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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
782/911

782.続行

 私たちが光のキラキラに飛び込むと、来たときと同じような浮遊感が襲って来た。


 でも、これは一瞬。

 このあときっと、私たちはみんなの出迎えを受けることになるだろう。

 そしてみんなで、ゼリルベインを倒したことを喜び合うのだ。


 ……そう思っていた。

 ……そう疑わなかった。


 しかし残念ながら、そうはいかなかったのだ……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「うおおぉおぉっ!!」

「何としてでも守りきれ!!」

「アイナ様たちが戻ってくるまでは――ッ!!」



 目を閉じていた私に、荒々しい声が聞こえてきた。

 剣を切り結ぶ音、魔法の音までもが一緒に聞こえてくる。



「――えっ!?」


 私は慌てて目を開けた。

 そこは、『神々の空』への門がある場所。

 門を支えるセミラミスさんとヴィオラさん、若いマリサさんはここにいる。


 そこまでは一緒。


 しかしそれ以外の人は、『何か』と戦っているようだった。



「アイナ様……っ!!」

「アイナ! おせーぞっ!!」

「アイナさんよぅ、待っていたんだねぇ!!」



「え? え? ただいま戻りました――

 ……けど!? 一体、何が起きているんですか!?」


 三人は私たちの姿を確認すると、門を支えるのを止めた。

 その瞬間、大きくそびえていた光の柱は立ちどころに無くなってしまう。

 ようやく解放された三人は汗を流しながら、かなり息を荒くしていた。


「ついさっき……、突然ここに、侵入者が現れて……!

 それで……、騎士団と、魔法師団のみなさんが、応戦をしてくれていまして……」


「侵入者……!

 アイナ様、私は支援に向かいます!!」


「ん、僕も行くよ!

 アイナちゃんとエミリアちゃんは、ちょっと話を聞いておいてね!

 その間に、僕が倒しちゃうけど!!」


 ジェラードが言っている間に、ルークは早々に戦いの場へと向かって行った。

 それを見て、ジェラードも慌てて後を追い掛けていく。


「それにしても、ここって厳重に守られていましたよね……?

 敵は何人なんですか?」


「俺は一人しか見てねーぞ……?

 でもここから動けなかったし、正しいかと言われると、ちょっと分からないなぁ……」


「そ、そうですよね……。

 でも、門が狙われなくて、本当に良かったです……」


「そいつはどうかねぇ。

 私にゃ、敢えて攻撃しなかったようにも思えるんだよねぇ。

 ……うん? どうしたんだい、エミリアよぅ」


「え? いやぁ……。

 やっぱり、若いマリサおばーちゃんは新鮮だなぁ……って」


「ふっふっふっ、ぴちぴちで新鮮だろ!?」


「いえ、そう言う意味では無かったんですけど……」


「おっと、そうそう。

 アイナさんよぅ、私も戦いに参加したいところなんだが……。

 そろそろミリサたちもヤバイみたいでねぇ。

 申し訳ないけど、元の姿に戻らせてもらうよ」


「分かりました。

 すいません、それなりには急いで帰って来たんですけど……」


「それで、アイナ様……。

 その、ゼリルベインは――」


「はい、倒してきました!!

 だから侵入者を退治したら、みんなでお祝いをしましょうね!!」


「本当ですか……!? やった……!!」

「おー! 倒したんだな!!」

「ひっひっひっ……。さすが私が見込んだ御人だねぇ……」


 ……あ、マリサさんが元に戻ってる。

 戻るときは一瞬なんだ。特に光とか、放たないんだ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――ルーク、大丈夫!?」


「アイナ様!!

 申し訳ございません、侵入者を見失ってしまって……。

 今は気配を探っているところです!!」


「え……?

 ルークに時間を掛けて、そんなことをやらせるほどの実力者なの……?」


「僕も頑張っているんだけどね、全然気配が分からないんだよ……。

 それよりもさ、怪我人が多いんだ。アイナちゃん、治してあげられないかな?」


 ジェラードの声にまわりを見てみれば、確かにかなりの人数が倒れてしまっている。

 そんなことにすら気付かないなんて、私もダメダメだ。


「そうですね、それじゃ一気に――

 ……アルケミカ・ポーションレインっ!!」


 私の声と共に、癒しの雨が降り注ぐ。

 範囲的には全体が入っているし、とりあえずはこれで大丈夫だろう。


「亡くなった方は……、いなさそうなのかな?」


「はい。ただそれも、恐らくはわざとでしょう……」


 こんなところまで侵入する実力があるのに、誰も殺していないのだ。

 それにセミラミスさんたちを攻撃していない時点で、やはり何かの意図を感じてしまう……。



「――ふむ。

 アイナさんの魔法は、やはり素晴らしいものだね」



 不意に、そんな声がした。

 私たちの真後ろ――


 慌てて振り返ると、そこには見慣れない青年が一人いた。

 しかし、どこか見慣れた雰囲気も感じてしまう。


「アイナさん……。

 何だか、おかしくありませんか……?」


 エミリアさんがこっそりと言ってくる。

 そう言えば何かがおかしいような気もするけど――

 ……いや、まずはこの青年の正体だ。



「あなたは一体、何者ですか!?

 何で私たちを攻撃するんですか!?」


「ふふっ。

 私としても、まさかこんな場所に出て来るとは思わなかったものでね……。

 さっきまで戦っていたのに、まだ気付いてくれないのかね?

 確かに、多少は若くなってしまっているが――」


「……え?」


 その言葉で特定できるのは、一人しかいない。

 『神々の空』で倒したゼリルベイン――

 ……そう言われてみれば、確かに彼の面影を残している……!?


「まだ生きていたのか……!!」

「しぶといねぇ………!!」


 ルークとジェラードが、私とエミリアさんの前に割って入る。

 さらに、怪我から治った騎士や魔法使いたちも――


 ……いや、騎士や魔法使いたちの参戦は無かった。



「あ、ああぁっ!!

 アイナさん、みんな止まっちゃっていますよ!!」


「えぇっ!?」


 改めて周囲を見てみれば、私たち四人と、ゼリルベイン以外は『止まって』しまっている。


 それこそ、まるで時間が止まっているかように――

 ……当然それは、セミラミスさんたちも同様だった。


「ふふふっ。今回はアイナさんに用事があったものでね。

 しかし安心しておくれ。全員、殺してはいないから。

 (ささ)やかながら、アイナさんへの配慮だよ」


「そ、それはどうも……。

 それよりあなたは、何で生きているんですか!?

 私のあの攻撃を受けて――」


「ああ、あの魔法は見事だった。

 不完全ながら、以前戦った……何と言ったっけかな? 私を良いように扱ってくれた魔法使い……。

 彼女の魔法と、同じものを感じたよ」


 その魔法使いとは、もちろんシェリルさんのことだ。

 彼女と比較してくれるなんて、かなり光栄ではあるが――


「それよりも!!」


「ああ、失礼。

 確かに私は死んだ。しかし『死』は『滅び』では無い。

 つまり――」


「つまり……?」


「忌々しいことではあるが、私は人間に転生を果たしたのだ!

 故に、まだ戦える……。

 これが最終戦だ! もうしばらくだけ、付き合ってくれたまえ!!」


「――ッ!!」



 ……あんなに念を入れたのに。

 念を入れている間に、まさか転生をされてしまうだなんて……。


 やっぱりラストバトルなんて言うものは、どう足掻いても素直にはいってくれないものなんだね……。

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[一言] まさか転生してくるとは
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