表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
774/911

774.音

 セミラミスさんに確認したところ、『神々の空』の門を開く魔法は、明後日の昼に合同練習をするとのことだった。


「ちなみにセミラミスさんも、その魔法を覚えるんですよね。

 それはもう、終わったんですか?」


「何とか……!

 自分で作った……と言うところもありましたので、思ったよりも早かった……と、思います……!」


「なるほど、セミラミスさんが作った魔法ですもんね!」


「はい……!

 ですので、明後日からは……ヴィオラさんと、マリサさんのフォローを始めようかと……考えています!」


「ふむふむ……。

 それじゃ、明後日の練習は大丈夫そうなんですか?」


「ヴィオラさんは何とかぎりぎり……、と言う感じでして……。

 マリサさんの方は、エミリアさんの話によれば……概ね問題ない、とのことでした……!」


「おぉー。さすが、マリサさんは凄いなぁ……」


「ご高名な魔法使い……と言うことなので……。

 良い方に手伝ってもらえています……!」


「あの人とも、何だか不思議な縁ですよね……。

 ……ちなみにその練習って、私も見学して良いですか?」


「はい、大丈夫です……!

 あまり、面白いものでは無いかもしれませんが……」


「いやいや、私たちの命を預ける魔法ですから。

 興味は凄くありますよ!」


「分かりました……。是非、ご覧ください……!

 えぇっと……、場所は街の南の……、平原の方で行う予定です……。

 南門に集まって、それから向かう感じでして……」


「それじゃ、時間を合わせて一緒に行きましょう♪」


「はい……!」



 ……南の平原、かぁ……。

 人気が無いところだろうから、食べたり飲んだりするものくらいは用意していこうかな。

 温かい食べ物は、モチベーションにも繋がるからね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 2日後、私たちは広い広い平原に立っていた。

 草の背はあまり高くなく、地肌もぼちぼちと見えている。

 人通りも無く、魔法の練習には打ってつけのような気がした。



「……それでは、この辺りで始めましょう……!」


 セミラミスさんの言葉に、マリサ四姉妹がそれぞれ続く。


「ひっひっひ……。

 少しぁ寒いが、良い練習日和だねぇ……」


「ひぇっひぇっひぇっ……。

 マリサ姉さんよ、腰にぁ気を付けるんだねぇ……」


「もう若くは無いんだからねぇ……」


「おっと、メリサ姉さんよ。

 人のことぁ言えないねぇ……」


「ひっひっひ……」

「「「ひぇっひぇっひぇっ……」」」


 ……この四人、相変わらず仲が良いなぁ……。


「はー、年寄りばかりで緊張するぜ!

 あー、緊張するーっ!」


 そう言うのはヴィオラさん。

 口調が平常運転になっているから、それなりにはリラックスしているのだろうか。

 あるいは、リラックスをするためにそうしているのか。


「ヴィオラさん、落ち着いて頑張ってね。

 ……それにしても、『年寄りばかり』って言うのはちょっと……」


「んぁ? 見た目じゃ分からないけど、セミラミスだってババアだぞ?」


「いやいや……。まぁ確かに、300歳以上だけどさ……。

 ヴィオラさん、口が悪すぎーっ」


「えぇー、これくらい良いだろ?」


 そう言うヴィオラさんには、エミリアさんが嗜めていく。


「ダメですよー!

 少なくとも魔法師団を率いる方には、それなりの品格を求めさせて頂きます!

 誰かが見ている、見ていない、じゃなくて! 見えないところでもしっかりしてください!」


「ぐむぅ……。

 ……し、仕方ないなぁ……」


 エミリアさんにはどうにも弱いのか、ヴィオラさんはあっさりと引き下がってしまった。

 やっぱり上に立つ人にとって、品格って言うのは大切なものだからね。今のうちに、しっかり矯正しておこうね。



「――さて。

 それでは見学班は気にしないで、どんどん進めちゃってください!」


「はい……!

 それでは、みなさん……。始めさせて頂きます……!」


「承知したよぉ……!」


「か、かしこまりましたぁ!」


 ……ヴィオラさん。その言葉遣いは何だか違う。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 私とエミリアさんは、その場所からひとまず離れた。

 そして合同練習の光景を眺めながら、休憩用の食べ物と飲み物を用意し始める。


 セミラミスさんとヴィオラさん、マリサさんは、しばらく話をしたあとに距離を取った。

 ぼんやりと光る不思議な石を地面に置いて、それを囲むように陣形を組む。

 上から見れば、きっと正三角形を描いていることだろう。



「それでは……最終段階の、ひとつ手前までやってみましょう……!」


「承知したねぇ……」


「おっけー!」



 三人は呼吸を合わせて、ゆっくりと魔法の展開を始めた。

 周囲には澄んだ音が微かに響き始め、非日常的な空気を醸し出していく。

 中心に置いた石は不思議な輝きを増し、やがてその周りには風が纏い始める……。



「……何か、神秘的な魔法ですね……」


「そうですね……。

 やっぱり神様の世界に行くんだから、その魔法もきっと、そうなんでしょうね……」


 しかしその反面、この魔法に臨む三人の表情は険しかった。

 いつの間にか汗をかき、息を荒くしながら、必死に詠唱を続けている。


 吹いていた風は強くなり、そしてそれに従うように、中央の石がさらに強く輝いていく。

 そして、その輝きが最高潮に達しようとするとき――



 ――ぐきっ



「へ?」

「ほぇ?」

「……え?」

「んぁ?」



 鈍い音のあとに、私たちの間抜けな声が続いた。


 神秘的な雰囲気の中、とても現実的な音。

 何の音かと探してみれば、すぐに目に付いたのは、その場にしゃがみこむマリサさん。

 そしてそんな彼女の元には、ミリサさんとメリサさんとモリサさんが駆け寄っていた。


「ま、マリサ姉さんよぉ……。大丈夫かねぇ……?」

「やっぱり老いぼれだからねぇ……」

「腰ぃ……やっちまったかねぇ……」


 ……嫌な予感がする。

 いや、予感じゃなくて、もう現実のものになってしまっている。


 そう言えばこの魔法、身体への負荷が大きい……って話だったよね。

 ……あちゃぁ。腰、やっちゃったかぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マリサさああああああああああああん!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