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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
外伝 ミーシャのアトリエ ~ラミリエスの錬金術師~
883/911

Ex67.2か月後

 ――そして2か月ほどが経過した。


 気候は少しずつ、寒さが和らいできた気がする。

 たまには暖かい日もあるから、そろそろ春に差し掛かってきた……と言うところかな。


 ちなみにその間、特に大きく動いた出来事は無かった。

 私は引き続き錬金術学院で勉強に励んでいるし、フランとルーファスの問題もそのままだ。


 ただ、あと1か月ほどで、建国三百年祭が行われるから――

 ……聖都はその準備で徐々に慌ただしく、賑やかになってきているようだった。



「――そう言えば二人って、三百年祭はどうするの?」


 休憩時間の合間に、リリーちゃんとミラちゃんにそんなことを聞いてみた。

 このお祭りの間は、錬金術学院もちょうどお休みに当たっているのだ。


「ママと一緒に過ごす予定なの!」


「あ、そうなんだ。

 さすがに忙しいお母さんも、その間はお休みなんだね」


「んー……。むしろ、忙しいの?」


「うわぁ、お祭りのときも仕事なんだ……?

 って言うと、ミラちゃんもお母さんのお手伝いなのかな?」


「えぇっと……まぁ、そうですわね」


 ……あれ?

 何となく、一瞬表情が曇ったような……。

 気のせいかな……?


「そうすると、また一緒には遊べないのかー。

 三百年祭って、1週間くらいずっとやってるはずなんだけど……」


「そうなの!

 ミーちゃはたくさん楽しんでくると良いの!」


「ちなみにミーシャさんは、どなたかとまわるんですか?」


「うん、学院の友達を誘ってみて……。

 あとは幼馴染のフランって子と、あとは……ルーファス、は難しいか……」


 建国三百年祭のタイミングを以って、ルーファスはお父さんから、アイナ様の警護の任を受け継ぐことになっている。

 だから当然、その頃は忙しくしているはずだ。


「学院の方々と一緒なら、賑やかになりそうですわね。

 私も残念ながらご一緒できませんので、ゆっくり楽しんできてください」


「うあー、ミラちゃんもかぁ……。

 収穫祭のときも一緒に遊べなかったし、とっても残念……」


 私が錬金術学院に来て以来、たくさん話はしてもらってるけど……。

 でもどこか、やっぱりまだ距離を詰め切れていないと言うか……。


 ……二人はミステリアスな部分を残しているから、それならそれでアリなのかな?

 いやいや、出来ればもっと仲良くなりたいんだけどなぁ……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 授業が終わってから、工房に戻って今日の復習をする。

 それが終わると、アイナ様からもらった本を頼りに、授業以外の勉強もこなしていく。


 学業の面では、何とも充実した日々。

 プライベートの面では……個人的なところは、からっきし。


 良い異性を見つけて青春を謳歌しているクラスメートもいるけど、私はそんな時間は取れないし……。

 少し遅めになってしまうだろうけど、そう言うのは錬金術師として独り立ちした後でも良いかな……。

 別に、気になる人なんていないから――



「……そう言えば」


 ジェイさんって、結局その後は会えていないなぁ……。

 セミラミス様が知っているくらいだから、立派な人なんだろうけど……。


 ……あ、いや。

 そう言えばセミラミス様、信徒の名前をほとんど覚えているんだよね。

 新年に会ったときなんて、みんなの名前を呼んで挨拶をしてたし……。


 ……とすると、ジェイさんは別に立派な人じゃないのかな?

 いや、その言い方は失礼だけど……、まぁ、はい。



 突然頭に浮かんできたジェイさんのことは置いておいて、私はそのまま手を動かしていった。

 今となっては、中級ポーションくらいならそれなりの品質で作れるようになっている。


 これも授業と復習、実践を繰り返しての賜だろう。

 こと実技においては、私は学年の中でもかなり良い方に入るようになっていた。


 筆記のテストはまだまだ微妙なんだけど……。

 でも、全体的にほどほど良いよりは、どこかが突出していた成績の方が、きっと良いよね?




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――夜、工房の扉からノックの音が聞こえてきた。

 この時間、この場所からの来客はもう決まりきっている。



「こんばんわ~。訪問販売のポッポルでーす」


「はい、こんばんわー。

 ささ、入って入って。お菓子もあるよー」


「ありがとうございます!

 僕、仕事中だから……とか言いませんからね!」


「あはは、気軽に食べていってくれた方が嬉しいよ!」



 私はポッポル君を工房に招き入れて、品物を出してもらっている間にお茶の準備を済ませた。

 工房にいるときは一人っきりだから、ポッポル君は話し相手に丁度良いのだ。


「いただきまーす。

 ……わぁ。このクッキー、美味しいですね!」


「本当に?

 実はこれ、作業の合間に作ってみたんだ♪」


「え? おねーさんが作ったんですか?

 てっきりこういうの、苦手だと思ってました」


「な、何で!?」


「特に理由は無いんですけど……、イメージでしょうか……」


「そんなイメージがあること自体、私は悲しいよ……」


 そう言いながら、私は悲しみを癒すためにお茶を啜った。

 今使っている茶葉も錬金術で作ったものだけど、いつぞやに比べれば品質は上がっているはずだ。

 ……何と言っても、苦くないからね。



「ところでおねーさん。

 最近はたくさん買ってもらってますけど、お金の方は大丈夫ですか?」


「え? ちゃ、ちゃんと支払いはしてるよね……!?」


「あ、そうなんですけど……。

 ここのところ、結構買ってもらっているので……」



 ……そうそう。

 実は『神竜の雫』を、セレスティア教団に買い取ってもらっていたのだ。

 金貨100枚くらいかなー……とは思っていたけど、結局は金貨90枚で。


 少し残念なところはあったけど、セミラミス様にはとてもお世話になったし、その値段で快諾をすることに。

 飲んだ後は体調を崩してしまう……と言う引け目も、快諾に至った1つの理由だったのかもしれない。


 そんなわけで、私の手元にはそれなりのお金が戻ってきていた。

 最近の使いっぷりは、その辺りの影響もあったんだけど……。


「そ、そうだねぇ……。

 あんまり使わない素材も増えてきたから、そろそろ消化にまわらないと……。

 ポッポル君が持ってきたのを見ると、どうしてもつい買っちゃうんだよね……」


「なるほどー。

 もしよろしければ、過剰な在庫で何か作って、僕たちに卸してもらえませんか?

 最近はそう言うニーズがあるんですよー」


「へー、そうなんだ?

 私に作れるものがあるかなぁ……」


「作り方はお教えしますので、それに従って頂ければ大丈夫です!

 おねーさん、中級ポーションは作れるんですよね?

 それなら十分です!」


 ポッポル君は近くのフラスコを指差しながら、嬉しそうに言ってきた。

 ポーション類って、実力をある程度まで計る指標になるんだよね。

 ……つまり私も、それなりのところまでは来たと言うことか。


「それならちょっと、挑戦してみようかな。

 でもまずは、今日の商品を見せてくれない?」


「かしこまりました!

 『ガチャボックス』も、ついにバージョン3に生まれ変わって」


「それは要らない」


「えぇーっ!?」



 ……私は一歩一歩着実に進んで行く。

 今はガチャの罠になんて、はまっている時間は無いのだ。



「でも……10個一気に開けると、激レア素材が当たりますよ!?」


「むっ……。

 だ、だから開けないってばっ!」


「えぇーっ!?」



 ……ポッポル君め、強引に押し込んできおったな……。

 開けないって言ったら、もう絶対に開けないんだからね……!!

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[一言] ガチャは運だから
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