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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第4章 宗教都市メルタテオス
93/911

93.挑戦の夜の続き①

 夜も更けて身の回りのこともすべて終わらせた頃、部屋の扉がノックされた。


「アイナさーん、こんばんわ!」


「はいはい、いらっしゃいませ~」


 扉を開けて入って来たのはパジャマ姿のエミリアさん。

 アーティファクト系の錬金術――……そういえばあのお婆さんは『アーティファクト錬金』っていってたけど、これからはそう呼ぶことにしようかな。なんだかそれっぽいし。


 で、そのアーティファクト錬金を見学したいということだったので、今晩約束をしていたのだ。


「それにしてもエミリアさん。アーティファクト錬金といっても、いつもと変わりませんよ。バチッとするだけですから」


「そうかもしれないんですけど、途中経過を見たいんです!

 アイナさんの錬金術って基本的に全部が最高品質じゃないですか。でもアクセサリの場合は錬金効果がいろいろ付くので、面白いなって」


 なるほど、それは確かに。

 スマホアプリのガチャとかはこれの最たるものだしね。ランダムで出てくるものに何人の猛者が挑んで敗れていったことか……。

 そういった要素はこっちの世界の人には馴染みが無いだろうし、目新しく映るのかな。


「確かに私もやっててハラハラしますからね。

 素材の数量制限もあることですし、ちょっとしたギャンブル気分と言いますか」


「ギャンブル! そう言われるとドキドキ感が増しますね!」


「押し寄せる背徳感! それじゃお茶の準備でもして、始めることにしましょう」


「はーい♪ あ、私が淹れますね」


「それじゃ私はお湯を作りますね」


 私がお湯を作って、エミリアさんがお茶を淹れる。

 いつもの分担である。


「――あ、そうそう。今回はお土産にお菓子を持ってきたんですよ」


「お菓子ですか?」


「さっぱりしたものなので、夜でも大丈夫だと思いますよ! これです、じゃじゃーん!」


 エミリアさんがどこかから取り出した紙の包みには、薄い円盤状のものが入っていた。


「おせんべい」


「はい、素朴な味わいが素敵な逸品です! ここに甘いものをかけるのも良いのですが、今回は夜ですし自重します!」


 夜に甘いものは太るもんね。

 いや、エミリアさんの場合は問題無さそうだけど、私に配慮してくれたのかな。


「なるほど、良さそうですね。それじゃいただきまーす」


 パリッ。


 ――おお、この味、何か知ってる! どこかのお土産で食べたことがあるような気がする!

 でも正直それ以上のことは思い出せないかな……。


「これは懐かしい味がしますね。シンプルで美味しい!」


「まさに素朴な味、というやつですよね。ささ、これをパクつきながら錬金術の方、頑張ってください!」


「はい、それではいきますよー。

 まずは今日依頼のあったお婆さんのドクロのネックレスからいきましょう。

 あ、借りものですし、最初に鑑定をしておこうかな?」


 かんてーっ!


