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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第4章 宗教都市メルタテオス
95/911

95.挑戦の夜の続き③

「――さて、そろそろ許してあげましょう」


 そう言いながら、エミリアさんはようやくつねっていた手を放してくれた。

 うーん? 結局なんだったんだろう……理解しがたい。


「き、気が済んだようでしたら何よりです……。

 さて、それじゃジェラードさんのブレスレットに戻りましょうか」


「そうですね、そうしましょう!」


 ジェラード用のブレスレットはもう幾度となく普通の結果に終わっているから、そろそろ成功させたいところだ。

 でもエミリアさんの新魔法、グロリアス・スターライトがあればすんなりできちゃうかもしれない!


「それじゃエミリアさん。さっきの魔法をお願いします!」


「あの魔法は封印されました」


「へ?」


 封印? どゆこと?


「とある事情により、あの魔法は使わないことにしました」


 むむむ?


「……もしかしてバニッシュフェイトで消しちゃったの、怒ってます? そしたら、すいませ――」


 むぎゅ。


「いたいれす」


 何だかまたほっぺをつねられた。


「あの魔法には良い思い出ができたので、アイナさん以外のために使うことを止めたんです。えへへ、許してくださいね」


「……ふぁい」


 私が変な発音で返事をすると、ようやくつねっていた手を放してくれた。

 うーん……。それにしてもせっかく覚えた魔法なのに、ちょっともったいないかも? でもまぁ、エミリアさんが決めたのなら仕方は無いか……。


「さて、では気を取り直していきましょう。れんきーんっ」


 バチッ


 そしてかんてーっ




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ----------------------------------------

 【ブレスレット(S+級)】

 一般的な装身具

 ※錬金効果:風刃

 ※追加効果:素早さが1%増加する

 ----------------------------------------


「――ッ! きました! エミリアさん、やっとです!」


「おめでとうございます! ……結局十回以上やりましたけど」


「やっぱりこれは鬼門でしたね……。何か憑いていたんでしょうか」


「あはは、そうかもしれませんね。それで付いた効果は『風刃』……ですか。どんな効果ですかー?」


「ぱぱっと見ちゃいましょう! かんてーっ」


 ----------------------------------------

 【風刃】

 物理攻撃時、風の刃による追撃を行う

 ----------------------------------------


「……これは攻撃系の効果……みたいですね?」


「そうですね。攻撃力はいまいち分かりませんけど、使い勝手は良さそうでしょうか?」


「ふむ……」


 こういう特殊効果って、その攻撃力次第で価値がずいぶん変わるんだよね。

 一割くらいの増加でもかなり強い感じだけど、普通の攻撃と同じくらい――つまり攻撃力が二倍になるようなものならとんでもなく強力な感じだし。


「これはジェラードさんに渡して、あとで感想を聞くことにしましょう」


「そうですね、そうしましょう!」


「――さて、それじゃ今回作りたかったものは全部終わりました! エミリアさんもご協力、ありがとうございました」


「いえいえ、私は見ていただけですから!」


「そうだ。せっかくですし、何か足りなくなったものはありませんか? 紙でもヘアオイルでも」


「前に頂いた分がありますので、もう少し大丈夫です! 無くなりそうになったらお願いしますね。

 ……あ、もしかしてこれってご褒美な感じですか?」


「大体そんな感じです!」


「それならお願いをひとつ、聞いてくれますか?」


「え? はい、私ができることなら」


「それじゃ――目を瞑って、少しじっとしていてもらえませんか?」


「えっ」


 そんなことを言われた瞬間、ミラエルツでの例の夜のことが思い起こされた。


「べ、別に構いませんけど! へ、変なことはしないでくださいねっ!?」


「変なこと?」


 エミリアさんは不思議そうに首を傾げたあと、しばらくしてから急に顔を赤くした。


「ちょっ……! あ、あんなことはしませんよ!!?」


「い、一応ですよ! それなら大丈夫です、はい! 瞑りました!」


 エミリアさんの態度を見るのも少し気まずく恥ずかしかったので、私はさっさと目を瞑ることにした。


「ありがとうございます。……それじゃ、失礼しますね」


「え?」


 ――ぎゅっ。


「むむ……?」


 うーん……。何やらエミリアさんに抱き締められたようだ。彼女の優しい体温が伝わってくる。

 抱き着かれるのは、最近は慣れてきたんだけど……うーん?


 しばらく黙っていても動きが無いので、ちょっと声を掛けてみた。


「エミリアさーん。どうしたんですかー?」


「えへへ、アイナさんを抱き締めているところです♪」


「それは分かりまーす」


 まぁ抱き締められるの自体は良いんだけど、何で急にまた?


「私も誰かに甘えたくなるときもあるんですよ~っ。えいえいっ」


 エミリアさんは抱き締めた腕に強弱の力を入れて私をいじってくる。


「うわああああ、何するんですかーっ」


「あはは♪ それじゃこれくらいで許してあげましょう。はい、目を開けて良いですよー」


「むぅ?」


 目を開けると近くにエミリアさんがいた。

 そして自分の身体をできるだけ見たが特に変わったことはなく、本当に抱き締められただけのようだった。


「――さてと。それではアイナさんに癒されましたので、私はそろそろ戻って寝ますね!」


「あれで癒されたんですか?」


「はい、とっても!」


 ――もしかしてあれかな。

 犬や猫を抱き締めて癒される感じだったのかな。なるほど、私で代用が効いたかは分からないけど、それなら良しとしよう。


「それは何よりでした……。それじゃゆっくりお休みください」


「はーい、また明日! お休みなさーい」


 そう言うとエミリアさんは部屋を出ていった。


 うーん、それにしても……


「私、そんなに動物っぽいかなぁ?」


 部屋の鏡に自分を映してつぶやく。


 実際のところ、そういう可愛さは無いと思うんだけどなぁ? 人それぞれってことかな……?


 まぁそれはそれとして、やろうと思っていたアーティファクト錬金も全部終わったし、明日は予定通り魔法関連のお店に行くとしよう。

 ジェラードにお願いしているミスリルの件もそろそろ動き出すだろうし、そっちも頑張らないとね。


 それにしても最近は何だかんだで神器関連のことが多くなってきたから、神器作成も少しずつ現実味を帯びてきた感じがする。

 ――とは言ってもまだまだなんだけどね。それでも何だか嬉しいな。

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