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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第4章 宗教都市メルタテオス
96/911

96.結構すごかった

 次の朝、いつもの通り宿屋の食堂で待ち合わせ。

 今日も空は晴れ渡り、食堂までの廊下も歩いていて気持ちが良かった。


「おはよー」


「「おはようございます」」

「おはよー♪」


「あ、ジェラードさんも」


 すでにルークとエミリアさんは席に着いており、上機嫌なジェラードも一緒に座っていた。


「たまにはご一緒させてくれるかな。報告もあるからさ」


「どうぞどうぞ。報告がなくてもご一緒しましょう」


「あはは、ありがとね」


 そんなわけで、今朝はジェラードを含めた四人で朝食をとることになった。

 やっぱり仲間が揃うと賑やかで良いね。五番目の仲間であるアドルフさんには申し訳ないけど。




「――それで、ミスリルの件はどんな感じになりました?」


「うん。ターゲットのアーチボルドさんに、一日限定の育毛剤を昨日渡してきたよ。

 今日の早朝に様子を見てきたけど、あれはもう驚きの効果だったね!」


「え? 会ってきたんですか?」


「いや、忍び込んでこっそり様子を見てきた♪」


「「「さすがです」」」


「ふふふ、何てことは無いさ。それでね、アーチボルドさんはめちゃくちゃ喜んでいたよ。廊下で踊っていたくらいでさ、メイドさんたちも驚いていたよ」


「そ、そんなに生えてましたか?」


「そりゃもう、ふっさふっさふっさふっさだったよ!」


 ふっさふっさふっさふっさ……。

 ちょっとふさふさしすぎじゃない? どれだけなんだろう……。


「でも、それも一日限定なんですよね……。どう終わるのかは私も分からないんですけど」


「僕のイメージでは朝起きたら全部ごっそり抜けてる感じなんだけど、そこも見てくることにするよ。

 それでさ、そのあとの絶望しているときに、ずっと効果が続く方の育毛剤とミスリルの交渉をしようかと思ってね」


「なるほど、絶望の中で希望を見せるわけですね。

 ……ちなみに一日限定のもう一本はどうしたんですか?」


「そっちはね、ハゲ仲間の違う人にあげたよ。アーチボルドさんと今日会ってもらう流れにしてるんだ」


「お互い髪が生えたことを自慢しようと思って会うのに、お互いふっさふっさふっさふっさ……と」


「そうそう。そのあと――自慢した次の日に元に戻っちゃうからね。

 ライバルに見せちゃったからには、これはもう高くてもまた買わざるを得ないはずさ」


「そ、そうですね……。

 でもそうすると、ハゲ仲間さんにもちゃんとした育毛剤を売れたりできますかね?」


「うん、そっちもいけると思うよ。ふふふ、アイナちゃんもしたたかになってきたかな?」


「いえ、何かその人だけ良いところがないかなって。ちょっと可愛そうだなぁと……」


「なるほど。でもこっちの人はあまりお金持ちでは無いよ。

 小さい宗教をひらいた人なんだけど、どうにもお金の方には疎くて」


「へぇ、教祖様なんですか。この街っていろいろな宗教がありますけど、怪しげなところですか?」


「いや、そこは真面目な宗教みたいだよ。

 慈善事業を手広くやっているような感じなんだけど、みんな人が良いというか無欲でね」


「あるのは教祖様の髪の欲だけ……と」


「確かに。そこだけは悟れていないみたいだ」


「信仰をも上回る髪への執念……恐ろしいことです」


 ルークがぼそっとつぶやいた。

 それにしても何があったのかね、君は。


「悪い人じゃないなら、全部が上手くいったら何かしてあげても良いかもですね。

 ……まぁ、それはあとにしましょう」


「そうだね、まずは本題をクリアしないと。

 ところでアイナちゃんはアーチボルドさんとコネを作っておきたい? それなら引き合わせておくけど」


「いやー、ミスリルを頂いちゃうわけですからね。

 全部もらえるならコネは要らないです。あまりもらえなかったならコネを作って、ゆくゆくはできるだけ頂戴したい……といった感じでしょうか」


「分かった。それじゃアーチボルドさんからミスリルを一回もらうところまでは進めちゃうね。

 交渉は髪が戻る明日にしてくるから、明日の夜にでも報告にくるよ」


「はい、よろしくお願いします。

 ――あ、そうだ。ジェラードさんにお渡ししたいものがあるんですけど」


「え? もしかして、アイナちゃんからのプレゼントかな?」


「はい、大体そんな感じです」


「えぇっ!? 本当に!?」


 ジェラードは予想外、といった感じで驚いた。自分から言ったくせに!

 そんなことを思いながら、昨晩作ったジェラード用のブレスレットをアイテムボックスから取り出す。


「はい、これです。アーティファクト錬金で効果も付けたんですよ」


「それはありがたいな。うん、デザインも良いし! ちなみにどんなステータスを付けてくれたのかな?」


「是非みてください! かんてーっ」


 私は鑑定ウィンドウを出してジェラードに見せた。


 ----------------------------------------

 【ブレスレット(S+級)】

 一般的な装身具

 ※錬金効果:風刃

 ※追加効果:素早さが1%増加する

 ----------------------------------------


「――えぇ……っ!? こ、こんなすごいものをくれるの!?」


「え? すごいんですか?」


「え!?

