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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
781/911

781.決着

 隙を突いて放たれたルークの必殺技は、ゼリルベインの身体の左半分を吹き飛ばした。

 恐らくはアルケミカ・アニヒレーションで崩壊中だったからこそ、そこまで効いたと思うんだけど――



「……くっ!?

 私としたことが……っ!!」


 それでもなお、意識があるのはさすがだ。

 ゼリルベインは何とかバランスを取っているが、私の攻撃を受けた右腕からは何かを吹き出し続けている。


 ……多分、神力。


 神力だけで顕現していたゼリルベインの身体を崩壊させて、その形を無きものにさせていく。

 理屈の上で言えば、吹き出した神力を集めてもゼリルベインにはならないはず……!



「――私たちの勝ち、です!!」


 私は高らかに勝利を宣言した。

 あとは不意の攻撃に備えて、ある程度の時間をやり過ごしてしまえば問題ない。

 防御にまわるのであれば、四人もいるこちらの方が有利なのだ。


「こんな傷ごとき――

 ……いや、これは無理か……。

 ふははっ! まさか錬金術師風情が、このレベルの魔法を使うことが出来るとは……!」


 予想に反して、ゼリルベインの表情は明るくなっていった。

 自身に付けられた傷を、楽しんでいるようにすら見えてしまう。


 しかしゼリルベインがどんな反応を示そうが、もはや私たちの勝利は揺るぎない。

 ……最悪なことが起きたとしても、きっと相打ちまでで収まるだろう。



「ルーク! ジェラードさん!

 あとは守りに徹しましょう!!」


「かしこまりました!」

「おっけー!!」


「……ふっ、賢明な判断だ。

 おめでとう!! 君たちは神に勝利したのだ!!」


 ゼリルベインはそう言いながら、両手を上げるようにしながら祝辞を述べた。

 ただ、身体の左側はもう無いし、右腕も途中でもげているんだけど……。


「グリゼルダの仇。

 神様たちの仇。

 アドラルーン様の――そして、あなたが生み出した転生者たちの仇。

 これで、討たせて頂きました!!」


「うむ、実にめでたい……!

 くははっ、本当におめでとう……! 君には、新たな可能性を示してあげよう……!!」


「――っ!?」


 不意に、ゼリルベインが不穏な言葉を発した。

 それを聞いて、ルークとジェラードが割って入ってくる。


「この期に及んで、まだ何かをするつもりですか?」

「僕のアイナちゃんには、手出しはさせないよ~?」


「おっと、君たちは酷いな。こんな私に、まだ剣を向けるのかね……。

 くくくっ、まぁ良い……。それではこれで最後だ、悪あがきをさせてもらうぞッ!!」


 ゼリルベインはそう言うと、突然強大な光に包まれた。

 まさか――……とは思っていたが、どう見ても自爆技のようだ。


「みんな、エミリアさんのところに集まって!!」


「はい!!」

「うん!!」


 ゼリルベインの様子を確認しながら、私たちは思うように動けないエミリアさんの元に集まった。

 そしてゼリルベインが光を解放する瞬間――


「――アルケミカ・オブスタクルッ!!!!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 目も眩むほどの光が1分も迸ったあと、その攻撃はようやく止んでくれた。


 最後の最後で出した、守りの盾。

 オリハルコン製の、ルークの『光の祝福』とジェラードの『影』を両方『共有』した、大きな大きな最強の盾だ。



「……ぷはぁ」


 一息ついたあと、ルークが恐る恐る盾の向こう側を覗き込んだ。


「ゼリルベインは……、いないようですね……」


 その言葉に、私は早々に盾を引っ込める。

 視界は一瞬で開けて、私たちの他には誰もいないことが確認できた。


「やっと……、勝った……?

 これで、もう本当に……勝った……?」


「……はい! 私たちの勝利です!!

 アイナ様、やりましたよ!!」


「やったね!!

 これで僕たちにも、ようやく平和が訪れるよーっ!!」


 私はルークとジェラードと一緒に喜んだ。

 しかし次の瞬間、エミリアさんのことももちろん思い出す。


「エミリアさん、やりましたよ!!」


「はいっ! みなさん、お疲れ様でした!!

 ……ちなみに私、戦いが終わっても……、魔法を維持しないといけないんです……」


「あ、そうですね……。

 一旦は解いても大丈夫そうですけど、それだと出口まで移動できませんからね……」


 出口の位置を確認してみれば、いつの間にやらずいぶんと離れてしまっていた。

 エミリアさんに作ってもらっている地面が無くなれば、出口まで移動するのは難しいだろう。


「アイナ様、これからどうしますか?」


「一応、鑑定を掛けていっても良いかな。

 ゼリルベインが最後に何かを企んでいたみたいだったし……。変な罠が無いか、調べておきたいの」


 ここら辺は、ゲームで養った用心深さになる。

 ラスボスを倒したと見せかけて、一緒に私たちの世界に戻ってしまう……とか、冗談じゃないからね。


 最後の詰めを誤っただけで、取り返しの付かない被害が出てしまう。

 早く戻らないとミリサさんたちの命が危ないかもしれないけど、ここはしっかりと確認させてもらおう。


「かしこまりました。

 何かお手伝い出来ることはありますか?」


「一人だけ離れるのはやっぱり怖いから……。

 みんなで一緒に、見てもらっても良いかな?」


「それじゃ、エミリアちゃんもだね!」


「はい、油断は禁物ですので。

 エミリアさん、ゆっくり行きますよー」


「はぁい♪」


 そんなこんなで、私たちは四人で辺りを調べることにした。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ――結論。


 何も無かった!!



 まずは四人の身体を調べてみて、それから辺りを一周調べてみて。

 そして出口の下に移動してから、再び四人の身体を調べ直してみて。


 ここまでやって何も見つからないのだから、きっと罠は何も無いのだろう。



「問題は無さそうですね。

 ……よっしゃー、勝ったぞーっ!!!!」


「はい! あとは日常に戻るだけです!」


「はぁ……。

 僕はいまいち活躍できなかったけど、それでも平和は嬉しいや……。

 それじゃ、そろそろ戻ろー♪」


「そうですね!

 えっと、エミリアさんは……魔法を維持したまま、出口まで行けますか?」


「アイナさん! 連れて行ってください♪」


 エミリアさんはまた、無茶なことを言い始めた。

 まったく、どこまでもお姫様気分なのか。うん、可愛いけど!


「分かりました、それじゃ……。

 アルケミカ・オブスタクル!」


 私が魔法を使うと、大きな鉄の盾が上向きに現れた。

 もう何度か使っていくと、盾は階段のように組み上がっていく。


「うわぁ、器用な真似をするね……」


「以前、ジェラードさんが足場に使えそう……って言っていたじゃないですか。

 その応用ですよー」


「そう言えばそうだったね。

 あはは、お役に立てて光栄だよ♪」


 私たちは四人で慎重に、盾の階段を上っていった。

 そして出口まで辿り着いて――



 念のため、かんてーっ



 ……何も無し!!



「それじゃ、帰りましょう。

 私たちの世界へ!!」


「はいっ!!」

「はーいっ!!」

「うんっ!!」



 ――こうして、私たちの『神々の空』での戦いは終わりを告げた。

 あとは戻って、この喜びをみんなと分かち合うのだ……!!

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― 新着の感想 ―
[一言] え、ほんとに何も無いの? なんかあっさり 逆にすごく不安だ
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