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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第1章 辺境都市クレントス
9/911

9.次のステップへ

 翌朝、私は錬金術の成果に満足していた。


 ふふふ、どういうことかと言うと……はい、鑑定っ!


 ----------------------------------------

 【中級ポーション(S+級)】

 HP回復(中)

 ※追加効果:HP回復×2.0

 ----------------------------------------

 【高級ポーション(S+級)】

 HP回復(大)

 ※追加効果:HP回復×2.0

 ----------------------------------------


 ドヤァ……!


 初級ポーションがS+級確定で追加効果も「HP回復×2.0」だったので、中級や高級も同じ感じになるかとは思っていたのだが、まぁその通りになったのだ。

 しかも1本あたりを作るのに掛かる時間は、各種スキルのおかげで初級ポーションと同じ。

 本来なら結構な時間が掛かるようだが、私の前ではそれも形無しだ。


「初級ポーションよりも高値で買い取りしてくれるだろうし、これはもうお金に困ることはないよねぇ……?」


 うっとりと中級ポーションと高級ポーションを眺める。


「さーて、それじゃさっそく、冒険者ギルドに持っていってみよー」


 私はうきうき気分でポーションをアイテムボックスにしまい、宿屋を後にした。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「おはようございます。ご用件を承ります」


 冒険者ギルドの受付に行くと、ケアリーさんではない女の子が丁寧に応対してくれた。


「おはようございます。今日はケアリーさんじゃないんですね」


「はい、今日は体調不良で休むと……。元気が取り柄でしたのに、どうしたのかしら」


「体調不良ですか、大丈夫かなぁ……。えっと、今日は中級と高級ポーションの買い取りをお願いします」


「はい、ありがとうございます。それでは検品しますので、こちらに冒険者カードとポーションをお願いします」


 言われるままに冒険者カードと中級ポーション、高級ポーションを並べる。

 ポーションはそれぞれ10個ずつ用意したけど、どれくらいの金額になるかな?




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「大変申し訳ないのですが、今回ご用意頂いた中級ポーションと高級ポーションは買い取りが出来ません。申し訳ございません」


 ……へ?


 検品終了後。受付の女の子から伝えられたのは、まったく想像しなかった結果だった。


「え? 買い取りリストにもありますよね? 何か不備でもありましたか?」


 混乱しながら焦りながら声を出す。品質なんて今回も全部S+級なのに!?


「……あの、不備では無いのですが、昨日の夜に通達がありまして……。えっと、A-級以上のアイテムの買い取りはしばらく行わないように、と。

 名目としては、不正な方法で鑑定を誤魔化す錬金術師がいる、ということと、その混乱の収拾、一般の錬金術師の保護、というところになります」


 『不正な方法で鑑定を誤魔化す錬金術師』……って。


 そもそも初級ポーションのS+級だって、ケアリーさんは初めて見たっていってたし……。

 つまり最近はS+級は出てこなかった。私が大量に持ち込んでからこうなったってことは――


 『不正な方法で鑑定を誤魔化す錬金術師』っていうのは、つまり私のことだよね?


 でも、急に何でこんな話になってるわけ?

 ――……って、考えるまでもないか。ヴィクトリアの差し金だよね、この街を治める貴族の娘だし……。


「はぁあ、貴族こわい……」


 つぶきながらうなだれる私に、受付の女の子は申し訳なさそうに続ける。


「あの、アイナ様だから買い取れないというのではなく、B+級以下のアイテムでしたら買い取りできますので……」


 すまない、私は(今のところ)S+級しか作れないんだ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 街の広場でぼーっと時間を潰す。


 冒険者ギルドで素材を買って完成品を売る。そんな成金ルートが一夜にして潰されたことが、心に重く圧し掛かってくる。


 直接冒険者に売る、とか、自分でお店を開く、というやり方もあるのだろうか?

 あるにしてもコネとかやり方とか、調べて作っていかなきゃいけないし……。


 そもそもコネなんて、無いからなぁ。


 今のところの知り合いとしてはケアリーさん……くらいだろうか?

