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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
772/911

772.ご褒美

 翌日 エミリアさんとセミラミスさんが裏庭で魔法の確認をしていた。

 『神々の空』に行ったあと、そこで戦うために使う、前準備の魔法だ。


 魔法の覚えが速いエミリアさんでさえも、ここに至るまでには1か月を要していた。

 もし他の人……例えば私なんかが覚えることになっていたら、一体どれほどの時間が掛かってしまっていたのだろうか……。



「……それではエミリアさん、いきますね……」


「はいっ!」


 セミラミスさんはエミリアさんの返事を聞くと、何かの魔法を使った。

 しばらくすると、キラキラした何かが辺りに飛び始める。


 ……何だろう、これ?


「準備が……、出来ました……。

 それでは、始めてください……!」


「いきまーす!!」


 エミリアさんは元気に返事をすると、すぐに魔法の詠唱に入っていった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ……5分ほど経った頃、最初に口を開いたのはエミリアさんだった。


「失敗しました!」


「はぅ……。

 ……最初の展開が遅くて……、次の段階で、時間切れを起こしていた……のだと、思います……」


「ええぇーっ、もっと速くやらないといけないんですか!?」


「短時間でやらないと……、集めた魔素が変質してしまうので……、はい」


「むむむ……。

 これ以上、短くするだなんて――」


 エミリアさんとセミラミスさんは話を進めていくが、当然のことながら私は付いていけない。

 ただ、どうにも上手くいかないような空気だけは、ビシバシと伝わってくる。


「えっと……。

 大変そうなので、私は戻りますね」


「えぇーっ、行っちゃうんですかー!?」


「私がいない方が、集中できるかもしれませんし……。

 ほら、きんつばも差し入れをしますから」


「きんつばはいつももらっているので、新鮮味がありません!」


「ぬぅ……。

 それじゃ魔法が成功したら、何かあげますから。

 だから今日は、集中して頑張ってください」


「本当ですか!? 何でも良いんですか!?」


「まぁ、用意できる範囲なら……」


「それでは、ですね!

 『水の迷宮』から、何か宝石を1つ取ってきてください!」


「何でまた!?」


「えへへ♪ これには壮大な計画が秘められているのですよーっ」


「はぁ、分かりました……。

 それじゃ、時間のあるときに行ってきますね」


「私、今日で成功させるつもりですから!

 だから今日中に取って来てくださいっ!!」


「えぇ~……。

 時間は……、あると言えばあるけど……」


「よし、決まりですね!

 やる気が出て来ましたーっ!!」


 そう言うとエミリアさんは、あわあわするセミラミスさんと一緒に魔法の練習に戻っていった。


 ……え? 本当にこれから行かなきゃいけないの?

 でも、モチベーション向上のためには……已む無し、なのかなぁ……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 さすがに一人で行くわけにもいかないので、『水の迷宮』にはルークと向かうことになった。

 一応念のため、第三騎士団の団員も3人ほどが付いてきている。


「それにしても、エミリアさん……。

 アイナ様に、突然こんな依頼をするだなんて……」


「あはは、本当に突然だよね。

 でも上手くいかないときは、ご褒美があると頑張れちゃうものだし?」


「確かに、そうではありますが……」


 ルークはエミリアさんのワガママに、少しばかり不満があるようだ。


「ま、ルークもたまには息抜きには良いんじゃないかな。

 最近みんな、それぞれ頑張っているからさ」


「アイナ様は前向きで、とても素晴らしいです。

 分かりました、私も思い切り羽を伸ばすことにしましょう」


「そうそう! その調子!」


「さて、今回はどのくらい潜りますか?

 下に行くほど、宝石の価値は高くなると思いますが」


「そうだねー。急とは言え、あんまり残念なものはあげたくないから……。

 せめて、15階くらいかなぁ」


「せめて……」

「15階……」

「ハードルが高い……」


 風に乗って、団員たちの声が聞こえてくる。

 しかしその辺りの階はもう、私たちが挑戦する場所では無いのだ。

 もはや通り道……、みたいな。


「折角なら、団員さんたちの訓練でもする?」


「ふむ……、それも良いかもしれませんね。

 ……と言うわけだ。今日はみんなの訓練を兼ねることにしよう」


「えぇっ!?」

「団長! 15階に着くまでに、かなりの時間が掛かってしまいますよ!?」

「そうですよ! 今日中に戻ることが出来なくなってしまいます!」


 団員が口々に返事をする。

 実際その通りで、15階と言うのはそれなりに遠いのだ。


「ふむ、確かに……。

 それではアイナ様、今日は『あの通路』を?」


「うん、そうしよっか。

 極秘事項だから、みんなには黙っていてもらってね」


「かしこまりました。

 ……良かったな、みんな。

 アイナ様が信用してくださっているぞ!」


「えっ、やった!」

「ありがとうございます!」

「ご、極秘事項とは……? ごくり……」


「えっと、実は12階までの抜け道があるんです。

 だからそこまでは一気に下りて、あとは3階分だけ移動して……って感じですね。

 それなら今日中に、何とか往復できるかなぁ……って」


「3階も……下りられますか!?」

「1日くらいは掛かってしまうのでは……」

「そうそう、それくらい掛かってしまいますよ!?」


「階段の場所は覚えているから、走れば大丈夫だ。

 アイナ様も走られるのだから、ワガママを言っている場合では無いぞ?」


「えぇ……。確か、結構距離がありますよね……?」

「ハード過ぎる……」

「しかし、アイナ様も走られるのなら……」


 うーん。確かに私も走るけど――

 ……ただ、私には竜王の加護があるんだよね。


 ルークも同様だから、実際に大変なのは団員たちの方なのだ。

 まぁ、それは黙っておくことにしよう……。


「もしダメそうなら、15階へは私とルークだけで行きますので」


「いえ! そんなことをしたら、第三騎士団の名折れです!」

「そうですよ、そうですとも! 必ず付いていきます!」

「ご安心ください! 万に一つでも、付いていけないことはありませんから!!」


「そ、そうですか……?

 それならルーク、そう言う感じで行ってみようか」


「はい、かしこまりました。

 よし! みんな、気を引き締めろ!!」


「「「はいっ!!」」」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ……そんなこんなで、お屋敷に戻ったのは23時頃。

 団員たちは15階への往復と戦闘で、かなりへばってしまっていた。


 その甲斐もあって、良い感じの宝石を無事に入手することが出来た。

 ただ、良い感じ……なんだけど、15階にしては質が良過ぎるような……?

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[一言] ミラが手を回してくれたのかな?
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