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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
外伝 ミーシャのアトリエ ~ラミリエスの錬金術師~
907/911

Ex91.成功……?

 ――高級ポーションと言うものは高級なだけに、初級や中級よりも作るのに時間が掛かる。

 凄く頑張っても、2日くらいは必ず……。


 学院でもらっていた教材と、アイナ様からもらった本。

 あとは足りないところを錬金術師ギルドで調べながら、私は何とか高級ポーションを完成させることに成功した。


 ……完成?

 完成、したのかなぁ、これ……。



「ミーシャさん? これ、何だか濁っていますよ?

 私が知っている高級ポーションは、もっと透き通っているはずなんですけど」


「奇遇だね。私も同じ認識だよ……」


 ……そう。

 目の前のポーション瓶に入った液体は、何故か白く濁っていた。

 もちろん、何が悪かったのかはいまいち分かっていない……。


 多分、薬効成分の抽出のところ……のような気はするんだけど。

 でも、後半に入ってから急に濁り始めたから、実際はよく分からないんだよなぁ……。



「……それではミーシャさん?

 こっちのフラスコに少し残っている分、飲んでみましょうか」


「えっ」


「え? 自分で飲めないものを作ったんですか?」


「い、いや……。飲めるはずのものを作ったつもりだけど……。

 でもこれ、明らかに失敗作じゃん? やっぱり捨てちゃお?」


「ダメですよ、ダメです。

 これは私が買い取るんですから」


「え? ターニアちゃん、何かに使うの?」


「はい、贈り物に使おうかと」


「いやいや、ちょっと待って!?

 それなら最初から、錬金術師ギルドあたりで買えば良かったんじゃないの!?

 私が作っても上手くいかないこと、最初から察していたでしょ!?」


「それが良いんじゃないですか」


「な、何が良いのかな!?」


 ターニアちゃんは不敵に微笑んだ。

 今回ばかりはちょっと、何を考えているかが分からない。


「まぁそれはそれとして。

 さぁさぁ、フラスコの液体をぐいっと」


 そう言いながらターニアちゃんは、今まで使っていたフラスコを私の手元に運んできた。

 当然のことながら、その液体も白く濁っているわけで……。


「……あのさ。錬金術師ギルドに行って、鑑定してもらうことにしない?

 鑑定代は私が出すから……」


「あ、それは良いですね。

 でも飲んで大丈夫だって言う実績が欲しいので、これを飲んでからにしましょう」


「えぇ……」


 ……最終的に鑑定をするなら、私が飲む必要は無いのでは……?

 いや、確かに錬金術師なら自分で作ったものには責任を持つべきなんだけど……。

 でもこんなに濁った液体、本来は売り物になんてならないわけで……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ……錬金術師ギルドを訪ねると、先日知り合った鑑定士のアルマイヤさんを見つけた。

 雑談をしてから、そのまま本題の鑑定をお願いすることに。


「……え? この液体、何ですか?」


「鑑定をすれば分かると思いますが……いや、分かるかな……。

 一応、高級ポーションの手順を踏んで作った液体です……」


「???

 高級ポーションって、もっと透き通っていますよね?」


「私も同じ認識です……」


 既にターニアちゃんとやり取りした流れを、ここでも改めてするはめに。

 私の返事を受けて、アルマイヤさんは微妙な顔をしてしまった。


「あの……。

 鑑定する分には良いんですけど、代金の銀貨3枚は頂きますからね……?」


「私としても悲しい出費ですが、一応これにも買い手がいまして……」


「そ、そうなんですか……。

 物好きな方がいたものですね……」


「まったくもって……」


 話しながら、お互い何となく気まずい感じ……。


 ちなみに買い手となるターニアちゃんは、今は家でお留守番中だ。

 私が帰ったあとに出掛けるそうで、この時間を使って夕食の準備を早めにしてくれている。



「……そ、それでは参りますね。

 むむむ……。うー、やー、とぉーっ!!」


 以前と同じように、アルマイヤさんは何度も力を込めていった。

 しばらくすると、彼女の前に鑑定のウィンドウが現れる。


「ど、どうでしょう……」


「はぁ、はぁ、ふぅっ……。

 ……おっと、これはおめでとうございます……。高級ポーションでしたよ!」


「ほ、本当ですか!?

 お腹も壊さなかったことだし、一応は使えるんですね!」


「え……?

 もしかしてこれ、鑑定する前に飲んだんですか……?」


「はい……。外部の圧力に屈しまして……」


 ……実は既に、この濁った液体は服用済みだ。

 もともと怪我なんてしていなかったから、効果は何も実感できなかったんだけど……。


「あの、今さらですが……。

 ポーションは飲まなくても、身体に掛ければ効果があるのでは……?」


「……はっ!?」


 確かにポーションって、そう言えばそう言うものだった……!

 ターニアちゃんもそんなことは知っているはずなのに……。

 ……むむむ、何でわざわざ飲ませたのかな……!



「さ、さて……。

 ……気になる鑑定結果はこちらです!」


 アルマイヤさんは私に、ウィンドウを見るよう目線で促した。

 私が覗き込むと、そこに映し出されていたのは――



 ----------------------------------------

 【高級ポーション(F-級)】

 HP回復(大)

 ※追加効果:HP回復×0.1

 ----------------------------------------



「……んがっ」


 私は声にならない声を上げてしまった。

 これって、本来の効果の……10%しかないわけ……?


「『HP回復(大)』とは言うものの……。

 ここまで品質が悪いと、普通の初級ポーションよりも効果は下になりますね……」


 上級のアイテムが、下級のアイテムに効果で負けてしまう。

 悲しいことに、錬金術の世界ではそんな現象が起こり得てしまうのだ。



 ……悲しい結果。

 しかし払うものは払わないといけない……。


 私はお財布から銀貨を3枚出して、アルマイヤさんに手渡した。


「ありがとうございます……。

 それにしてもミーシャさんって、いつも背伸びをしたものを作りますよね」


「え? ああ、この前は『神竜の雫』を作りましたし?」


「はい!

 いやー、私もその姿勢、是非とも見習いたいものです!」


「あはは……。

 そう言われると、私も少しは救われる気がします……」


「……そこでお願いがあるのですが」


「え、はい?」


「この、品質が凄く悪い高級ポーション……。

 後学のために、映像に収めておいても良いですか……?」


 ……途端に申し訳無さそうになるアルマイヤさん。


 なるほど、このお願いをするために、私を褒めて持ち上げてくれたのか……。

 ……もう、好きなようにしてください……。ぐすん。

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