表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
外伝2 未来を継ぐ者
910/911

Exx02.探し人

「――ママっ!!」


「リリー、久し振り!!」


 ……感動の再会、と言うべきか。

 アイナ様は俺たち第三騎士団のメンバーと一緒に、半年の間をずっと『廃城の迷宮』で過ごしていた。


 つまり愛娘であるリリー様とも、会うことが出来たのは半年ぶり……と言うことになる。



「やー、大きく――……は、別になってないか。

 でも、何だかしっかりしたように見えるよ!」


「みゅ! 社会経験、ばっちりしてたからなの!」


「ふふふ、ちゃんと頑張れたみたいだね。

 あとで色々、話を聞かせてね♪」


 ……ちなみにリリー様は、酒場でずっとアルバイトをしていた。

 この街は『廃城の迷宮』から最も近く、ダンジョンに挑む冒険者が休息をする場所になっている。

 そのため、情報収集を兼ねて酒場で働くことにしていたのだ。



「……ママの方は、もう大丈夫なの?」


「うん、さっきまで王様と会っていてね。

 話はいろいろ付けてきたから、あとは例の件だけだよ」


 この国は、北方の不毛な大陸に存在している。

 目立ったものは『廃城の迷宮』があるだけで、そこから産出されるアイテムや、それを目的とする冒険者たちが落とすお金――

 ……そう言ったものが、かなりの収益になっているようだった。


 しかし今回、その『廃城の迷宮』をアイナ様が消滅させてしまった。


 だからこれから、この国は困ることになるはず……。

 ……ただ、国王との話がすんなり終わったところを見ると、きっと何かしらの話が以前から通っていたのだろう。



「――ルーファス様。

 『犬』から、情報を受け取っております」


 部下の一人が、俺に囁いてきた。

 『犬』……と言うのは、第三騎士団の中での隠語だ。

 アイナ様をどこまでも追い掛けてくる……そんなところから命名された、俺としては『仕方の無いヤツ』と言うイメージが強い人物。


 俺は部下からメモを受け取って、それをそのまま確認する。

 するとそこには、『探し人』が逃げる準備をしていることが、詳細に書かれていた。


「……明日の、早朝の便か。

 アイナ様!!」


 俺は、リリー様と抱き合うアイナ様に声を掛けた。

 リリー様は少し不満そうな顔をしていたが、しかし俺たちがここまで来たのは、この『探し人』こそが目的なのだ。


 アイナ様としては、『廃城の迷宮』を消滅させる……と言う目的があったのかもしれない。

 しかし第三騎士団としては、この『探し人』こそが、今回の主な目的だと聞かされていたのだ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――深夜の街。

 酒場が多く並ぶ、歓楽街。


 どこもかしこも、『廃城の迷宮』の消滅が話題に上がっていた。

 基本的には否定的な意見が多く、これからのことに不安を抱く人が多いようだった。


 ……そんな中、俺たちは徐々に、『探し人』を追い詰めていく。

 そしてどうにか、薄暗い袋小路まで追い詰めることに成功した。



「――な、何だよ! お前ら!!

 何で俺を追い掛けてくるんだよッ!?」


 小奇麗な格好をした、美形の青年。

 あどけなさは残るが、それはそもそもそう言う顔の作りだからだろうか。

 マントを羽織り、フードを深く被り、しかしその目は爛々と輝いていた。


 俺は正体不明な不気味さを感じたが、アイナ様は平然と、彼に向かって話し掛けていく。



「……初めまして。

 あなたが、この世界に病気をばら撒いている転生者ね?」


「ッ!?

 な、何者だ、お前はッ!!」


 否定はしないが、その言葉自体が肯定をしている。

 『転生者』……と言うのはアイナ様以外では初めて見るが、やはり俺たちと同じ、普通の人間のようだった。


「……ユニークスキル、『創造才覚<病原体>』。

 まったく……。ゼリルベインの転生者は、ロクなのがいないよねぇ」


 アイナ様は、俺に向かって困ったように笑った。


 本来『転生者』とは、神々によって導かれるもの。

 しかし虚無の神ゼリルベインが、生前に例外となるルールを作っていたのだとか。

 俺もついさっき教えてもらったばかりだが、その仕組みが『廃城の迷宮』の最深部に存在していたらしい。


「く、くそ……!

 もしかして、『廃城の迷宮』を消したのはお前らなのか!?

 何だってそんなことを……ッ!!」


「……余計な転生者を生み出さないため。

 この世界にはもう、転生者なんて要らないの」


 アイナ様の声に、冷たさが帯びていく。

 それに怯んだ『探し人』は、ナイフを引き抜き、アイナ様に襲い掛かる――


 ……しかしどこからともなく伸びてきた、黒い触手のような影。

 その影が『探し人』の足に絡み付き、そのまま空へ、『探し人』を高く高く放り投げた。


「――ッ!!?

