Ex45.闇色を求めて
週末も終わり、再び授業が始まった。
授業はしっかり熟しつつ、私は時間の合間に『神竜の雫』の素材を探していく。
『竜の血』は、売っている場所は分かっているものの、より安い入手先を。
『虹色キノコ』は、ポッポル君の回答待ち。
……となると、私がまず探すのは『闇色の草』になる。
それ以外の『米』やら『米麹』は、錬金術学院で入手できそうだった。
S級以上……と言う制限があるから、お取り寄せになるみたいだけどね。
値段も高くなってしまうけど、それでも他の素材よりはずっと手に入りやすいイメージだ。
「それにしても、『闇色の草』かぁ……」
名前が『闇色』だけに、きっと黒々とした草なのだろう。
今までそんな草は見たことも無いけど、だからこそレアな素材……と言うべきか。
ちなみにクラスメートに聞いたところ、知っている人は誰もいなかった。
先生にも聞いてみたけど、名前しか知らない人ばかりだった。
やっぱりそれなりの錬金術師でも、実物を見たことは無いようだ。
……そんな素材、私が見つけられるものかなぁ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
放課後、図書館に行ってみるとエリナちゃんに会った。
最近はあまり話せていないから、この偶然は嬉しいところだ。
「エリナちゃん!」
「あ、ミーシャさん。
お久し振りです……!」
「うん、お久し振り~♪
今日は図書館で、調べ物?」
「はい!
本を読んで、いろいろなアイテムの知識を詰め込んでおこうかと思いまして……」
「おー。鑑定士の勉強、頑張ってるね」
「えへへ……。
そう言うミーシャさんも、調べ物ですか?」
「うん、ちょっとね。
今は……『闇色の草』って言うのを探しているの」
「闇色の……? あ、私も聞いたことはあります。
確か、鑑定士の勉強会で……だったかな」
「へー? そう言うのがあるんだ?」
「はい。案外、同好の集会みたいなのはたくさんあるんですよ。
中には魔女を崇める危険な集団……みたいなのもあるそうなんですが」
「うわぁ、何それ……」
「さぁ……?
噂だけなので、私も具体的には……。
……と、それはそれとして、『闇色の草』ですよね」
「うん、何か知っているの?」
「えっとですね……。
暗い森の中に生えている草らしいんですけど、秋から冬に掛けてしか採れないそうで……。
春から秋までに掛けての『有』から、冬の停滞の『無』に移るときの、不思議な力が宿るそうですよ」
「秋から冬……。
……え? もうすぐ冬だけど……?」
収穫祭が終わってから、もう1か月以上が経つ。
その間に世界は冬の気配を帯び始め、今はもう冬だと言い張れば冬のような気がしてしまう……そんな時期だ。
「そ、そうですね……。
でもすいません、それ以上のことは分かりません……。
あと、あくまでも話の中でちらっと出て来ただけの内容なので……」
「うん、大丈夫。それは認識しておくね」
「はい、手に入ることを祈っています……!
それでは、私は調べ物があるので……」
「おっけー、ありがとね!」
私は図書室の中でエリナちゃんと別れて、しばらく本を探してみることにした。
……残念ながら、良い本は何も見つけることが出来なかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
図書館から出たあとは、そのまま魔法関連のお店に向かった。
『竜の血』があるのは確認済みだけど、ところで『闇色の草』はどうだろう……と思った次第だ。
「ひょっひょっひょっ……。
いらっしゃい、『竜の血』を買う決心はついたかね~?」
「金貨20枚で!」
「……この前、21枚に上げていなかったかね~……」
「相場は刻々と変化するものですよ!」
「そりゃそうなんだけどね~……。
それで、今日はどうしたんだね~?」
「はい。『闇色の草』って素材を探しているんですけど、ありますか?」
「ひょっ?
またレアなものを……。一体何を作るのかね~?」
「それは秘密、ってことで!
それで、ありますか?」
「残念ながら、扱ったこと自体が無いね~。
そもそも見たことだって、1回しか無いからね~」
「え? 1回はあるんですか?
詳しく教えてください!」
「おうともさ。
形は普通の草なんだけど、色が真っ黒なんだよね~」
「……名前のままですね!」
「それで、その色がちょっと特別でね~。
ほら、黒いものだとしても、多少は光ったり立体感があるものだよね~?」
「え? はぁ、そうですね」
「『闇色の草』は、まるで墨を垂らしたように、真っ黒でね~……。
そうだね、光を飲み込む漆黒……とでも言おうかね~」
「はぁ……。それじゃ、見ればすぐに分かりそうですね」
「ああ。そんなものが地面に生えていれば、無駄に目立つからね~」
「それで、入荷のご予定は?」
「無いね~……。
そもそも市場には出まわらないものだからね~。
出て来たところで、オークションにまわってしまうんじゃないかね~?」
「オークション……。
また、お金の問題が……」
「ただ、そうは言っても『竜の血』よりはチャンスがあるはずだよね~。
何せ、別にドラゴンを倒さなくても良いんだから……」
「あ、そうですよね。
生えていれば、それを採るだけですし。
……でも、そこら辺の森には生えていませんよね……?」
「さすがにね~。
ただ、この付近では1箇所だけ、生えているかもしれない場所はあるね~」
「え、本当ですか!?
それってどこですか!?」
まさかこの付近に、採れる場所があるだなんて!!
……でもそんなにホイホイ手に入るんじゃ、レアな素材とは言えないよね……。
となると、可能性はあってもなかなか見つからないってことなのかな……。
「ん~……。
あんたぁ、錬金術学院の生徒なんだよね~?
残念ながら、そこに入ることは禁じられているはずだね~」
「え? ……そんなぁ!」
「ルールはルールだからね~」
……でもそれ、どこかで聞いたような話の気がする。
前に聞いたのって、エリナちゃんからだったっけ……?
このあとも粘着質な感じでお婆さんに聞いてみたが、上手いことはぐらかされてしまった。
……くそう。
こうなったらまた、明日にでもエリナちゃんに聞いてみることにしよう……。




