、尋ねているのだろう。
「初めて会ったときは、とても疲れていたからね」
と、はぐらかす。
自分でも理由がわからないし、うまく説明ができない。
流動食を手渡し、食事をとる。
目の前でパッケージの口を切り、食べ方の実演をして見せる。
「物足りないかもしれないが、これ一つで一日の栄養は取れるんだよ」
リョウはへぇと感心しながら、流動食のパックを咥えている。
その様子をみて、過去の暮らしを思い出す。
駅で見かけた、ゼリーの食事をとっている高校生のように見えるなと。
ダイエットのためにと、それだけで食事を済ます子もいたなと思い出す。
こんな時代でなければ、彼女はまだ学生であっただろう。
町での暮らしを聞いてみる。
リョウは何から答えたものかと悩み、それからポツポツと説明をしだす。
要約すると、こんな感じだ。
食料は狩りと畑、畜産は行っていない。
川が近くにあり、魚も取っている。
ただ、量がとれないので子供の遊びとおやつを兼ねた程度のもの。
近辺に危険があることもあり、大人が付いていかねばならず、余裕がない今は行えていない。
畑ではジャガイモを主に育てているそうだ。
他にも育てたいが、苗がない。
耕作地も限られていて、いろいろ作るほどの余地がない。
狩りはウサギや鹿、まれにイノシシなども取れる。
そうはいっても、ろくに道具がない現状では、滅多にとれずにいる。
最近は特に食料が不足しがちで、住民は食料採取に追われている。
行商人が不定期に町を訪れ、発掘された品と食料や酒、衣服や作物の苗などを販売しているとのこと。
薬などは、主に行商人に買い取ってもらっているそうだ。
町というか集落程度の規模であるが、あれは町らしい。
町として認められる基準がしっかりとあるそうだ。
取引を行える場、定住できる家、自給できる畑、外敵から守る防護柵。
最低の基準を満たしていたらしい。
駅内の喫茶店を利用して作った酒場があり、行商人などはそこで取引を行っている。
町としての基準を満たせていないと、行商人は立ち寄らなくなるそうだ。
お酒を扱っているわけでなく、そういう場所を酒場と呼ぶらしい。
お金も一応ある。
ただし、お金としての価値ではなく金属としての価値で扱われる。
10円玉は10円の価値として扱われるのでなく、10円玉分の銅としての価値だ。
他の物々交換と変わらず、万物と交換はできない。
相手がお金での交換を了承したときのみ価値を持つ。
アルミが求められていれば、10円より1円のほうが喜ばれることもあるそうだ。
食糧難が気にかかり、そして、ふと思いつく。
たしか、昆虫食で食糧難を乗り切る話があったはず。
ハチの子や、イナゴなどはどうなのだろう。
カマキリもおいしいと聞いたことがある。
確か東南アジアでは、食べるんじゃなかったかな。
パンがなければお菓子を食べればいいじゃない。
御飯がなければ、昆虫食べればいいじゃない。
尋ねてみるが、昆虫を食べる習慣はないそうだ。
やはり、食中毒などに不安を感じるらしい。
また、十分な量を確保するには手間がかかる。
手間をかけるのであれば、他のものを探すほうが良いとのこと。
もちろん飢えた時には食べたことがないわけではない。
が、あくまでも最終手段といった感じだそうだ。
確かに安全性といわれると、自分にも判断がつかない。
例年のことで、数日のうちに行商人が来る予定があるとのこと。
リョウの兄は、それに向けて、狩りと採掘に頻繁に出ていたそうだ。
栄養不足の上、十分な装備も知識もなく行う狩りは、リスクばかり高く、成果が望めない。
それでも選択肢はほかになかったそうだ。
兄の話をするリョウの声が、鼻声になる。
その瞳には涙が溜まっていた。
思わず頭に手をのせ、宥める。
何か言葉をかけようとして、うまい言葉が出てこない。
何度か頭を撫でて、その後はそっとしておく。
とにかく、今後の足掛かりとするためにも、明日は町に行くべきだろう。
表現力や文書力が足りないです。
読みにくくて申し訳ない。
戦争後の文明が衰退している世界、漠然と生きてきた主人公が、頑張る姿を表現できればと思います。
つたない文章ですが、よろしくお付き合い下さい。




