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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
外伝 ミーシャのアトリエ ~ラミリエスの錬金術師~
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Ex19.休暇の準備

「はぁ……」


 ひとまず朝は起きられたものの、最初の授業はまるで集中が出来なかった。

 あまり眠ることも出来ず、初対面の妖精から受けた無慈悲な評価が頭の中で無限ループをしていたのだ。



 ――錬金術師としては、下の下。



 いや、確かにその通りなんだけどね?

 だってまだ勉強中の身なわけだし……。


 でも妖精なんて言う非日常的な存在から……、しかも初めて会った子にだよ?

 『下の下』なんて言われた日にゃ、それはショックを受けてしまうわけで……。

 その下の存在なんて、多分無いはずだし……。



「ミーちゃ、どうしたの?」


欠伸(あくび)ばかりしていると、先生に怒られてしまいますわよ?」


 私の授業態度を見兼ねたのか、リリーちゃんとミラちゃんが休み時間に声を掛けて来てくれた。

 後ろの席に座っている二人からそう見えるのであれば、多分先生からは……ああ、怖い。


「うぅ……、昨日はあまり眠れなくて……。

 ちょっと不思議で、ちょっと嫌なことがあってさ……」


「不思議で、嫌なことなの?」


「気になりますわね。何があったのですか?」


 ……昨日の夜、妖精が突然現れた……なんて言って、信じてくれるかなぁ。

 でもこの二人なら、何を言っても驚かないで聞いてくれる気がしてしまう。


「あのさ……、二人は妖精って見たことがある……?」


「妖精さん? たまに見掛けるの!」


「たまに――

 ……あれ? 結構会える感じなの?」


「それは人によりけり……ですわ。

 ずっと会うことが出来ない人もいますし、それこそ一人で7人と契約する方もいますし」


「あ、それって『七色の錬金術師』レティシア様のことだよね。

 伝説上の人物だけど、会ってみたかったなぁ。きっと凄い人だったんだろうなぁ」


「そうでも無かったのー」


「……え?」


 突然のリリーちゃんの言葉に、私は頭が真っ白になってしまった。


「ああ、失礼。

 リリーは建国当時の歴史マニアなので……ええ、いろいろと詳しいのですわ」


「は、はぁ……。

 でもそんなこと、どこで調べたのやら……」


 一度机に突っ伏してから、リリーちゃんの顔を改めて見ると……彼女は何だか痛そうな顔をしていた。

 ……あれ? どうしたんだろう。


「それで、妖精がどうかしたのですか?」


「う、うん……。

 信じてくれるかは分からないけど、昨日の夜中に工房で会ったんだ……」


「ふぇー。ミーちゃ、なかなかやるの!

 それで、捕まえたの?」


「つっ、捕まえなんていないよ!?

 ……妖精って捕まえるものじゃないよね? 契約するものだよね?」


「その通りですわ。

 聖国では妖精にも人権が認められていますので、不法に捕らえた場合は罰がありますし」


「おっと、そうなんだ……。

 でも捕まえてもいないし、契約もしていないんだよー……」


「その妖精さん、何かしていったの?」


「ううん……。

 私のこと、『錬金術師としては下の下』って言って、そのまま帰っちゃった……」


「むむ……? その子、もしかして眼鏡を掛けていたの?」


「眼鏡……?

 どうだったっけ、そう言われてみれば掛けていたような……?」


 ……残念なことに、そこまでの記憶は残っていなかった。

 突然の出来事だったし、それに相手も小さかったし……。

 そして『小さい』に気を取られて、正直顔もあまり覚えていないし……。


「うーん……。

 言葉遣いから察するに、ターニアのような気がしますわね」


「え? まさか、ミラちゃんの知り合い?」


「知り合いと言うか、ただ単に知っているだけですわ。

 お母様のところによく来ているものですから」


「えぇっ!? 何でまた!?」


「『押し掛け眼鏡』は、ママと契約をしたがってるの!」


「おしかけめがね……。

 えっと、それってターニアって妖精のことだよね……?」


「なの!」


「つまり、二人のお母さんのところに押し掛けている……と」


「ミーシャさんが借りている工房も、以前はお母様が管理していましたので……。

 もしかして、その関係で様子を見に行ったのかもしれませんわ」


「なるほど……?

 行ってみたら誰かがいたけど、よりにもよって『錬金術師としては下の下』の私がいた……と」


「まぁまぁ、ミーシャさん。

 あまり気になさらずに……」


「うん……、頑張る……。でもやっぱりへこむ……。

 ……ところで話は変わるけどさ、二人は休暇の間は何をするの?

 私はアルバイトもしようかなーって思っているんだけど」


「もちろんお勉強なの!」


「私も同じくですわ。

 勉強は出来るうちにやってしまわないと」


「おー……。

 それじゃ、特にアルバイトとかはしないんだ」


 ……二人の家はお金持ちだしね。

 環境なんて人によって全然違うから、そんなところで(うらや)んでも仕方が無いんだけど。


「アルバイトじゃないけど、ボランティアはやる予定なの。

 孤児院で、ポーション作りを見せてあげるの♪」


「そうなんだ?

 うぅ、思い掛けず立派な活動をなさることで……」


 小さな子に錬金術を見せて、新しい道を示す……。

 手に職を付けさせて、自立の道を促す……。

 ……うん、何だかリリーちゃんがキラキラと輝いて見えてきた……。


 それに引き換え、私はお金、お金、と……。

 ……いやいや、それも引いては自立のためなんだけど……。


「もうしばらくすれば、休暇に入ってしまいますわ。

 お互い有意義な休暇を過ごすことにいたしましょう♪」


「うん、そうだね……」


 出来ればリリーちゃんとミラちゃんとも、少しくらいは遊びたいところだけど……。

 ……時間的に厳しそうだなぁ。特に私の……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 それから1週間ほどを掛けて、私は休暇中の予定をびっしりと埋めることに成功した。

 ……かなり、びっしり。


 一応ちょこちょこと空白の日を作っているものの、ここはフランと一緒に過ごす予定だ。

 休暇の間に、フランの恋を成就させる手伝いをしなきゃいけないからね。


 帰省することも考えたけど、聖都に来てからまだ1か月も経っていないし……。

 次に帰るのは、きっと来年になるかな。


 可能であればイーディスのための薬を何かしら作って、それをお土産にしたいところだけど……。

 でも今の調子じゃ、多分無理だろうなぁ……。



「……調べ物の時間はかなり取ってみたけど……。

 良い本は見つかるかな……」


 せめて病気の手掛かりくらい。

 出来れば薬の手掛かりくらい。

 理想を言えば、何とか目途を立てることが出来るくらい……。



 ……自由に出来る時間がたくさんあるのは良いことだ。

 上手くいけば、私は目標まで一気に近付くことが出来るだろう。


 しかし上手くいかなければ、目標までの距離は何も変わらないまま。

 そんなことを考えてしまうと、どうしても焦燥感に囚われてしまうところだけど――


 ……でも、やるしかない。


 一日一日を大切にして、私は可能な限り目標に近付かないといけないのだ。

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[一言] アイナさんにぐいぐい行く子がいるとは
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