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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
770/911

770.5週間経過

 さらに1週間が経った。


 『水の迷宮』から戻ってきて、その後はまた前と同じ日々を繰り返している。

 日常のことをこなしながら、魔法の修得を頑張ったり、剣術の修行を頑張ったり……。


 ルークの必殺技とジェラードの特殊技のどちらが強いのか――

 ……そんな話もちらほら出ては来るけど、実際に試すわけにもいかない。


 下手をすれば、命を落としてしまうのだ。

 私の薬の回復効果が高いとは言っても、さすがに死なれては回復なんて出来ないわけで……。


 と言うか、必殺技やら特殊技やらを使わなくても、危険は危険なんだよね。

 神器を使って手合わせをしている……とは言うけど、それだけでも死んでしまう可能性はあるのだから……。



 ……そんな日々の中、私の魔法は随分と完成に近づいてきたような気がする。


「――アルケミカ・オブスタクルッ!!」


 ガガガッ!!


 勢いの良い音と共に現れたのは、白銀に金色と赤色を混ぜたような、不思議な色をした盾。

 そう、これはオリハルコン製の盾なのだ。


「おぉーっ!

 アイナさん、ついに完成ですかっ!?」


 息抜きついでに、私の様子を見に来ていたエミリアさんも興奮して、はしゃいでしまう。


「はい、ようやくひと段落……ってところですね。

 どれくらいの防御力があるかは分からないですけど……」


「それなら、私が魔法を使いましょうか?

 アイナさんの魔法だと、もしかしたら消し飛んじゃうかもしれませんし……」


「いやぁ、さすがにアルケミカ・クラッグバーストでもそこまでは……。

 どちらかと言えば単純に、弾き飛ばしてどこかに飛んでいく……って言う方が怖いですね」


「そうしたら……空からオリハルコンが降ってきた!

 ……とかになっちゃいますね♪」


「あはは……。それは驚きですよね、いろいろな意味で……」



 さて。防御力を調べるにしても、少しずつ試していきたいところかな。

 弱い攻撃から徐々に強くしていって、どこまで耐えられるか……みたいな。


「この前は、ジェラードさんの攻撃でも盾は壊れなかったんですよね?

 そのときは鉄の盾だったと思いますけど」


「はい、そうですね。

 ……そっか。それならある程度強くても、壊れはしないかも?」


「今回は鉄どころか、世にも珍しいオリハルコンですからね。

 さすがに段違いの防御力だと思いますよ!」


「うーん……。

 それなら、エミリアさんの魔法で試してみたいかな……」


「やりますよー! 頑張ります♪」


「でも、さすがにお屋敷の近くだと危険ですよね……。

 どこか郊外の、誰もいないようなところで試したいかなぁ」


「それなら行ってみますか!

 気分転換に、少し魔法を使いたかったんですよーっ」


「穏やかではないストレス解消方法……!」


「まぁまぁ!

 では人の来なさそうなところに行きましょうっ!

 フロート・エクスペル!!」


「ちょわっ!?」


 話の途中で、エミリアさんは容赦なく浮遊の魔法を使ってきた。

 えぇ!? ここからずっと、外まで飛んでいくのーっ!?




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ……検証を終わらせた後、私たちは夕食までには戻ることが出来た。

 行きも帰りも浮遊魔法。うーん、高いところを飛ぶのって、まだまだ怖いんだよね……。



「――それで、結果はどうたったのですか?」


 夕食をとりながら、ルークが質問をしてきた。

 ジェラードも興味がありそうに、さりげなく聞き耳を立ててくる。


「うん、全部防げたよ!

 気持ちが良いくらいに♪」


「私はちょっと、悔しいです……!」


「でも、エミリアさんを護る盾ですよ?」


「私はちょっと、嬉しいです!」


 ……何と言う変わり身の速さ。


 しかしそれがエミリアさんの良いところなのだろうか。

 ……いや、良いところなのかな。あれれ?


「僕のときは、鉄の盾は飛んでいっちゃったけど……。

 オリハルコンの盾は大丈夫だったの?」


「はい、それはもう微動だにしなくて。

 岩をぶつけても、むしろ岩の方が壊れていたので……。防御力はかなりあると思いますよ」


「ふむ、それは素晴らしいです。

 あとは、虚無耐性……ですか」


「うん、それなんだよね。

 あと、鉄の盾とかでもそう言う強さを付けていければなぁ……って」


 私のその言葉に、セミラミスさんが後を続けた。


「そこまで開発を進められたのは……、さすがです……!

