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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
766/911

766.1週間経過

 1週間ほど経った朝、私はエミリアさんと二人でお喋りをしていた。

 食後のお皿は全部片付けられ、誰もいなくなった食堂でのんびりと。


 最初は何でもない雑談をしていたものの、話題は自然と最近の感心事へと移っていく。



「……ところで、エミリアさんの魔法の方はどうですか?

 昨日も、夜遅くまで起きていましたよね」


「大丈夫ですよー。3時間は寝ましたので……!」


「うわぁ、頑張りましたね……。

 お喋りしているよりも、少しでも眠った方が良いのでは……」


「いえいえ、お喋りは心のオアシスなので!

 だから取り上げないでくださーいっ!!」


「は、はぁ……。でも、無理はしないでくださいね……」


「分かりましたー!

 きんつばの差し入れでもあれば、無理せずにもっと頑張れると思います!」


「……さりげに要求をしてきましたね。

 分かりました、1週間分です」


 バチッ


「迅速な差し入れ! 感謝いたします!!」


 エミリアさんはそう言うと、作り立てのきんつばを自分のところに手繰り寄せた。

 合計21個……。朝昼晩と、1個ずつもあれば大丈夫だろう。

 ……何だか薬みたいだけど。


「それで、進捗はどうですか?」


「んー。1日にどれくらい進めるか……と言うのは決めてありまして。

 一応、その量は頑張っているんですが……、細かいところは置き去りになっているんですよね。

 もぐもぐ」


 気が付けば、エミリアさんは早速きんつばを食べ始めていた。

 流れるような仕草に、私は全然気が付いていなかった。


「あー、そう言うのありますよね。

 全体を見通せるようにしてから、細かいところを後から潰していく……。

 うん、良い進め方だと思います」


「ですよね!

 それでですね――」


「……っと! ちょっと待ったー!!」


「ふぇ?」


「きんつば、もう2個目ですよ!?」


 今回も流れるような仕草ではあったが、注意をしていただけに何とか気付くことが出来た。

 1週間分の差し入れなんだから、そんなにパクパクと食べられても困るのだ。


「あ、ついつい……!

 それもこれも、きんつばが美味しすぎるのが悪いんですっ!!」


「それは責任転嫁ですよ!?」


「違いますよーっ!!

 私は食べる量が多いんですから……!

 それに、頭を働かせると甘いものが欲しくなるんです!」


「……なるほど、それには一定の理解を示しましょう。

 でも今は、別に頭を働かせていませんよね!?」


「はっ!? 本当だ……!!」


 そこまでやり取りをすると、私たちは笑い合った。


「……まぁ、確かにエミリアさんの差し入れとしては少なかったですね。

 それじゃ追加で」


 バチッ


 ……そこに作り出されたのは、さきほどの4倍の量。


「わー、たくさん!」


「朝昼晩で、5個ずつ……ですね。

 多くしていくとキリが無いですし、エミリアさんならいくらでもいけちゃうから……その辺りで」


「確かに! 甘いものばかり食べていると、太っちゃいますしね!」


「え? エミリアさんでも太るんですか!?」


「太りますよー。でも、若干太りにくい体質ではあります!」


 ……いやいや。人の数倍も食べておいて、そのスタイルを維持しているんだから……。

 若干と言うか、全然太らない体質なんじゃないかなぁ……。


 そもそも食べる量に対して、全然お腹が膨らんでこないし……。

 私にとっての、この世界の七不思議の1つ……かもしれない。今さらなんだけど。


「私はどちらかと言えば小食ですから?

 そう言う意味で、あまり太りませんけど……。エミリアさんは謎ですよね……」


「うーん、昔からこうなので……。

 栄養が普通の人よりも、摂れない体質なのかもしれませんね」


「確かに、そうとしか思えませんよね……」


 ……ただ、お腹がぽっこり膨らまない件については、何の説明にもなっていない。

 やっぱり七不思議に登録決定……っと。



「ところで、アイナさんの方はどうなんです?

 防御の魔法、作っているんですよね」


「それがなかなか、難航しておりまして……。

 セミラミスさんから教わった構築式が、今回で一気に難しくなって……」


「あー……、こっちもそんな感じですね……。

 私はその前後が資料としてあるから大丈夫ですけど、そう言うのが無いと厳しそう……」


「そうそう、まさに手探り状態……って感じで。

 そこがクリア出来れば、いろいろと応用は出来そうなんですけど……」


 例えて言うなら、数学の証明問題……みたいな感じかな。

 最終的にはシンプルな数式になるんだけど、中身をしっかり理解しないと応用が利かない……的な。


「それじゃ、アイナさんの魔法のお披露目はまだなんですね……。

 私を護ってくれる魔法、早く見たいですっ!」


「べ、別にエミリアさん専用じゃありませんからね!」


「でもゼリルベインとの戦いが終われば、いつも通りに戻りますよね。

 そうしたら、アイナさんを護るのは私のお仕事なので♪

 それならそれなら? アイナさんの防御魔法は、私のため……と言うことに!」


「むぅ……? そんなものですか……?」


「はい♪ そんなものですよ♪」



 でも、私が防御魔法を覚えれば……攻守共に、いけるようになるんだよね。

 エミリアさんは既に攻守共にいけるわけだけど、二人がそうなれば、新しい戦い方が見つかるかもしれないし……。


 そうしたらダンジョンででも腕試しをしたくなる――

 ……んだけど、『水の迷宮』は80階まで到達したし、そのあとは進まないことを宣言しちゃったし……。

 まぁ、80階までの間で試してみれば良いのかな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 お互いを励まし合ってから、エミリアさんとのお喋りは終了に。

 部屋に戻ると、ちょうどリリーとミラが出ていくところだった。


「あれ? 二人はどこかに行くの?」


「久し振りに遊びに行くのー!」


「セミラミス様のお手伝いも、どうにか終わりましたので。

 お母様のお手伝いがあれば、もちろん残りますが……」


「ううん、大丈夫だよー。

 今日はたくさん、遊んでおいで♪」


「はーい、なの!」

「はーい、ですわ!」


 リリーとミラは元気に返事をすると、楽しそうに部屋から出て行った。


 ……うん、やっぱり子供は遊ぶのが一番だ。

 大変なときではあるけど、こう言う時間は確保してあげないとね。



「……さて、私は勉強といきますか……」


 私は一度、深呼吸をしてから椅子に座った。

 そして目の前に広がるのは難解な構築式の数々。


 でもこれ、自分に直接返ってくる勉強だからなぁ……。

 学校の勉強よりも、やっぱり気が引き締まると言うか……。


 ……その分、ストレスには負けそうだけどね。とほほ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 叡知さん手伝ってくれたりしないかなぁ
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