Ex54.ガル……
アイナ様から懐かしい話を聞いたあと、少しくつろいでから次の話に。
「これから外に出るんだけど、ミーシャさんはどうする?」
「え? どこか、お出掛けですか?」
「うん、畑の世話に行こうかなって」
「畑……ですか?」
伝説の錬金術師から出て来た、思い掛けない作業。
……畑、作業?
「農業ってほどじゃないんだけど、菜園みたいのを作っててね」
「はぁ、そうなんですか……。
それなら私も、何かお手伝いします!」
「いやいや、ゆっくりしてて?
のどかなところだから、ぼーっとでもしてさ」
「えぇー……」
私の提案は虚しく、引き続きのんびりと……させられてしまうようだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アイナ様のあとに続いて外に出ると、そこは本当にのどかな場所だった。
自分の村では見慣れた光景だけど、聖都に来てからは縁の無かった感じの場所。
「――アイナ様、おはようございます」
「おはよー。今日も良い天気だね」
「ははは、ここはいつも天気が良いじゃないですか」
……外には、一人の男性が立っていた。
聖都でも見たことのあるその姿。
第三騎士団の騎士のようだけど、装飾が少し立派かな……?
「あの、アイナ様。そちらの方は――」
「ルーファスのお父さんのルーレンだよ。
ミーシャさんも、知っているんじゃない?」
そう言われて改めて見てみれば、確かに知っている顔だった。
私の村で何回か会って以来だから、結構昔の話なんだけど――
「……あ!
す、すいません! ルーレン様、お久し振りです!!」
「いやいや。ミーシャさん、お久り振り。
今回は大変だったね」
「ルーレンも、凄く心配してくれていたんだよ。
無茶するとその分、みんなが心配するからさ。これからは気を付けてね」
「は、はい……。申し訳ございませんでした……」
「それじゃ、ルーレン。
今日は出掛けないから、交代しちゃって大丈夫だよ」
「承知しました。
それでは申し送りのあと、私は休憩させて頂きます」
「了解~♪」
会話が一通り終わると、ルーレン様は少し離れた家に入っていった。
この辺りにはその家と、アイナ様の家の2軒しか見当たらないようだけど……。
「……向こうの家って、ルーレン様の家なんですか?」
「ルーレンの……って言うか、第三騎士団の詰め所みたいな感じ。
24時間、ずっと起きていてもらうわけにはいかないでしょ?
だから他の騎士さんと一緒に、あそこに常駐してもらっているの」
「なるほど……。
交代で警備をしてくれているんですね……」
「うん。だからその分、騎士さんたちを護ってあげないとねー」
「……え?
騎士様たちが、アイナ様を護ってくれているんですよね……?」
「ん? あー、そうだね♪
……さてと。それじゃ私、ちょっと準備をしてくるから。
ミーシャさんはそこら辺で遊んでて~」
「分かりました!」
……とは返事をしたものの、子供じゃないんだから、本当に遊ぶわけにもいかないし……。
それなら錬金術師らしく、そこら辺に生えている野草の観察でもしていようかな。
こんな場所だから、もしかして貴重なものがあるかもしれないし……。
周囲を見まわしてみれば、草むらは結構あるようだった。
ひとまず私は、一番近い草むらに向かっていく。
「……思ったより、深いなぁ」
手で掻き分けても、2度3度やらないと奥まで見えない。
ざっと見た感じでは何も無さそうだったから、ここはしっかり奥まで確認しなければ――
……ガサッ
「ん?」
まだ一番奥は見えていない……と言ったところで、奥の方から物音がした。
……狐か狸でもいるのかな?
もしかしたら、可愛い猫ちゃんかもしれない。
さすがにここに、魔物なんていないだろうし。
そう思いながら、最後の一掻きをしてみると――
……そこには思いも寄らないモノが存在した。
「ガル……?」
「は……?」
「ガルル~?」
……目の前のソレは不思議そうに、首(?)を傾げながら、よく分からない表情で私を見て(?)きた。
灰色のような、黒色のような、金属の質感。
両手に乗るくらいの、可愛いサイズ。
どこか見覚えのあるその姿は――
「ガルルン!?」
「ガル!」
……何とガルルン教の御神体、ガルルンが可愛いサイズで動いていた。
威厳みたいなものは全然ないけど、小動物のように動いていて可愛い……!
「ミーシャさん、お待たせ~。
……ああ、ガル太郎と遊んでいたの?」
「が、ガル太郎……?」
「そうそう。私と一緒に暮らしている、ゴーレムちゃんだよ」
「ごーれむ……」
……そう言えばルーファスも言っていたっけ。
『全身がミスリルで出来た、ミスリルゴーレム』がいる、って……。
ってことは、この不思議な感じの身体はミスリル製なのかな……?
「ガ、ガル!?
ガルル~っ!!」
「あっ。
……逃げちゃった」
突然逃げ出したガル太郎のことを、私は目で追うしか出来なかった。
「何か余計なことを考えたでしょ?
あの子、そう言うのには凄く反応しちゃうんだよね」
「……ルーファスから、ミスリル製だって聞いていて……。
それを思い出したら、逃げられちゃいました……」
「あはは、売り飛ばされるとでも思ったのかな♪」
「……確かにあれくらいの量なら、かなり高く売れそうですよね。
あんなゴーレムまで作るなんて、さすがアイナ様……」
「おっと、懐かしいフレーズ。
でもあの子、作ろうとして作ったんじゃないんだよね」
「え? そうなんですか?」
「むかーしね、アドラルーン様の奇跡をこの大陸に降らせたことがあったんだけど――」
「あ、それって建国式典のときですよね。
昔話で聞いたことがあります!」
「うん。そのときにね、何だかついでに魂が宿っちゃったみたいで……」
「えぇ……。
魂って、そんな簡単に宿っちゃうものなんですか……?」
「さぁ……?
でも、絶対神の奇跡だったわけだからねぇ?」
私の言葉に、アイナ様は悪戯っぽく答えてくれた。
何だかいちいち、出て来る話のスケールが大きくて困ってしまう。
……これが、生きる伝説……ってやつなのかなぁ。