 ……そっか、アイナちゃんだもんな」


「「まぁたしかに」」


 ジェラードのつぶやきにルークとエミリアさんがとりあえず頷く。いや、二人とも本当にとりあえずだったよね!?


「アーティファクトの錬金ではステータス以外のものが付く場合はあるんだけど、僕の記憶が確かなら、一万個に一個くらいの割合……なんだよね?」


「あ、そうなんですか……。私はえぇっと、トータルで見れば一割くらいだったかな……。

 そのブレスレットを含めて、効果付きのものは六個作りましたし」


「なんということだ……」


「運が良かったということで……はい。あ、風刃の効果がちょっと気になるので、使ってみたらどんな感じか教えて頂けますか?」


「うん、分かったよ。……ちなみにさ、他の効果はどんなものなの?」


「それじゃ全部お見せしましょうか。あ、その前にルークにもプレゼントね」


 そう言いながらルークにネックレスを渡す。


「はい、この前選んだやつだよ。しっかり効果も付けておいたから!」


「おお、ありがとうございます。一生大事にします!」


「そうしてくれるとありがたいな♪ それじゃ、ジェラードさんのやつ以外を全部鑑定しますね」


 えい、かんてーっ


 ----------------------------------------

 【リング(S+級)】

 一般的な装身具

 ※錬金効果:風魔法『クローズスタン』使用可

 ※追加効果:ダメージを1%増加する

 ----------------------------------------

 【ブレスレット(S+級)】

 一般的な装身具

 ※錬金効果:光魔法『バニッシュフェイト』使用可

 ※追加効果:魔力が1%増加する

 ----------------------------------------

 【イヤリング(S+級)】

 一般的な装身具

 ※錬金効果:エコー

 ※追加効果:精神力が1%増加する

 ----------------------------------------

 【ネックレス(S+級)】

 一般的な装身具

 ※錬金効果:属性統合

 ※追加効果:ダメージを1%軽減する

 ----------------------------------------

 【ドクロのネックレス(S+級)】

 闇の力を秘めた装身具

 ※錬金効果:カースLv1

 ※追加効果:魔力が1.0%増加する

 ----------------------------------------


「――はい!

 あ、ドクロのネックレスは預かり物なので返しちゃいますけど」


「……うわぁ、何だこれ……。アイナちゃん、こんなに付けるのにどれくらい時間が掛かったの……?」


「全部メルタテオスで付けましたよ。それなりにハマったりしましたけど」


「でも成功率が一割くらいなんだよね……? 普通ならひとつ付与するのに半日掛かるって聞いたことがあるけど……。

 それに、個人で持てるレベルじゃないくらいの良い効果だし……」


「そ、そうなんですか?」


「バニッシュフェイトとエコー、属性統合なんかは国にひとつでもあればすごいレベルだからね?

 僕がもらった風刃は初耳だから、ちょっと価値は分からないけど……」


「あれ、属性統合もすごいんですか?」


「これは魔法剣士の憧れさ。――でもルーク君は純粋な剣使いだから、使いこなせないと思うよ」


「あ、やっぱり魔法剣用ですよね……」


「それならば努力するのみです。魔法剣とやらも学んでみせましょう」


 力を込めてルークが決意した。でもこれ、属性ひとつじゃ使えないんだよね? 複数属性に対する効果なわけだし。

 ……でも、本気で学べば無理なんてことも無いのかな。


「うん、ルークも魔法の勉強をする予定だったから、それならちょうど良いかもね。土属性だけの予定だったけど」


「……それにしてもアイナちゃん。さすがにこんなものを持ち歩くのは危険だからさ、情報操作の魔法を掛けておいた方が良いよ」


「情報操作、ですか?」


「うん。ほら、前に見せた……僕が騙されて飲んでいた右腕の薬にさ、情報操作の魔法が掛けられてたでしょ? ミラエルツで鑑定してもらったやつ」


「ああ、ありましたね、鑑定結果をミスリードする魔法。

 ……なるほど、確かに鑑定されると希少なものって分かっちゃいますからね」


「しかもこれだけ希少なものなら、信用できる人にお願いしないといけないかな。下手するとそこからバレちゃうわけだし」


「なるほど……。うーん、それにしてもそんな人、どうやって探せば良いんだろう?」


「すぐ見つかるかは分からないけど、僕の方でも探してみるよ。

 でも、アイナちゃんの方でも暇があったら探してくれると助かるかな」


「分かりました、ちょっと考えてみます」


「うん、よろしくね。

 ――さて、それじゃ僕はそろそろ寝ることにするよ」


「早朝にアーチボルドさんのところにって言ってましたしね。おやすみなさーい」


「「おやすみなさい」」


「うん、また明日ね♪ おやすみー」


 そう言うとジェラードは食堂から去っていった。




「さて、私たちも魔法関連のお店に――向かうにはまだ早いか」


「そうですね、まだ開いてませんよ!」


「それじゃルークにアーティファクト錬金の苦労話でもしてよっか」


「え? 何かあったんですか?」


「主にジェラードさんのブレスレットにハマった愚痴」


「本当になかなか付きませんでしたからね!

 いや、ジェラードさんの話によれば、あれでもすんなりいったレベルっぽいですけど」


「分かりました、とことん伺いましょう!」



 このあと、なかなか良い効果が付かない愚痴をルークに叩き付けてみた。

 いやぁ、すっきりすっきり。


 愚痴は適度にこぼすのが良いよね。こぼしすぎはダメだけど。

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