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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
773/911

773.隠し事

 『水の迷宮』から戻って来たのは、23時も過ぎた頃。

 夕食は軽く食べてきたから、あとは寝るだけだ。


「……結局、エミリアさんは成功したのかなぁ」


 成功しているのであれば、約束のお土産を早々に渡したいところではある。

 しかし、この時間はいつも勉強をしている時間だ。

 下手に声を掛けて集中力を切らせるのは申し訳ないし……、確認するのは明日にしようかな?


 そんなことを考えながら私の部屋に戻ると、珍しくミラが起きていた。

 リリーはいつも通り、就寝中のようだ。


「お母様、お帰りなさいませ」


「ただいまー。まだ起きていたんだ?」


「はい、お待ちしておりました♪」


 何となく上機嫌に見えるミラ。

 ……はて、何か良いことでもあったのかな。


「ごめんね、遅くなっちゃって。

 何かお話をしたいことでもあった?」


「いえ、特にそう言うわけでは無いのですが……」


 そう言いながらも、ミラは少しもじもじとし始めた。


 ……むむ?


 ……あー。


 はいはい。そう言うことか……。


「……もしかして、ミラ……。

 私が『水の迷宮』から持ってきた宝石って……」


「はい! お気に召されましたか!?」


「なるほど……。

 15階にしてはやたらと質が良いと思ったら、ミラの仕業か……!」


「はい♪

 お母様の心の声が聞こえて参りましたので、50階のものと交換を……」


 それって、まさに物欲センサーだよね……。

 普通のとは違って、運営側が最大限に配慮してくれたけど……!!


「でも、それって……良いの?

 いや、ありがたくはあるんだけど……」


「本当はダメなのでしょうけど、お母様はいつも宝箱には手を付けていないので……。

 その分、今回はサービスですわ♪」


「そ、そう言う見方もあるんだね……。

 それじゃ、今回はありがたくもらっておくよ」


「お気に召したようで、何よりです♪

 それではお母様、お休みなさいませ」


「うん、わざわざ起きてくれていて、ありがとうね。

 おやすみ-」


 ミラはペコリとお辞儀をすると、そのままベッドに入っていった。

 しばらくすると、すぐに寝息が聞こえてくる。


 ……何だが少しズルい気もするけど、今回はミラの好意に甘えておこう。

 今までの善行が一気に返ってきた……って感じでね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 翌日の朝、食堂に行くとエミリアさんが興奮気味に話し掛けてきた。


「アイナさん、おはようございます!」


「おはようございます。朝からお元気ですね!」


「はい!

 それでですね、聞いてください!

 昨日あのあと、魔法の発動に成功したんです!!」


「えぇっ!? 有言実行じゃないですか!!」


「えへへ♪

 だからご褒美、くださいね!」


「はぁ……。

 それじゃ、これをどうぞ」


 私はアイテムボックスから宝石を取り出して、エミリアさんに渡した。


「わーい、アイナさんも有言実行♪

 ……あれ? 結構良さげな宝石ですね……」


 ちなみにこの宝石、タンザナイトと言う青い宝石だ。

 手に入れたときには既にカット済みだったから、今の時点で美しさが十分に伝わってくる。


「衝撃には弱いそうなので、そこは注意してくださいね」


「あ、そうなんですか。

 それじゃ、補強の魔法を覚えることにします!」


「弱点を克服していくタイプだ……!」


「はい♪ 大切に使わないといけないものですから♪」


 エミリアさんはうきうきと、嬉しそうに言った。

 そう言えば一体、何に使うんだろう……?


「お母様、あれはエミリアさんへの贈り物だったのですか?」


「うん、そうなんだけど……。

 ……何かまずかった?」


「いえ、そう言うわけでは無いのですが……」


 もしかすると、ミラとしては私への贈り物のつもりだったのかもしれない。

 何となく、少しだけ寂しそうな雰囲気が――


「あ、ミラちゃん!

 ちょっとこっち来てー!」


「え? はい……?」


 エミリアさんはミラを呼ぶと、耳元で何かを伝えていた。

 もちろん、その声はこちらまでは聞こえてこない。



「――……って感じ!」


「そうだったのですね……!

 分かりました、私も応援しますわ!」


 ひとしきり話し終えると、ミラは自分の席に戻って行った。


「……え? あれ、二人で何ですか?

 隠し事……?」


「はい、隠し事でーす!

 ミラちゃんも秘密にね!」


「お母様、すいません。

 でも、秘密ですわ!」


「えぇ……?

 二人ばっかり、ズルいズルい~!!」


「ちょ、ちょっとアイナさん!

 それって私の物真似ですか!?」


「はい、物真似でーす!」


「むむぅ……。

 うぇーん、アイナさんにやり返されちゃいましたー!」


「隠し事をした罰です!!

 ……でも、差し上げたものだから自由に使ってください。

 それに、ミラも満足するような感じなら……何の問題もありませんし」


「分かりましたー! 頑張りますね♪」


 ……だから、何を頑張るのかが分からないんだけど……。

 まぁ、とりあえず頑張ってください。



「さて、それじゃ朝食にしましょうか。

 みんなそれぞれ、やることがありますしね」


「はい!

 私は昨日の反省を踏まえて、魔法をもっとスムーズに使えるようにならないと!

 えへへ、たくさん頑張ります♪」


 宝石のご褒美パワーなのか、エミリアさんは随分と上機嫌になっている。

 この状態なら、一気に魔法が上達してしまうかもしれない。


「私も負けていられませんね……。

 よーし、今日もみんなで頑張りましょう!」


「はーい!」



 エミリアさんの声のあとに、食堂にいたみんなも返事を続けてくれる。


 さて、残る懸念は『神々の世界』への門を開ける魔法……かな。

 あっちって今、どうなっているんだろう?

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― 新着の感想 ―
[一言] アイナさんにプレゼントとか? ちょっと違う気がするな なんだろう。
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