 それで、虚無耐性……が欲しいのであれば、やり様は……2つ、あります……」


「え? 2つもあるんですか!?」


「はい……!

 まず1つ目は、虚無魔法を制限する……構築式を入れること……。

 それ自体が難しいので、アイナ様だと……ちょっと、どうなるか分からないのですが……」


「うぅ……。

 エミリアさんに見せてもらいましたけど、確かに全然分かりませんでした……!」


「入れたところで、魔法の扱いがさらに難しくなるので……。

 現実的なところを考えると……、それは、控えた方が良いかもしれません……」


「……と言うと、もう1つの方に期待せざるを得ませんね!」


「そちらは比較的簡単……です。

 ただ、他の方の協力が必要に……なってきます……」


「他の方? ……手伝ってもらうってことですか?」


「はい……!

 アイナ様が作られる盾に……、『共有』の効果を持たせれば良いのです……!」


「きょうゆう?」


「簡単に言うと……、他の方の特別な力を借りる……と言うことです……。

 例えば虚無耐性……と言うのであれば、ルークさんの……レアスキル、『光の祝福』……ですね」


「え? もしかして、その効果を盾に乗せられるって言うこと……ですか!?」


 私の言葉に、セミラミスさんは力強く頷いた。

 ちなみに『光の祝福』の効果はこれだ。


 ----------------------------------------

 【光の祝福】

 光属性・闇属性・虚無属性の状態異常、ダメージを無効化する

 ----------------------------------------


 ……この力を獲得できれば、3属性に対しては無敵の盾になってしまう。

 え、凄い。本当にそんなことが出来るの?


「私の力がアイナ様のお役に立てるようであれば、いくらでもお貸しいたしましょう。

 そうすれば全部、解決してしまいそうですね」


「うん、ありがと!

 ……それで、『共有』って言うのは難しいんですか?」


「ここまで魔法を組み上げられたアイナ様なら……、問題ないかと思います……。

 あとで構築式をお伝えしますので……、また、頑張ってみてください……!」


 ……『また』。


 いや、難解な中を頑張るのはしんどいけど、ゴールは完全に見えてきたのだ。

 それならもう少しくらい、頑張るのは何と言うことも無いだろう。


「分かりました、やってみますね!」



 そんなやり取りをしていると、ジェラードがさり気なく入ってきた。


「……ねぇねぇ。

 ルーク君ばかりじゃなくてさ、僕の力も使ってよ!」


 おっと、ジェラードがまた対抗意識を持ち出してきたぞ……。


「えーっと、ジェラードさんの力……って、何ですかね。

 素早い……とか?」


「盾が素早くなって、とうするの!?」


「うーん……。ぶつけるとか?」


「武器じゃん! それ、武器じゃん!!」


「むむむ。……そうしたら、影の力……ですかね。

 セミラミスさん、神器の力も『共有』出来るものですか?」


「はい……。持ち主の許諾があれば、いけるはずです……。

 ……影の力を獲得した盾なら、恐らくは物理無効……のような感じになるかと思います……」


「え? それも凄いじゃないですか」


 何だかんだで、物理攻撃と言うのはなかなか無効にはならないのだ。

 オリハルコンの盾はそれに近い感じではあったけど、鉄の盾にそれを持たせられれば……かなり使えるかもしれない。


「ルークさんの力も、ジェラードさんも力も、どちらも凄いですね……。

 それじゃアイナさん、私の力はどうでしょう!」


「エミリアさんの力……?

 ……良く食べる、とか?」


「えぇーっ!?

 アイナさん、それってどんな盾になるんですかーっ!!」


「わ、私の方が聞きたいですよ……」



 ……でも、『良く食べる』と言うところにはツッコミが入らなかったね……。


 うーん……。

 エミリアさんならきっと、魔法の盾……みたいな感じになるのかなぁ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 防極振り大盾使いの大盾みたいに 魔法だろうが何でも食べる悪食付きの素敵な盾に なったりして?(笑
[一言] よく食べる盾 なんだその愉快な盾は
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