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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第13章 神々の空へ
764/911

764.依頼と報酬

 次の日。

 エミリアさんはセミラミスさんに、ゼリルベインと戦うときに必要な魔法を教えてもらうことになった。


「……何ですか、これ」


 大量の紙の束を目の当たりにして、エミリアさんは絶句する。

 分厚い辞典くらいの量があり、そこにはセミラミスさんの文字と図が大量に書き連ねられていたのだ。


「あの……。

 狭い範囲とは言え……、世界のルールを書き換える魔法なので……。

 これでも、細かい理論は省略して……、圧縮はしたんです……けど……」


 セミラミスさんの話を聞きながら、エミリアさんは1枚、また1枚と、目を通していく。


「ふえぇ……。難しいよぅ……」


 エミリアさんの泣き言だなんて珍しい。

 魔法自体は思ったよりも早く完成したけど、使えるようになるまでは時間が掛かってしまう……と言うことか。


「ふーむ……。

 ちなみに『神々の空』に行く魔法も、同じくらい難しいんですか?」


「いえ、そちらは……もう少し、簡単です……。

 主に、私が頑張らないといけないのですが……」


「サポートの2人はそこまで……では無いんですね。

 そうだ、エミリアさん。セミラミスさんの魔法には、2人のサポートが必要らしいんですよ」


「へー。結構、大掛かりなものなんですね……。

 このレベルの魔法のお手伝いを出来る人、ですかぁ……」


「私はあまり思い当たらないんですけど、ヴィオラさんとマリサさんなんてどうかなーって」


「なるほど!

 ヴィオラさんは……、ちょっと頑張らなきゃいけなさそうですね。

 マリサおばーちゃんなら……、何だかどうにかしてくれそうです!」


「ただ……、少し身体に負荷が掛かると思いますので……。

 マリサさん……は、ご高齢なんですよね……?」


「むむ、負荷ですか……。

 基本的にはお元気ですけど、やっぱりお年寄りですから……」


「マリサさんでなければいけない、と言うわけでもありませんので……。

 エミリアさんに心当たりがあれば、他の方でも」


「うーん……。

 でも本気で真剣、さらに信頼もある人となると……。

 やっぱりマリサおばーちゃんが良いです。私たちの命を預けるわけですから」


「確かに……。

 帰り道、門を閉じられたら戻れなくなっちゃいますからね……」


 門が閉じられてしまえば、神器を持っていようが、不老不死だろうが、ゼリルベインを倒していようが――

 ……それはきっと、どうしようもなくなってしまう。


「アイナさん、まずはマリサおばーちゃんたちに聞きに行ってみませんか?

 私も出来れば、早く安心したいですし」


「分かりました。

 エミリアさんも、魔法の勉強をしなくちゃいけませんからね」


「それでは、お願いいたします……。

 ……アイナ様、私はどうすれば……?」


「セミラミスさんは、ヴィオラさんに軽く伝えておいて頂けますか?

 それでもって今日の夜、みんなを集めてお話をしましょう」


「分かりました……!」


「それじゃアイナさん、私たちは出掛けましょう♪

 やったー、デートだーっ!」


「違いますよ!?」



 ひとまず私とエミリアさんは、マリサ姉妹のお店に行くことになった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 港の近く、マリサ姉妹のお店は今日も絶賛営業中。

