最終話+.『聖国の歴史 建国時の主要人物』
本資料では、クリスティア聖国の建国に尽力した、主な人物を紹介する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――【神器の錬金術師】アイナ・バートランド・クリスティア
絶対神アドラルーンの使徒。
クリスティア聖国の建国式典の際、偉大なる奇跡を起こしたことが、その証拠とされている。
神剣アゼルラディア、神杖フィエルナトス、神煌クリスティアの、三つの神器を作成した錬金術師でもある。
隣国のヴェルダクレス王国とは因縁があったが、建国の際に和解。
その他諸国とも良好な関係を築き上げ、世界の平和に大きく貢献した。
未だに存命の、生きる伝説である。
――【竜王騎士】ルーク・ノヴァス・スプリングフィールド
『神器の錬金術師』アイナと共に、建国の礎を築いた剣聖。
名門スプリングフィールド家の初代当主であり、建国の前後には大きく活躍をしたとされる。
神剣アゼルラディアが家宝として伝えられており、第三騎士団の団長職は、実質的に世襲制となっている。
また、ノヴァス流剣術の祖としても有名。
クリスティア聖国においては、数多い流派の中でも大きな割合を占めている。
――【暴食の聖女】エミリア・リデル・エインズワース
『神器の錬金術師』アイナと共に、建国の礎を築いた賢者。
ルーンセラフィス教の司祭として修行を積んでいたとき、疫病が流行っていた村でアイナと知り合う。
その後、『竜王騎士』ルークと共に、クリスティア聖国の建国に大きな役割を果たすことになった。
第三魔法師団の団長を辞したあとは、セレスティア教団の初代教皇の座に就く。
晩年、『エミリアの秘宝』と呼ばれる秘宝を遺したとされるが、詳細は不明。
――【隠密の双剣】ジェラード・レスター・マクドネル
『神器の錬金術師』アイナと共に、建国の礎を築いたとされる謎の人物。
非公式の諜報部隊の設立に関わったとされるが、あくまでも推測であり、確たる証拠は未だに見つかっていない。
なお、クリスティア聖国よりも、周辺諸国での目撃情報が多いことが、その特殊性を物語っているだろう。
最後に姿が確認されたのは建国の3年後と言われ、その後の所在は不明。
断片的な記録しか残っておらず、人物像は良く分かっていない。
――【神域の芸術家】アドルフ・カール・ギリングズ
『神器の錬金術師』アイナに神器の素体を提供した職人として、あまりにも有名。
そもそもは魔法剣を専門とする鍛冶師だったが、アイナからは様々な仕事を依頼されたと言う。
『ギリングズ』ブランドの創始者でもあり、宝飾品を中心に、そちらでも名前が知れ渡っている。
死の直前、自らが『最高傑作』とする剣を鍛え上げる。
この剣はクリスティア聖国の王城に展示されており、『鍛冶師の最頂点』とも称されている。
――【賢王】ファーディナンド・ジェフ・グランベル
クリスティア聖国の初代国王。
元々はヴェルダクレス王国の公爵家に生まれたが、公爵家を追放されたあと、『神器の錬金術師』アイナに拾い上げられる。
政治感覚と洞察力に優れ、常に最善の選択をしたと伝えられる。
建国後に結婚。5人の子供が生まれるも、3人が他界。
その後、ザイラード共和国との戦争があったことから、何らかの陰謀説が囁かれている。
――【沈黙の魔術師】ヴィオラ・シェリル・グランベル
クリスティア聖国の第二魔法師団、初代団長。
一卵性双生児との言い伝えも存在するが、その証拠までは遺されていない。
養父である『賢王』ファーディナンドから王位継承権を与えられるも、これを放棄。
終生を魔法の研究に費やし、多くの書物を遺した。
『空間』や『時間』と言う、難解な分野の基礎理論を作ったことでも有名。
――【微笑みの豪商】ポエール・ミラ・ラシャス
クリスティア聖国の商業網を構築した大商人。
ヴェルダクレス王国の大商人、ピエール・タオ・ラシャスの実弟。
建国前から『神器の錬金術師』アイナとの交流があり、あらゆる助力をしたと伝えられる。
人当たりの良い性格と天性の商才により、莫大な財産を築き上げた。
反面、命を狙われた回数も多く、一説には100回を越えるとも言われている。
――【革命の母】アイーシャ・ルクス・アドリエンヌ
ヴェルダクレス王国の統治下にあった衛星都市クレントス(※旧:辺境都市クレントス)で反乱を起こした革命家。
『神器の錬金術師』アイナとは旧知の仲で、クレントスのクリスティア聖国への編入はスムーズに行われたと言う。
建国後、3年後に他界。
家族はいなかったため、全ての財産はアイナが相続したとされている。
――【甘味の支配者】ルーシー・ダーラ・アータートン
『ベーカリー・ルーシー』や『カフェ・ルーシー』など、多くの飲食店を経営していた才女。
クリスティア聖国における人気店は、彼女の影響を何かしら受けていると言われる。
余談ではあるが、『レシピ・オブ・ルーシー』という伝説のメモが存在するらしい。
料理研究家たちは、大金を賭けて追い求めているのだと言う。
――【伝説のメイド長】キャスリーン・クリーズ・スプリングフィールド
『竜王騎士』ルークの妻。
『神器の錬金術師』アイナの屋敷に仕えていたメイドで、そのときの経験をもとに、『メイド規範』と言う書物を執筆した。
グランベル王家に仕えるメイドたちは彼女を師事し、大きな影響を受けたとされる。
――【空想表現】セシリア・エルキン・アストリー
ガルルン教の『ガルルン』をこの世界に表現した、伝説のデザイナー。
子供時代には既にご神体を作っていたとされ、ガルルン神からの神託を受けたと解釈されている。
成人後も高品質のデザインを手掛け続け、クリスティア聖国中で様々な実績を目にすることが出来る。
――【百獣の主】グレーゴル
クリスティア聖国の魔獣軍、初代軍団長。
多くの魔獣を引き連れて、数々の侵攻を退けた。
ベストセラーになった、純愛小説の主人公のモチーフとも言われている。
しかしその作品と同様、彼の恋が実ることは無かったようだ。
――【光竜王】グリゼルダ
ヴェルダクレス王国に封じられていた、『光竜王』ヴェセルグラード・ゼルゲイドの生まれ変わり。
クリスティア聖国が建国される前年、強大な敵との戦いで命を落としたとされる。
『強大な敵』と言うのは詳しく伝えられていないが、建国以来、ささやかな追悼式が毎年行われている。
――【水竜王】セミラミス
『神器の錬金術師』アイナの、魔法の師の一人。
建国当時は『氷竜』だったが、その後『水竜王』の格を得て、クリスティア聖国に帰還する。
『セレスティア・ラミリエス』が正式な名前だが、周囲の人間からは親しみを以って『セミラミス』と呼ばれている。
アイナと同様、未だに存命である。
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――以上のことは、各所の記録や伝説を取りまとめたものである。
不確かな内容が多く含まれるため、新しい情報を入手するたび、再度検討することにしていきたい。
聖国歴152年
グレイディ・カード・オールディス 著




