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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第3章 鉱山都市ミラエルツ
81/911

81.神スキル×3

 ミラエルツ最終日の朝。

 今日も今日とて天気良し。窓から差し込む朝日はいつも通り気持ちが良い。


「――はぁ、この部屋ともお別れかぁ……」


 この一か月、毎日寝泊まりをした部屋に少なからず愛着が湧くのは仕方ないというものだろう。

 しかし宿屋に泊まっている限り、いつかそこを離れなければいけない日が来るのは当然のことなのだ。


 そういえば、私もいつかは自分の家を持ったりするのかな?

 何せ不老不死だからね。ずっと宿屋暮らしというのもあり得ないだろう。


 家を持つ――となると、私の旅の目的を終えたときかな?

 つまり神器を作成し終わったとき……なんだけど、別に神器はひとつしか作れないとは限らないわけで、そうなると家を持つのはいつになることやら。


 もしくは王都なら王都にもう自分の家を構えて、あとはそこを拠点に行動をするっていうのも良いかもしれないね。

 王都の家がどれくらいの値段かは分からないけど、稼ぐ方法なんていくらでもありそうだし。


「夢は広がるけど、まずは一歩一歩……と」


 そうつぶやきながらひとつひとつ部屋のお片付け。立つ鳥跡を濁さず――って言うからね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「おはよー」


「「おはようございます」」


 部屋の前でいつものように三人で合流。

 ここで合流するのもこれが最後になるのかな。いちいち最後が続いてしんみりしてしまう。


「アイナさんとルークさんとここで挨拶をするのも、これが最後なんですねぇ……」


「そうですね。何ともしんみりしてしまいますね」


「あ、二人もそうなんだ?」


「アイナ様もですか?」


「そりゃねー。何せ一か月もここにいたんだから。

 それにいろいろあったし、思い出もたくさんだよ」


「そうですね、いろいろありました。この一か月の思い出は、私、一生忘れませんから!」


 エミリアさんがそんなことを言う。そういうことを聞いちゃうと、しんみり具合に拍車が掛かってしまうよ。


「まぁまぁ、先はまだありますから。

 次の宗教都市メルタテオスと、その後の王都。まだまだエミリアさんにはお世話になりますよ!」


「ふふふ、そう考えるとまた楽しくなってきました。

 アイナさんたちともっと思い出を作れるんですから」


 ……なんだこの可愛い生き物。

 私と同性だけど、こうも違うように成長するものなのか……。もしかして異世界パワー!?

 ――なわけはないよね。


「そうですね、もっと思い出を作りましょうね!

 さて、それでは現実に戻って出発の準備をしますか。荷物は私のアイテムボックスに入れていくので、入れたいものは出してくださいね」


「はぁい。それでは私はこの荷物を――」


 エミリアさんは自分の部屋の扉を開けて、近くに置いていた荷物を出してきた。


「それじゃ入れていきますね。すぐ使うものとかお金は持っておいてくださいねー」


「はーい、大丈夫でーす」


「……っと、ちょっと増えましたかね?」


「ああ、そうですね。本とかちょっとしたものとか買っていたので」


「なるほどなるほど。――はい、おしまい。

 ルークも準備は大丈夫?」


「はい、私はこの荷物をお願いします」


「はいはいっと。……ルークは買った鎧くらいかな、増えたのは」


「そうですね」


「いくらでも持てるから、欲しいものがあったらどんどん買っても大丈夫だからねー」


「はい、分かりました。でも旅路ですからね、なかなか物を増やすというのはどうにも」


「それは正しい旅だよね。私がアイテムボックス持ちだからアレなんだけど……」


「アイナさんって錬金術スキルと鑑定スキルと収納スキルが何だかおかしいですからね。

 レベルはおいくつなんですか?」


「えっ」


「まぁまぁ、エミリアさん。そういう詮索は無しですよ」


 ルークが穏やかに注意する。

 うーん……でもさすがにこれだけの付き合いをしているわけだし、そろそろそれくらいは教えても良いのかな?


「――えっと、他の人に黙っててくれるなら教えても良いんですけど……」


「大丈夫ですか? アイナ様」


「まぁ隠しておきたいことは他にもあるけどね、それくらいならまぁ……」


「無理しないでも大丈夫ですけど、アイナさんが教えてくれるというなら是非!

 私の予想だと、レベルは70くらいかなって思うんですよ!」


「ははは。エミリアさん、レベル70なんて伝説級じゃないですか。私はレベル50くらいかと思いますね」


 ルークも実は案外聞きたそうな様子。しかも予想については何やら自信満々である。


 そういえばユニークスキル『情報秘匿』を持ってるから、他の人から見ると私の錬金術ってレベルが低いんだよね。

 せっかくだし、このタイミングでルークの50くらいを採用して更新しておこうかな。


 それじゃ一般スキルだけちょっといじって――よし、こんな感じで!


「それじゃ鑑定のウィンドウを出しますね。あ、一般スキルのところだけですけど」


「どきどきです!」

「緊張しますね」


 ----------------------------------------

 【アイナ・バートランド・クリスティア】

 一般スキル:

  ・錬金術:Lv99(Lv51)

  ・鑑定:Lv99(Lv52)

  ・収納:Lv99(Lv50)

 ----------------------------------------


「はい、どうぞ!」


「むむむ……? アイナさん、何だか表記が見慣れない感じになってるんですけど……?」


「50くらいのと99がごちゃ混ぜになっていますね?」


「えっと……ちょっと訳ありで、対外的には括弧の中のレベルで見えるのです。

 で、本当のレベルは外の数字」


「へぇ……。そうすると、アイナさんの錬金術は対外的にはレベル51に見えるけど、本当のレベルは99ということなんですね。なるほど――……って、はぇ?」


「…………99……」


「うん、三つともレベル99……」


「…………」


「…………」


「…………ま、まぁ、なんというか……」


「…………そ、そうですね。アイナ様ですし……」


「他の人に言っちゃダメですからね? いざとなれば50くらいの方でシラを切り通しますので!」


「……アイナさん、さすがにこれは誰も信じられないと思いますよ……」


「私、すごい方をお護りしているんだなと、そんな思いで胸がいっぱいです……」


 何だろう、何かこの感じは懐かしいぞ。

 最近は錬金術で何かを作っても軽く流されるけど、ここまで引かれたのは少し懐かしい。


「ちなみにルークさん、一般スキル以外のところも恐ろしいことになっていそうなのですが」


「ははは……。そこは見ない方が良さそうですね……」


 ちなみにルークはレアスキル『不老不死』のことは知っているけど、それ以外のところは知らないんだよね。

 まだ言う必要は無いとは思うけど、さすがに神器作成のことを話すときになったら言うことになりそうかな。


 ――でもそれはまだ、先のお話なわけで。


「……とまぁ何やらこんなレベルですが、引き続きよろしくお願いします」


「はぁい。少し驚きましたけど、さらに尊敬するようになりました!」


「私もです。アイナ様にお仕えすることが天命だったように思えてきました」


「ああ、うん……。でも、これからも今まで通りの感じでお願いしますね、本当に」


「「はい!」」




 実は途中から、話すことにして失敗したかとも思ったんだけど、嫌な方向に話が進まなくて良かったかな。

 これで態度を急変されたらかなり落ち込んだと思うけど……うん、やっぱりこの二人は良いよなぁ。大好きだー。

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