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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
外伝 ミーシャのアトリエ ~ラミリエスの錬金術師~
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Ex52.目覚め

「――……むにゃ?」


 気が付くと、私は見知らぬ部屋で目を覚ました。

 暖かいベッドで上半身を起こすと、近くの窓からは朝の陽射しが優しく入ってきていた。


 ……春、みたいな陽気だ。

 最近は冬らしく寒くなってきていて、朝はしっかりと冷えてしまうのに。


 思わず身震いをしてから起床するのが常なんだけど……。

 ……何だか半年くらい、一気に過ぎてしまったような気すらしてしまう。



「――もしかして、さっきのは……夢?」


 『魔女の迷宮』に迷い込んで、暗い森をずっと彷徨って……。

 最後の最後で『闇色の草』を手に入れたものの、そのまま魔物に囲まれて……。

 ……そしてその後、私は気を失った……ような気がする。


 しかし身体には痛みも無いし、魔物に傷付けられたはずの肌にも、特に痕は残されていなかった。

 絶対に残るような傷だったのに、まるで見る影も無く……。


 ……やっぱり、本当に……夢、だったのかな……。



 辺りを改めて見てみれば、誰かの部屋……と言うよりも、お客さんが泊まる部屋……のように見えた。

 私物が無い……って言うのかな?

 カントリー風の雰囲気で、とても落ち着く空間ではあるんだけど……。


「……う、そう言えば服も着替えちゃってる……。

 知らないパジャマ……」


 周囲には私の鞄も見当たらない。

 この部屋の中で、私の知っているものは私の身体だけ……。

 ……素敵な部屋なんだけど、どうにも落ち着かないと言うか……。



 ――トントントン


「うひゃっはい!?」



 突然のノックの音に驚き、私はおかしな声を上げてしまった。

 自分の家ならともかく、他人の家でのこれはとんでもなく恥ずかしい。


 多分顔を赤らめていると、すぐに扉が開いた。

 そしてそこから、一人の女の子が顔を覘かせてきた。



「おはよー。身体の調子は、どうかな?」


「お、おはようございます……。

 特に何ともないんですけど、あの、ここは一体……?」


 挨拶を返してから、そのまま質問を続けてみる。

 しかし私は、質問をした次の瞬間には絶句してしまった。


 印象的に煌めく、金色の左目。

 海のように綺麗な、青色の右目。


 ……この時点で、私の記憶には一人しか該当してこないわけで……。



「ひゃひっ!?

 も、もしかして……? アイナ……様……、ですか……?」


 驚きながら、私は何とか声を振り絞った。

 そんな私の言葉に、目の前の女の子はくすりと笑う。


「初めまして――って感じもしないんだけどね。

 私は錬金術師のアイナ。朝ごはん、食べられそうかな?」


「は、はい……。頂きますっ!!」


 ……まさかの出会い。

 状況は未だに分からないけど、とりあえずこれから朝食が始まるらしい。


 私は大人しく、アイナ様に従うことにした。

 ……お腹も正直、かなり空いていたりするし……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 朝食のメニューは、割とオーソドックスな感じだった。

 しかしそのひとつひとつがとても美味しく、頬張る度にほっぺが落ちそうになってしまう。


 何だかほっぺが痛い。

 美味しいけど痛い。

 ……こう言うこと、たまにあるよね。


「お、美味しいですっ!

 うわー、何これ……」


「あはは、ありがとね。

 誰も取らないから、ゆっくり食べて大丈夫だよ」


 その食卓には、私とアイナ様の二人だけだった。

 ……この辺りを踏まえると、ここはアイナ様の家……ってことになるのかな……。


「は、はい! ありがとうございます……!

 ……ところであの~……。ここって、どこなんですか……?」


 私は食べる合間に質問をしてみた。

 アイナ様も同様に、食べる合間に答えてくれた。


「ここは私の家だよ。

 ……って、そう言うことを聞いてるんじゃないか。

 あなたが襲われていた場所の近く……って言えば、近くの場所になるのかな」


「あ……。

 魔物に襲われたのって……やっぱり夢じゃ、無かったんですね……」


「夢なら良かったんだけどね。

 その証拠に、あなたが着ていた服……かなりボロボロになっているけど。

 どうする? 持って帰る?」


「はい……。他に服、持ってきていませんので……」


「あ、服なら何着か余分があるよ。

 1着くらい、持っていく?