 お客さんの入りは良くないけど、そもそもそう言うお店だから仕方が無いよね。


「……ふぅむ。

 神々の世界……。何とまぁ、びっくりだねぇ……」


 一通りの話をすると、マリサさんがしみじみと口を開いた。

 ミリサさん、メリサさん、モリサさんも同じような反応をしている。


「ひぇっひぇっひぇっ……。

 しかしこの歳にもなって、新しいことを知るだなんてねぇ……。

 まだまだ、この世界も捨てたもんじゃないよねぇ……」


「メリサおばーちゃん! 今にも死んじゃいそうなこと、言わないでくださいよっ!!」


「なぁに、エミリアよ。

 そろそろ私達ぁ、いつ逝ってもおかしくないからねぇ……」


「えーっ!?」


 エミリアさんは、お年寄り特有の話題に巻き込まれていた。

 そんなことを言われても、若者としては答えにくいところなんだよね。

 『そうですね!』なんて肯定はしづらいし、否定するしか選択肢は無いわけで……。


「そんなところで申し訳ないのですが……。

 マリサさんたちにも協力をして頂きたいんです。いかがでしょう」


「セミラミス様に見せてもらいましたけど、覚えて欲しい部分は本1冊くらいでしたよ!」


 さらっと凄いことを言うエミリアさん。

 ……何だか凄い世界だなぁ。


「ふむ、1冊かねぇ……。

 ま、それくらいなら何とでもなるだろうねぇ……」


 ……なるんだ。

 何とでもなっちゃうんだ。


「す、凄いですね……」


「……よし、分かったねぇ。

 私がその大役、務めさせて頂くことにするよ……。

 その代わり――」


「……え? そ、その代わり……!?」


「こう言うことはねぇ、ビジネスライクに行った方が良いのさぁ……。

 人間のため、世界のため――

 ……そうは言ってもねぇ。人間の奥底では、誰にでも欲望が渦巻いているものだからねぇ……」


「ふ、ふむ……。

 確かに、信用と信頼だけじゃダメですよね。そこに、もたれかかるだけでは……」


 例えばあれだ。

 知り合いが絵を描く人だからと言って、無料で絵を描かせようとする人。

 断ろうものなら『友達なのに断るの!?』と言われ、報酬を求めようものなら『友達からお金を取るの!?』と言われ。


 そういう時は、逆なのだ。

 友達だからこそ、普通以上に報酬を出すべきなのだ。

 ……と、私は思う。まぁ、人それぞれだとは思うけど。


「まったくもう、仕方が無いですね……。

 それで? マリサおばーちゃんの欲しいものって、一体何ですか?」


 エミリアさんがそう聞くと、マリサ姉妹は全員で目を合わせてから不敵に笑った。

 そして声を揃えて、全員で仲良く言い切る。


「「「「新しい弟子が欲しいねぇ……」」」」


「「え?」」


 その答えに、私とエミリアさんも驚いてしまう。


「いやぁね……。エミリアに魔法を教えるのが、とっても面白くてねぇ……。

 しかも今じゃ、Sランクの魔術師なんだよねぇ……?

 この快感、また味わいたいものだよねぇ……」


「「「まったくだねぇ……」」」


「ふ、ふむ……?

 えーっと、それって……私のことです?」


 少し不安に思いながらも、恐る恐る聞いてみる。


「いやぁ、アイナさんはダメだねぇ……。

 お前さんは世界一の錬金術師なんだからさぁ……」


「あ、あはは……。

 そうですよね、求め過ぎですよね!!」


 とは言うものの、かなり安心してしまったりして。

 エミリアさんからは、厳しい修行の話も聞いていたし――……いや、本当に良かった。


「なんだー、残念!

 それでおばーちゃんたちは、誰か心当たりがあるんですか?」


「ひっひっひ……。

 その心当たりが無いから、報酬として求めているんだよねぇ……」


「「「ひぇっひぇっひぇっ……」」」


「う、うーん……。確かにそうですよね……。

 それじゃどうにか探しますから、今回はお手伝いをお願いしても良いですか?」


「ああ、承知したよ……。

 万事が終わったあと、報酬は後払いでも問題ないからねぇ……」


「た、助かります……!」



 ……ひとまず私は、マリサさんたちの協力を得ることが出来た。

 しかしその代わりに、新しいお弟子さん探しかぁ……。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 お屋敷への帰り道。


「アイナさーん。

 お弟子さんの心当たりって、もしかしてあるんですか?」


「……ヴィオラさんとか?」


「あ、そうですね!」



 初案は10秒で決まってしまった。

 このままヴィオラさんにお願い出来ちゃえば、私は凄く楽なんだけど……。

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[一言] ヴィオラさん以外いない!
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