 何だ、これは――」


「……でも、ある意味では感謝しているよ。

 あなたが作った病気のおかげで、『彼女』とようやく出会えたんだから――」


 そう言いながら、アイナ様は宙を舞う『探し人』を指差し、照準を合わせた。

 ……そして次の瞬間、『探し人』はこの世界から抹消されていった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――全てが終わった。


 『廃城の迷宮』を攻略したのは、新たな転生者を生み出さないため。

 虚無の神が作ったルールによれば、そこから生み出される転生者は『世界に一人』しか存在できないらしい。

 だからこそ、先にそのルールを排除してから、そのあとに『探し人』を始末することになったのだと言う。


 ……ダンジョンを攻略している間、どこか別の場所に行ってしまうことは不安だったが……。

 この国の協力を得て、『探し人』を足止めすることが出来ていたのは幸いだった。

 ついでに『犬』によるハニートラップもあったそうなのだが……まぁ、それはそれとしておこう。



 アイナ様と一緒に、この大陸までやって来た第三騎士団は、俺を含めて31人。

 その内の11人は『廃城の迷宮』の踏破に参加していたが、残りの20人はこの街にずっと残っていた。


 ……ダンジョンの踏破組は、正直かなり疲れている。

 だから今日のところは、警護は滞在組に任せて、踏破組はゆっくり休ませてもらうことになった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――深夜の2時頃。

 俺は突然目を覚まして、再び寝入ることが出来なくなってしまった。


 自分の部屋を出て、宿屋の1階にある酒場へと向かう。

 この時間でも、きっと誰かしらがいるに違いない。

 そんな誰かの、何でもない話を耳に入れていれば……きっとすぐに、眠くなってしまうはずだ。


 ……そう思って酒場に足を運ぶと、予想外の人物が、ひとりでテーブルに着いていた。

 それ以外は……空席のようだった。



「……アイナ様? こんな時間に、どうされたのですか?」


 俺たちの主、アイナ様。

 よくよく見れば、酒場のあちこちに第三騎士団のメンバーが護衛をしてくれている。


「あれ、ルーファス?

 そっちこそ、どうしたの?」


「いえ、突然目が冴えてしまいまして……」


「あはは、色々と大変だったからね。

 ……私はちょっと、珍しく飲みたい気分でさ」


「それは本当に、珍しいですね」


 俺はアイナ様に促されて、正面の席に座ることになった。

 仕えている身ではあるものの、勧められた以上、こうするのが俺たちのスタイルなのだ。


 俺たちはそのまま、この国まで辿り着いたまでのこと、『廃城の迷宮』を攻略していったときのことを話していった。

 それはここ数年の話ではあるが、もはや全てが懐かしく感じられた。



「……はぁ。本当に、ルーファスには世話になったよね。

 今回の旅は、ルーク以来の大冒険だったんじゃないかな……」


 ふと、アイナ様がグラスの氷を見ながら呟いた。


 ……ダンジョンが攻略されるのは、実は今回が世界で初めてとなる。

 簡単なダンジョンでさえも、攻略されたものは他に存在しないのだ。


「いえ、アイナ様がいればこそ……です。

 今回のダンジョンの攻略だって……」


「……うぅん、私だけの力じゃないよ。

 ルーファスの力、第三騎士団の力……。

 それにエミリアさんの力だって無ければ、あんなところまでは絶対に行けなかっただろうし……」


 アイナ様は何かを懐かしむように、指に嵌めた指輪を眺めていた。

 神器のひとつ、神煌クリスティア。……その隣の指に嵌められた、青色の宝石の指輪。


「『暴食の聖女』、エミリア様……ですか?」


「……『エミリアの秘宝』って、聞いたことがある?

 実はね、あれって、この指輪のことなんだ」


 そう言ってから、改めて指輪を見せてくれる。

 見た目は……何でも無い、普通の指輪だ。


「そうなんですか……。

 実物は誰も見たことが無いと聞かされていましたが……、まさか、ずっと目にしていたものだったとは……」


「あの日、これをもらってから……ずっと嵌めているからね。

 ……はぁ、もう一度エミリアさんに会いたいなぁ……」



 アイナ様曰く、『エミリアの秘宝』とは、エミリア様がアイナ様に遺した魔法アイテム……なのだと言う。

 エミリア様が覚えた魔法を、死の直前に、神器の力を使って全て封じ込めた指輪――

 ……なるほど。アイナ様が膨大な数の魔法を使えるのも、これで納得がいくと言うものだ。


「……みんなの力で、色々なつっかえがようやく取れたよ。

 この世界にはもう、おかしな干渉は生まれないはずだから……」


「『この世界』……ですか。

 アイナ様は、人智の及ばないところで大変なんですね……」


「そうなんだよぉー……。

 何だかもう、最近はアドラルーン様まで無茶なことを言い出すしさぁ……」


「……はぁ。

 絶対神様と普通に交流がある時点で、何と言うか、その……」


「えぇーっ!?」



 酒に酔っているせいなのか、俺の知っているアイナ様とは別人のようだった。

 陽気で無邪気で隙だらけ。


 ……しかし、どうにも愛おしい。

 そんな想いに従おうとする腕を、俺はどうにか制していく。


 ……危ない。

 正直、嫁さんと言う存在がいなかったら……抱き締めてしまっていたかもしれない……。


 ……ダメだぞ、ルーファス。

 ご先祖様だって、みんな我慢をしていたはずなんだから……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱルークの思いとかも継いでるのかな あー、あの子の病気ってそういう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