 ----------------------------------------

 【ドクロのネックレス(B+級)】

 闇の力を秘めた装身具

 ※追加効果:魔力が0.4%増加する

 ----------------------------------------


 鑑定結果はウィンドウに出したので、エミリアさんもそれを覗き込んだ。


「――これでも立派なものなんですが、アイナさんの作るものを見ているといまいちな感じがしますよね」


「いわゆる通常品がC級ですからね。さて、じゃアイテムボックスに入れて――れんきんっ」


 バチッ


「そして、かんてーっ」


 ----------------------------------------

 【ドクロのネックレス(S+級)】

 闇の力を秘めた装身具

 ※錬金効果:力が1.0%増加する

 ※追加効果:魔力が1.0%増加する

 ----------------------------------------


「S+級になって、あとは追加効果も上がりましたね。品質を上げると、単純にここも伸びるかな?」


「なるほど、それだけでもずいぶん変わりますよね」


「ですよね。さて、それにしても付いたステータスは力、ですか……」


「歳を取ると力も弱りますから、考えようによってはこれはこれでありなような気もしますが……」


「でも減った力に対して1%ですからね……。微々たる感じが凄まじいです」


「ああ、確かに……」


 二人であれこれ話した結果、さすがにもう少し使えそうな効果を付けることにした。

 まぁこれでも良いとは思ったんだけどね、せっかくだし。


 そのあと試してみると、『力、力、素早さ、力、力、力、素早さ、力』――という結果に。


「……アイナさん、何だかパターン化してませんか?」


「まったくですね……。どれだけあのお婆さんに力を付けさせたいのでしょうか」


「これが運命……?」


「ちょっと意味が分からない運命ですね。それにしても回数もずいぶんやっちゃったので、次で最後にしましょうか」


「そうですね、ルークさんのもオンリーワンにしなきゃいけませんし」


「そっちが本命ですしね。それじゃ最後のれんきーんっ!」


 バチッ


 そしてかんてーっ


 ----------------------------------------

 【ドクロのネックレス(S+級)】

 闇の力を秘めた装身具

 ※錬金効果:カースLv1

 ※追加効果:魔力が1.0%増加する

 ----------------------------------------


「お?」


「むむ? オンリーワンっぽいのが付きましたよ! 何やらレベルも付いていますが」


「効果は何でしょうね? かんてーっ」


 ----------------------------------------

 【カース】

 攻撃時、低確率で対象に状態異常<呪い>を与える

 ----------------------------------------


「……ふむ。これは使えるんですかね?」


「どうでしょう? でもドクロのネックレスに付く効果としてはそれっぽいですよね」


「そうですね。それじゃこれでおしまいにしましょう。次はルークの分を!」


「はい、頑張ってください!」


 それじゃドクロのネックレスは一旦しまって……。


「れんきーんっ」


 バチッ


 かんてーっ


 ----------------------------------------

 【ネックレス(S+級)】

 一般的な装身具

 ※錬金効果:ダメージを1%増加する

 ※追加効果:ダメージを1%軽減する

 ----------------------------------------


「ふむ、どうでしょうか」


「アイナさん、やり直しです」


「えぇっ!? ……まぁ、良さげな効果ではありますがオンリーワンではありませんからね」


「そうです。アイナ教団はオンリーワンを目指すのです」


「何ですかその教団は。ガルルン教でも無いですし」


「アイナ教団はアイナさんを守護する教団なのです。選ばれし者のみがアイナさんを守護することができるのです」


「そういうのは創作でやっていてください。激しく却下します」


「ぎゃふん」


「それじゃやり直しですね。れんきーんっ」


 バチッ


 かんてーっ


 ----------------------------------------

 【ネックレス(S+級)】

 一般的な装身具

 ※錬金効果:属性統合

 ※追加効果:ダメージを1%軽減する

 ----------------------------------------


「ぞくせいとうごう」


「ふぇ……? 何ですか、これ」


「オンリーワンっぽいですね! 効果のほどは……かんてーっ」


 ----------------------------------------

 【属性統合】

 複数属性の競合を防ぎ、同一の装備上に統合する

 ----------------------------------------


「……これはどういうことでしょうか?」


「うーん……。多分ですけど、いくつかの属性を魔法剣みたいに武器に乗せて攻撃できる……とか?」


「……強いんですかね、それ」


「さぁ……?」


「しかもルークは魔法を全然使えないわけですけど」


「これも魔法使い用なんでしょうか。いや、『装備上に統合する』……だから、魔法では使えなさそうですね」


「うーん……」


 魔法剣を使えるならもしかしたら凄いかもしれないんだけど、ルークは普通の剣術だからなぁ。


 でもまぁそれはそれとして、効果の名前だけは凄そうだし……。

 そのうち何かに使えるかもしれないから、ルークのネックレスはこれでおしまいにしておこうかな。

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