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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
780/911

780.直撃

「アルケミカ・クラッグバーストッ!!」


 ズガアアアアアアアァンッ!!!!!!


「効かぬわっ!!」


 私の魔法は引き続き、ゼリルベインには受け止められてしまう。

 発動すれば一瞬後に当たる魔法にも関わらず、何と言う反応速度をしているのか。


「隙あり!」


「ふんっ!!」


 ルークの攻撃も、残念ながら容易く受け止められてしまう。


「僕も続くよっ!!」


 ザシュッ! ザシュシュシュッ!!


 そんな中、ジェラードの攻撃だけはきっちりスルーされている。

 唯一ダメージを与えてはいるものの、ジェラードの表情は微妙な感じだ。


 ……ジェラードって、何となく残念なところが結構あるんだよね。

 私がしんどいときとか、助けてもらいたいときには高確率で不在にしていたり……。


 でも、今回は一緒に戦ってくれている。

 攻撃をスルーされたりしていて……やっぱりちょっと、可哀想な感じはするけど……。


 とは言っても、貴重なダメージソースになっているのだから、今は一番活躍しているのかもしれない。

 致命傷にはなっていないものの、それでもノーダメージよりはよっぽどマシなのだ。



 以上を踏まえると、私は今、ルークのフォローをするべきだろうか。

 私はジェラードの攻撃力を上げる手段を持っていないのだから、何の手助けも出来ない。

 だから、ルークの攻撃を当てるフォローを――


 ……でもルークが近接してるときって、アルケミカ・クラッグバーストは撃ちにくいんだよね。

 狙いが少しでも逸れてしまえば、ルークに当たる可能性だって大きいわけだし……。


 ……なら、ここは盾かな……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 案外、機会が訪れるのは少ないのかもしれない。

 隙が出来るとすれば、攻撃相手を切り替えるときくらい……?


 ゼリルベインはジェラードよりも、ルークをずっと意識しているわけだから――

 ……ルークを吹き飛ばして、ジェラードに切り替えるとき。


 それなら、その虚を突いてみれば……?



「うおおぉおぉっ!!」


「君の攻撃は見切ったよ。

 それでは反撃だ」


 ルークの攻撃を受け止め、ゼリルベインは剛腕をルークに叩き付けようとする。

 いつもならルークはそれを剣で受け止めて、そのまま吹き飛ばされてしまうところだけど――



「アルケミカ・オブスタクルッ!!」


 ガガガッ!!


「――ッ!?」



 私の声と共に、ゼリルベインとルークの間に黒い盾が現れた。

 これはジェラードの『影』の力を『共有』したもの。

 ダメ元の賭けで試したけど、私の魔法を通せば『影』の力は使うことが出来るのか。


 黒い盾はゼリルベインの剛腕を完全に受け止め、そして大きな隙を作った。

 当然、吹き飛ばされなかったルークがこれを見逃すはずも無い。


「アイナ様、見事です!

 ――喰らえ、『重爆響崩撃』ッ!!!!」



 ズゴオォオォオォオオオォォオオオンッ!!!!!!!!



「ぬぉ!? うおぉおおおぉおっ!!!!」


 轟音と共に、ルークの必殺技が炸裂した。

 その攻撃はゼリルベインの頭上から直下へと撃ち抜ける。

 地面はやはり崩れも砕けもしないが、逆に言えば、全ての衝撃がゼリルベインに叩き込まれたことになる。


 突然の展開に、今回ばかりはその攻撃を防げなかったようだ。

 ゼリルベインは静かに地面に崩れ落ちた。


「やった!?」


「……いえ、まだです!」



「――……ぬぅ、見事だ……。

 なるほど、これが仲間の……、連携の力……と言うものか……」


「えぇ……!?

