表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
最終章 私たちの国
790/911

790.のんびり昼食

 メイドさんたちはいつも、使用人たちの食事も作っている。

 今日の昼食は私も全面的に作っていたから、当然クラリスさんの知るところにもなってしまった。


「も、申し訳ございません……。

 アイナ様に食事の準備をさせてしまうだなんて……」


「いやぁ、こっちこそ無理を言っちゃって……。

 だからマーガレットさんは責めないであげてね」


「……はい、かしこまりました。

 それにしてもミュリエルさんとドローシアさんは――」


 ……と言っているところで、その二人が帰ってきた。

 相当に急いできたようで、息を大きく切らしている。



「お、遅れて申し訳ございません!

 ああっ、アイナ様!? 今すぐ昼食の準備を――」


「あ、ごめん。作っちゃった♪」


「えっ!?」


 ミュリエルさんが驚きながらテーブルの料理を見ていると、その後ろからドローシアさんが顔をひょっこり出してきた。


「うわ~……。

 これ、アイナ様が作ったんですか?」


「そうだよー。みんなで食べようね♪

 ……ところで二人は、何で遅くなったの?」


「は、はい……。

 実はドローシアさんがお店の商品を全部ひっくり返してしまって……」


「そ、そうなんだ?」


 でもまぁ、それくらいは予想通りだ。


「その勢いのまま、近くの水路に落ちてしまって……」


「何でっ!?」


「落ちた先で金塊を見つけたので、騎士団に届けを出しに行っていたんです……」


「予想外の展開っ!!」



 ……現実は小説よりも奇なり。

 世の中、よく分からないことが起きるものだなぁ……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――ひと休みしたあとは、お待ちかねの昼食の時間。

 今日は私が作ったと言うことなので、折角だから給仕も私が――


 ……と思ってみたのだが、当然のようにクラリスさんに断られてしまった。

 昔、エミリアさんと一緒にメイドの真似事をしたことがあったけど、あれも結構楽しかったんだよなー……。


 今回は結局、メイドさんたちと一緒に食卓を囲むことになった。

 たまにはこう言うのも良いよね。あったかホーム、うちのお屋敷。



「おぉ! 今日はアイナさんが作ったんですか!

 珍しいですねっ」


 エミリアさんが嬉しそうに言ってくる。


「いつもの食事よりも少し雑ですが、そこはご容赦を!」


「これで雑って、嫌身にしか聞こえませんよ!?」


「え、そうですか? 私、上達してます?」


「はいっ!

 うーん、美味しいっ! いくらでも入っちゃいます♪」


 早速食べ始めるエミリアさんだが、いくらでも~……のくだりはいつも通りなのでは……。

 ……うん、いつも通りだ。



 食事が進む中、メイドさんたちも何やら話をしている。


「……凄いですね、アイナ様……。

 お料理まで出来ちゃうんですか……」


 そう言うのはドローシアさん。

 例によって、何だかとろーんとしてしまっている。


「凄い包丁捌きでしたよ……!

 それに手順に無駄が無くて、途中で錬金術も使っていたみたいですが――」


 具体的にレポートするのはマーガレットさん。

 私と一緒に準備をしていたから、結構細かいところまで見られてしまっていた。


「くぅ……。私も見たかったです……。

 ……うぅ、私よりも美味しいっ」


 残念がるのはミュリエルさん。

 ……え? さすがにミュリエルさんよりは、美味しく出来ないと……。


 ああいや、きっとミュリエルさんが上手く作れたときとの比較だよね。

 そうじゃないと、さすがにちょっと。


「私たちとは少し違う味付けですが……。

 少し濃い目? 野営で提供されるものでしたら、食べるのは身体を動かす方々でしょうし……ふむ」


 食べながら納得しているのはクラリスさん。

 今日はお休みと言うことで、彼女は私服での参戦だ。

 ……メイド服に着替えようとはしていたんだけど、今日は大丈夫と言うことで。



「ほっ。それなりに好評で良かったー。

 キャスリーンさんの分もあるから、あとで食べてもらってね」


「はい、かしこまりました。

 アイナ様の手作りと聞いたら、あの子も喜ぶと思いますよ」


 クラリスさんの返事に、私も気分が良くなってくる。


「それじゃ、デザートも作っちゃおうかなー♪」


「いえ、さすがにそこまでは……」


 ……やっぱり許してくれないか。

 作るのがダメなら、とりあえずきんつばでも置いておこう。

 料理がダメなら錬金術で……と言う寸法だ。



「あ、きんつばですね!

 やったー、いただきまーす♪」


「エミリアさんには、毎週差し入れをしていますよね……?」


「病みつきになる美味しさ!

 控えめで上品な甘さに、毎回感動してしまいます……!」


 ……ちなみに品質は、いつも通りのS+級。

 それを毎日食べられるエミリアさんはしあわせ者である。


「そう言えば、ルーシーさんのお店でもきんつばをアレンジしたケーキを出していましたね」


「あ、私も休日に食べてみました!

 『ワフウ』ってやつですよね!」


 ドローシアさんが身を乗り出して話に入ってきた。

 そうそう、『ワフウ』。いわゆる『和風』


 そこにクラリスさんも入ってくる。


「その商品のおかげで、ルーシーさんのケーキ屋も大繁盛だそうです。

 アイナ様も、発案料を頂いた方が良いのではないですか?」


「さすがにそれは、要らないかなぁ……。

 ほら、売れれば私にもお金が入ってくるし」


「え? そうなんですか?」


 ドローシアさんがきょとんと言ってきた。


「アイナ様は、この街の元締めのような方ですから。

 だからドローシアさんも、しっかりお仕えしなければいけませんよ」


「もももっ、もちろんですっ!!

 大船に乗ったつもりでお任せくださいっ!!」


 ひとまず大船を想像してみたが、残念なことに泥船しか思い浮かんでこなかった。

 ……いやいや、さすがにこれは失礼か。


「あはは、よろしくね。

 やる気があれば、私のお屋敷は永久就職だから。

 だからたくさん、頑張ってね」


「はいっ、ありがとうございますっ!

 それでは洗い物はすべて私がっ!!」


「お皿、割らないようにね!」


「はい、もちろんですっ!!」



 ――ガチャーンッ



 ドローシアさんが元気に立ち上がると同時に、彼女のお皿が落ちて割れた。


 ……早い早い。

 タイムアタックでも狙っているのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 皿割りのタイムアタックって
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