761.ある種の三角関係
ぱちり。
……そんな感じで、朝にすっぱりと起きることがたまにある。
目覚めは結構良い方だけど、それにしてもすっぱりと。
昨日の夜もいろいろと考えてしまったけど、朝になってしまえば一旦置いておこう。
明るくなったら考えるのはほどほどにして、しっかりと動いていかないとね。
何せ、時間は無制限にあるわけでは無いのだから。
着替えをしてから廊下に出て、何となく窓から庭を眺めてみる。
すると外から、ルークとジェラードが帰ってくるところだった。
……んん?
こんな朝から、どこかに行っていたのかな?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お帰りなさーい!」
玄関で二人を待ち伏せて、サプライズな感じでお出迎えをする。
二人は当然、驚いてくれる。うん、良い感じ。
「アイナちゃーん! おはよー♪」
「アイナ様、おはようございます。
こんなところで、どうされたのですか?」
「ちょっと早目に起きちゃってね。
そしたら二人が戻って来るのが見えて……。
……それで? どこかに行ってきたの?」
「実はねー。ルーク君と、ちょっと剣の手合わせをね」
「えっ。もしかして、ハリアガルスを使って?」
「いえ、木刀を使った模擬的なものです。
さすがに神器を使って、手合わせなんて危険ですから」
「……まぁ、アゼルラディアだとまわりを吹き飛ばしちゃうからね……」
ルークは力の加減は出来るけど、それでも全力で振るう光景を考えてしまえば恐ろしい。
さらに神器同士の戦いとなれば、本来はとんでも無く危険なものなのだから。
「それにしても、さすがルーク君だったよ。
竜王の加護を抜きにして、僕の速さに付いて来られるなんてねぇ」
「そう言うジェラードさんこそ、私の剣を巧みに受け流していたじゃないですか。
なかなか、ああはいきませんよ」
……おぉ。互いが互いを認め合う関係。
良いなぁ、羨ましいなぁ。
「それじゃ、互角みたいな感じだったのかな。
ちなみに実際、どっちが強いんです?」
「私ですね」
「僕だねぇ」
……ピリッ。
空気が張り詰める、そんな音がしたような気がした。
「……いや。そうは言ってもですね、ジェラードさん。
私がもう一歩踏み込めば、しっかり急所は突いてあげられたんですよ?」
「んんん? それならやれば良かったんじゃないのかな?
戦いにも、剣の腕にも、『たられば』なんて無いんだよ?」
「ほう……?
木刀の方が心配だったから、力は抜いていたんですけどね?」
「あれ以上の力が篭っていたら、ルーク君の動きはもっと鈍くなっていたよ?
そんな状態で、僕の動きを捉えられたのかなぁ?」
「もちろんですね」
「はははっ、そんなことは無いよねぇ♪」
……ピリピリッ。
何だかたくさん、空気が張り詰めまくっているような気がする。
私、余計なことを言っちゃったかなぁ……。
「ままま、まぁまぁ!
二人とも、疲れましたよね? 少し休んで、朝食にしましょ!!」
「……ふっ。アイナ様に救われましたね」
「ふふんっ。どっちが、かなぁ~♪」
そのあと二人は、もう一度火花を散らせてから自分の部屋に戻って行った。
うーん、ただ単純に仲が良いだけじゃないんだよなぁ。
お互い、いちいちライバル視していると言うか……。
でも同じ分野のライバルがいるって言うのは、やっぱり羨ましいかな。
何せ私は、錬金術を最初からトップでぶち抜いているからね♪
……まぁ、スキル頼みなんだけど。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝食は何事も無く終わり、今日はそのままエミリアさんとお喋りをすることに。
『水の迷宮』から戻って来て以来、まだのんびりしていなかったから……、たまにはそう言うのも良いよね。
「――そりゃ、アイナさんに言われたらそうなっちゃいますよーっ」
先ほどの話をすると、エミリアさんはきっぱりとそう返してきた。
「うーん……。やっぱり、私のせい?」
「もちろんですね!
ルークさんはご結婚されたとは言え、アイナさんのことを好きなことには変わりが無いんですから。
好きな人の前なら、良い格好くらいはしたいじゃないですか」
「ぐぬぬ」
この時点で、もう否定を出来ない私がいる。
その辺りのことは承知しているけど、改めて言われると……うん、はい。
「それに、ジェラードさんも同じですよね。
何せ、アイナさんには本気で求婚しているくらいなんですから」
「う、うーん……?
確かにハリアガルスを作ったとき……に、何か言われましたけど……。
でもあれって、そこまで本気では無いんでしょ?」
「いえ、かなり本気だと思いますよ?」
「またまたぁ」
「いやいやぁ」
……まぁ、改めて考えるとそうなのかもしれないけど……。
でもジェラードとは、彼がナンパ師のときに出会ったわけだから……、いまいちそう言う対象としては見られないと言うか……。
仮に見えたとしても、私が結婚自体をしないことには変わりが無いわけで……。
「――とまぁ、それは置いておいて」
「えーっ、置いておいちゃうんですか!?
恋バナは女子の嗜みですよーっ」
「そ、そうですか?
それじゃエミリアさんの話でも」
「はい、次の話題にいきましょう!」
「はやっ!?
……って言うか、実際どうなんですか?
エミリアさんも、ほら。次の戦いが終わったら結婚するんだ――……的なところとか」
……そう言っちゃうと、何だかフラグが立ってしまいそうだけど。
「うーん……。
アイナさんみたいな男性の方がいれば、本当は良いんですけどね」
「それ、どういう意味ですかね……」
「どういう意味と言われても、そういう意味なんですよね。
私の人生、アイナさんで最適化されちゃってますから……」
「仮に私みたいな男性がいれば、エミリアさんはその方と付き合うってことですか?」
「いやぁ、それは嫌ですね。
私がアイナさんを置いて、結婚するわけないじゃないですか」
「えぇ……?」
「はぁ……。アイナさんが男性だったら良かったのに……。
もう、いっそ私の願いでそうしちゃいますか……」
「ちょちょちょ!? そんなのやめてくださいよ!?
仮に私が男性になっても、エミリアさんとは結婚しませんからね!?」
「えぇー……。
でもそれなら、アイナさんは今のままが一番ですね」
「そうですよ! そうですとも!」
……さすがに強制性転換は嫌すぎる。
それに神様の力を、そんなことに使うのは……一体どうなんだろう。
何だかそう言う意味でも、神器って恐ろしいものだなぁ……。