 顔見知りとしては宿屋女将のルイサさんと街門のところの騎士の青年くらいか。ああ、街門の近くで遊んでいたアーサー君とロミちゃんも、かな。


「……ポーション売れる気が全然しない」


 それならば、と、お店を開く想像をしてみる。

 開店して間もなく、ヴィクトリアにちょっかいを出される光景がありありと浮かんできた。


「……営業していける気が全然しない」


 それならば……他の選択肢はどうだろう。


 ヴィクトリアに許しを乞う。

 ……いや、何かもうあの人、無理。だって私殺されかけてるし、今度は経済的に殺されかけてるし。

 死ぬまで良いように使われるのは嫌だ。


「……死ぬまでって、そういえば不老不死になってたっけ」


 自分の考えに対して冷静に突っ込む。

 下手したらここら辺もすぐバレちゃうよね。何とか伏せていても、数年経てば間違いなくバレるだろうし。


 他の選択肢は無いかな……? ヴィクトリアをなんとかする……。

 ……なんとかする。……なんとかする?


 物理的に倒す → 勝てる気がしない。

 精神的に倒す → 勝てる気がしない。

 社会的に倒す → 貴族をどうやって。

 経済的に倒す → 貴族をどうやって。


 他の選択肢……。私がこの街から去る。

 ……うん? あれ、これは出来そう。


 でも他の街の冒険者ギルドでも買い取りを拒否されたらどうしよう?

 いやでも、そこまで買い取りの規制は行くかなぁ?


 うーん、でも他の街に行くというのはひとつありかもしれない。


「でも……負けた感が強い……っ!」


 何気無いプライド、というのか。ただの負けず嫌い、なのか。それはよく分からないのだけど、そんな感情が湧いてきた。

 でも正直なところ、ヴィクトリアからは離れて生きていきたい。


 ふと、中学時代のいじめを思い出す。

 あの頃の学校ってやつは、その世代にとっては大きな世界なんだよね。そこから逃げ出したい同級生がたくさんいたことを私は知っている。

 社会人の会社、と、中学生の学校、は、全然違うものなのだ。ある種、中学生の方がかなりしんどくて、つらい。


 思わずしんどいことが頭を巡ったとき、広場に脚を引きずった品の良さそうなお婆さんを見つけた。

 ルイサさんと同じ感じで脚を引きずっている。


 そういえばアレって治せるのかな。HPを回復するポーションでは治せないんだよね。


「ステータスを鑑定……して、身体状態を鑑定っと」


 鑑定スキルの便利なところは、意識を向ければ何にでも応用できるところ。

 スキルのレベルも関わってくるんだけど、何せ私の鑑定スキルはレベル99だからね。


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 【歩行障害(小)】

 通常の歩行が難しい状態。

 ゆっくりとなら歩くことが可能

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 ……ふむ、なるほど。そのままだね……。


 そう思いながら『創造才覚<錬金術>』スキルに意識を傾ける。


 治せる薬を手持ちの素材でなんとか作れないかな……?

 すると、ひとつのアイテムが浮かんできた。


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 【歩行障害(小)治癒ポーション】

 歩行障害(小)以下を永続的に治癒するポーション

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 ……ふむ、いけそう。でも滅茶苦茶ピンポイントなアイテムだね、これ……。


「はい、れんきんっ!」


 言うや、右手に液体の入った瓶が現れる。


「うまくできたかな? 鑑定~」


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 【歩行障害(小)治癒ポーション(S+級)】

 歩行障害(小)以下を永続的に治癒するポーション

 ※追加効果:筋力回復(中)

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 ふふふ、安定のS+級!


 あのお婆さんにも試してもらいたいけど、見ず知らずの私から渡しても怪しむよね。


 とりあえず今日は名前を覚えておくだけに留めよう。

 えっと、もう一度お婆さんを鑑定……。アイーシャさん、ね。名前の最初が同じで親近感が持てるや。いやどうでもいいんだけど。

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