 あれを食らっても、起き上がれるの……!?」


 まさにクリーンヒットだったにも関わらず、ゼリルベインは早々に身体を起こして立ち上がった。

 その動きは緩やかだったため、ルークの追撃が数回、ゼリルベインに当てられる。


「……ふむ。実に良い……。

 ふふふ、実に良いぞ……」


 ゼリルベインはそう言いながら、ルークの攻撃を避け始めた。

 ジェラードもフォローに入るが、その攻撃も避けるようになっていた。


 ……もしかして、何かを狙っている?


 ルークの必殺技を以ってしても、未だ倒すには至っていない。

 必殺技には回数制限があるから、残りを使ったとしても倒れるかどうかは分からない。


 そう考えると、私はとても不安になってしまった。

 それならダメ元で、この辺りで切り札を試してみることにする……?



「――逃がさんよ」


「うわっ!?」


 そんな声がした。

 見れば、ゼリルベインがジェラードの足を掴み、軽く振り回しているところだった。


「ジェラードさんっ!!」


 アルケミカ・クラッグバーストを――

 ……とは思ったものの、狙いが逸れるのが怖いし、あとはジェラードを盾にされるのも怖かった。


 ゼリルベインはそのまま、ジェラードをルークの方に投げ付けた。

 ルークは残念ながら受けざるを得ず、二人は折り重なるように地面に倒されてしまう。


「さぁ、まずは君たちを消滅させてあげよう」


 ゼリルベインは右腕を大きく掲げた。

 あれは以前の戦いで見せた、消滅の攻撃――


 ……ご丁寧に、ルークたちはゼリルベインの身体に隠れた場所にいた。

 私の盾に邪魔をされないよう、ゼリルベインがわざと隠しているのだろう。


 残念ながら、私の盾は見えない場所には出せない。

 つまり、図星と言うこと……。


 しかし『光の加護』を持っているルークはともかく、ジェラードはかなり危ない。

 だから、私の取る選択肢は――



「うわぁああああああっ!!!!」


 アイテムボックスからナイフを取り出して、ゼリルベインに向かっていく。

 アルケミカ・クラッグバーストでは誤射が怖い。あるいはいつも通り、防がれてしまうかもしれない。


「――うん?

 気でも触れたかね? アイナさん自ら突っ込んで来るとは……。

 よろしい、ならば君から消してあげよう」


 そう言うと、ゼリルベインは私の方に振り返った。

 そしてそのまま右腕を振り下ろす――


「バニッシュ・フェイトッ!!!!」


 ゼリルベインのまわりに、キラキラとした光が取り巻いた。

 それを共に、ゼリルベインの右腕は虚しく空を切る。


「――ッ!? 私の術を消しただと!?

 しかしそんなナイフで、何をするつもりかね!?」


 私はナイフを横に振りかぶった。

 ただの属性ナイフ……と言うことは、既にゼリルベインには看破されているだろう。

 もちろん、こんな攻撃を防ぐためには神力を使わないはず。


 しかし、それこそが油断大敵なのだ。



「――アルケミカ・アニヒレーションッ!!!!」



 チッ



 私の奥の手。

 単純な構造物の境界を崩壊させる、使いどころがほとんど無い錬金魔法。


 ゼリルベインの油断を突いて、何とか腕にかすり傷を負わせることが出来た。

 ここからは純粋な賭け――



「……ッ!?

 な、何だ……!? 貴様、一体何をした……!?」


 ゼリルベインの余裕の表情は一瞬で消え、その声には焦りが混ざった。

 距離を取って観察すると、ゼリルベインの腕が――


 ……もげた。



「アイナ様! さすがです!!」


「決まったね!? よし、あとは僕たちに任せて!!」



 ルークとジェラードはようやく立ち上がり、間髪入れずにゼリルベインを攻め立てる。

 そして――


「――『重爆響崩撃』ッ!!!!」



 ズゴオォオォオォオオオォォオオオンッ!!!!!!!!



 ルークの必殺技が、再びゼリルベインに直撃していった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 危ない賭けを きまって良かったよ
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