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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
771/911

771.6週間経過

 さらに1週間が経った。


 その間に『アルケミカ・オブスタクル』の開発も進み、新たなる段階を迎えていた。


 セミラミスさんに教えてもらった、仲間の力を『共有』すると言う機能――

 ……これを何とか、魔法に組み込むことが出来たのだ。


 試しにジェラードの『影』の力を取り込んでみると、物理攻撃の耐性を見事に獲得することが出来た。

 ただ、受け止める攻撃に何かしらの属性が乗っていると、元の防御力がものを言うようになってしまう。


 例えば無属性の場合、薄い鉄の盾であっても簡単に防ぐことが出来る。

 しかし少しでも属性が乗っていれば、ベースとなる盾の防御力が大きく影響する……と言う具合だ。


 ルークの『光の祝福』の力を取り込んでも、基本的には同じことになるだろう。

 虚無属性の攻撃は簡単に防げるけど、他の要素が入っていれば、やっぱりベースの盾に依存する……みたいな感じで。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 昼食が終わったあと、エミリアさんが話し掛けてきた。



「――アイナさん、思ったんですけど」


「え? どうしたんですか、急に」


「ルークさんとジェラードさんの力を、アイナさんの盾に取り込んでいたじゃないですか」


「はぁ、試しに……ですけど。

 でも使うたびに、その人には近くにいてもらう必要がありますよ?」


 力を魔法自体に組み込む……とは少し違うのだ。

 どちらかと言えば、盾を出すたびにその力を借りて混ぜ込む……って感じ。


「なるほど、それはそれとして――

 ……私の力を取り込む件、なんですけど!」


「ああ。良く食べる盾、ですか?」


「むむっ! そんな盾が出来るわけないじゃないですか!

 そもそもどんな盾ですか、それ!?」


「あはは……。

 例えば『暴食の炎』の効果を付けて、触れている間はずっと魔力を奪ってくれる……とか」


「思わぬ前向きな答えっ!!

 それ、凄く良いですね!!」


「あはは、そうですねー。

 でも残念ながら、魔法の効果は乗せられないんですよ」


「えぇー……。

 魔法の効果が乗せられたら、私と相性がとっても良い盾だったのに~……」


「まったくですね……。

 そっちは時間があるときにでも、ちょっと研究してみますね。

 ゼリルベインとの戦いは防御が出来れば良いので、戦いが終わった後になりますけど」


「えへへ、私を護ってくれる盾ですもんね♪」


「はい!

 それで、魔法は一旦完成したから……あとは使い慣れていくだけ、かな?」


「なるほど……!

 あ、それでですね!!」


「はい?」


「それなら私のユニークスキル、『魔法発動点無視』は共有できないのかなーって思いまして!」


「おぉ……?」


 それは思い掛けない提案だ。

 でもそれ、ちょっとイメージが湧かないなぁ……。


「ちょっと試してみませんか?

 さっき思い付いて、それからずっと勉強に集中が出来ないんです!」


「むぅ、それは困りましたね……。

 それじゃ、外で試してみましょうか」


「はーいっ!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 お屋敷の裏庭に出てから、ひとまずは『魔法発動点無視』を共有した盾を出してみる。



「――アルケミカ・オブスタクルッ!!」


 ガガガッ!!



「おぉーっ! これが私の力を持った盾……、なんですね!!」


「そうですね!

 ……えっと、それで?」


「え?」


「え?

 ……いや。それで、どう使うのかなぁ……って」


 ひとまず盾は出したものの、『魔法発動点無視』の使い方が分からない。

 何をどうやって試してみれば良いのやら……。


「その盾を持ったら、『魔法発動点無視』が使えるようになったりして……?」


「おぉー。それが出来たら面白いですね!」


「はい、試してみましょう!」


 エミリアさんの言葉に、私は宙に出した盾に触れてみる。

 私が出した盾は空中に固定されるから、普通に持つことが出来ないんだよね。


「それじゃ、いきますよー。

 アクア・ブラスト!!」


 私が魔法を唱えると、手元から普通に水の玉が飛び出した。


「……あれ?」


「ふむ……?

 と言うか、私はそもそも『魔法発動点無視』を使う感覚を知らないんですけど……」


「魔法を出したいところに、意識を向ければ大丈夫ですよ!」


 出したいところに、意識を……?


 とりあえず近くの上空を意識してみて、そして改めて魔法を唱えてみる。

 しかし残念ながら、今回は魔法自体に失敗してしまった。


「……ありゃ。

 そもそも魔法が形を成さなくなってしまいました……。

 多分これ、私は使えるようになっていませんね」


「えぇー、そんなーっ」


 厳しい現実に、エミリアさんは落胆してしまう。

 私が『魔法発動点無視』を使えるようになったら、それこそ戦略はかなり広がるとは思ったんだけど……。


「きっと、盾自体の能力になっているんでしょうね。

 そうじゃないと、盾に触っている人が全員、ルークの『光の祝福』とかを使えることになっちゃいますし」


「なるほど、確かに……。

 なかなか上手くは出来ていないものですね~……」


「でも、盾自体に何らかの能力を持たせれば……?

 そうすれば、『魔法発動点無視』だって活きてくるかも……?」


「おぉ……!

 例えば、攻撃をしたら雷魔法のカウンターが発生する……とか!」


「む、それは便利ですね!

 でもそうしたら――」


 ……ちなみに『魔法発動点無視』の効果はこちら。


 ----------------------------------------

 【魔法発動点無視】

 本来の発動点を無視して、視界内の任意の場所を発動点として扱う

 ----------------------------------------


 もしかして、視界内の敵味方全てがカウンターの対象になる……?

 いやいや、盾には『視界』が無いから、そもそもカウンターは発生しなくなる……?


 エミリアさんも私と同じことを考えていたようで、微妙な表情を浮かべてきた。


「……いまいち、でしょうか……」


「え? あー……うん、ちょっと想像が付きませんね……」


「ですよね……」


「まぁ私も応用が出来ないか、何か考えておきますよ。

 ところでエミリアさん、勉強の進捗ってどんな感じなんですか?」


「あ、はい。

 そろそろ実際に使ってみよう……って言うことで、セミラミス様に明日見てもらう予定なんです。

 『神々の空』の門を開く魔法も、みんなで集まって練習をするそうですよ」


「ついにそこまで来ましたか……!

 それじゃそっちは頑張ってもらうとして、残りの準備も進めていかないとなぁ……」


「そうですね! 頑張りましょう♪」



 ……戦いのときは、着実に近付いてきている。

 しかし今のところ、準備は良い感じで進めることが出来ているのだ。


 ゼリルベインが動き出す前に、どうにか全部、終われば良いんだけど……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 練習でゼリルペイン出てきたりしないよね?
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