 そう言いながら、アイナ様は部屋の隅を目で促した。

 そこには何着かの服が、ハンガーで吊り下げられている。

 ……何だか全部、質が良さそうな感じだけど……。


「いえ、ボロボロでも大丈夫ですから……。

 お借りするにはちょっと、高そうと言うか……」


「そんなことも無いよ。何せ、私が作ったやつだからね。

 誰かにあげるつもりで作ったわけだし」


「……え?

 お料理もこんなに上手なのに、裁縫まで出来ちゃうんですか……?」


「上手いかどうかは置いておいて、いろいろ挑戦してみているの。

 最近は陶芸とかに凝ってて――……って、それは置いておいて。

 手慰みに作った服だからさ、遠慮なく持っていって大丈夫だよ?」


「う……、助かります……。

 ところで、あの……。私って、どうやって助かったんでしょう……?

 スケルトンやゾンビみたいな魔物に襲われていたと思うんですけど……」


「ああ、うん。

 私がぱぱーっと倒しちゃった。……みたいな?」


「えぇ……?

 あんな魔物まで倒せちゃうんですか……?」


「ふふふ♪

 それでそのあと、怪我を治してからここまで連れてきたんだけど……。

 えーっと、ミーシャさん、だよね?」


「あれ? 私の名前、何で……?」


「冒険者ギルドのカード、持っていたでしょ?

 『ここ』に入るときは、その情報を取得できるようになっているの」


「はぁ……。

 ……えっと、『ここ』……って?」


 話をしながら、私は徐々にわけが分からなくなってしまった。

 『ここ』って言うのは、アイナ様の家のことなのか……。それとも、この辺り一帯のことなのか……。


「ああ、ごめんね。混乱しちゃったかな。

 ……ここはね、『魔女の迷宮』の下層だよ。

 ミーシャさんが起きそうに無かったから、とりあえずここまで連れてきちゃったの」


「え? この家って、迷宮の中にあるんですか?」


 ……私は驚いてしまった。

 窓から見える光景は、平和そのものの森の中。

 私が死に掛けていた場所も森だけど、そことはまるで雰囲気が違う。


「詳しい話は省略するけどね。

 それでさ、怪我は全部治したけど……、気持ち的に、かなり疲れちゃったでしょ?

 もう1日くらい、ゆっくりしていけば良いと思うよ」


「え? それはありがたいですけど――

 ……あ、そうだ。私、『闇色の草』を取りに来ていて……」


「ん、それなら大丈夫。しっかり、鞄の中に入っていたから。

 大変だったよね。良く頑張りましたー」


 アイナ様はそう言いながら、可愛く微笑んでくれた。


 こんな女の子が伝説の錬金術師で、不老不死で――

 ……そして、私の命を助けてくれた人だなんて。


「――……あっ!?

 す、すいません! 助けて頂いたお礼、まだしていませんでした……!

 あの、今回は本当にありがとうございましたっ!!」


「どういたしまして。

 お小言は学院長先生に任せるから、私からは何も言わないけど……。

 でも、あんまり無茶なことはしないようにね」


「……う゛。

 や、やっぱり……、怒られちゃいますか……?」


「そりゃそうだよー。

 だって、ここへの立ち入りは禁止しているんだもん。

 本当なら、私だってわざわざ助けにはいかないところだよ?」


「はぅ……。

 ……でも、そうしたら何で……?

 私のこと、何で助けて頂けたのでしょう……?」


 私がそう聞くと、アイナ様は少し考えてから口を開いた。


「うーん……。

 あなたのこと、存在はずっと前から知っていたからね。

 ……だから、見殺しには出来なかった……って言うのかな……」


「ずっと、前から……?」



 要領はどうにも得られないけど……。

 でもそのおかげで、私は気まぐれに助けてもらえたのだ。


 ……『気まぐれ』と思った瞬間、私はぞっとしてしまった。

 本来は失っていたかもしれない、人生。そして命。


 しかし私は今回、何とか命拾いをすることが出来たのだ。

 それも、『闇色の草』と言う目的を果たした上で……。


 ……でも、帰ったら学院長先生から怒られるんだよなぁ……。


 あああー……。

 ちょっと……いや、かなり怖いなぁ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] ついについに待ってた「あの人」が出てきたーっ!! 材料も揃ってここから一気にお話が進みそう、楽しみっ!!!
[一言] 娘の友達だもんねぇ この子はほんと運が良い
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